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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 世子ら天頭山教の面々も、これに驚き戦うどころではなさそうだった。

 貴志と瞬志もただ唖然としていた。源龍も戸惑いを隠せない。

 ふと、香澄が空を見上げているので、劉開華も空を見上げれば。空に浮かぶ青白い炎。それは人形で、こちらをじっと見据えている。

「……お兄さま!」

 様々な念が自分に送り込まれるのを感じて、たまらずへたり込んでしまった。

「開華、やっと見つけたぞ!」

 青白い人形の炎の雄叫びがこだまする。顔のかたちもくっきりと見える。他の仲間たちは、あれが話に聞いた兄かと察した。

 かと思えば、劉開華めがけて噴石のように落下してくる。

「ふざけんじゃないよ、変態兄貴が!」

 羅彩女はへたり込む劉開華をかばって前に立ち、青白い人形の炎、兄劉賢の鬼を自分の木剣で払おうとするが。人形から球体状に変わったそれは、羅彩女に思いきりぶつかり。

「ああっ!」

 木剣も通じず、吹っ飛ばされてしまった。

「邪魔するなこの醜女しこめ!」

 球体状から人形にもどり、さらに皆の頭上に再び舞い上がり。倒れこんだ羅彩女を口汚く罵る。

「ぎゃああああ!――」

 突如として悲鳴が轟く。

 実体化した鬼は大口を開けて牙を剥き、人に襲い掛かってきたのである。

 不意を突かれた数名の者が牙により噛み砕かれて、血を噴き出し屍にされる。さらに、あろうことか屍からまた半透明な鬼が浮かび上がり。また人に襲い掛かるではないか。

「やれい、者ども! 邪魔者を始末せよ!」

 そう命ずるのは、青白い炎の怨念の鬼となった劉賢であった。この鬼どもは操られているようだった。

 光燕世子に天君、瞬志はただただ唖然とさせられてしまったが。身の危険が迫りくれば、我を取り戻し鬼を払う。

 幸い鬼は物理的に払いのけられるが。消滅させられるのは、桃の木剣だけ。

 劉開華はへたりこみ、羅彩女はうずくまり、満足に動けない。そこへ咄嗟に香澄と貴志が駆けより、桃の木剣を受け取り。鬼を打ち、消滅させる。

「やってられるか!」

 信徒の中には逃げ出す者が相次いだ。李家の屋敷を占拠し、世子の手勢とともに反乱にくわわり、国家転覆をはかる、という段取りと聞いていたが。鬼が出るなど聞いていない。 

「もう滅茶苦茶だ!」

 瞬志やりきれず叫んだ。

 混乱は広がってゆく。李家周辺にとどまらず漢星全体が混乱してゆくのは時間の問題だった。

「世子、何の故あってこのような騒乱を好まれるか!」

 怒りの矛先は当然のごとく光燕世子に向けられる。

「知らぬ、私は知らぬぞ」

 当然のことながら、世子は慌てて否定する。

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