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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 瞬志としては世子が反乱を起こしたのは細かいことはわからなくても、いつかはと思っていたから、怒りはあっても驚きはなかった。しかし、天頭山教の教主と名乗り、さらに未来の后とのたまう謎の女とその配下たちの存在には驚きを禁じ得なかった。

「凄く強いねあの人」

 子どもとリオンは公孫真に守られながら成り行きを眺め、天君の強さに感歎する。

「ううむ、何と手強い!」

 瞬志は歯噛みする。それなりの武人なら、相手の力量も見極められる。天君およびそれを取り囲む信徒たちは手練れぞろいだ。

 ふと、源龍と目が合った。

「こいつはオレがやるんだ! 邪魔するなよ」

「なに」

 こんな時に何を言っているんだと怒りを禁じ得ない。だが貴志は。

「兄さん、源龍に任せてください。我らは他の者たちを」

 と、信徒と渡り合い、これに拳をぶつけ悶絶させる。

「世子さまには、手出しさせぬ!」

 信徒のなす鉄壁の守りから自ら飛び出て、軟鞭を振るい源龍に襲い掛かる天君。源龍も迎え撃とうとするが、その前にすかさず飛び込むのは、香澄。

 七星剣はからみつこうとする軟鞭をたくみにかわし、切っ先を相手の喉元に向け突き出すが。相手もさるもの、左手の人差し指と中指で剣身を挟み込む。

 咄嗟に柄から手を放し、天君の懐に飛び込みながら掌打をはなつ。が、天君は指から七星剣を放しざまに後ろ飛びに跳躍し間合いを取りながら軟鞭を構え。

 その隙に落下する七星剣の柄を握り、これも身構え対峙する。

「おいおいこらこら、香澄も邪魔するな!」

 源龍は得物を横取りされたと怒るが、香澄は何を思ったのか空を見上げる。

「公主、彩さん!」

 静かな香澄が珍しく声を大にし、何故か劉開華と羅彩女に呼び掛ける。

 呼びかけられたふたりは、うんと頷き合った。

「見えるよ!」

が実体化してる!」

「な、なんだこれは!」

 ふたりが言う通り、鬼が実体化し周囲を漂う。何も知らぬ瞬志らと世子ら、信徒らは突然視界に入る鬼に驚く。

「公主は鬼を退ける力があるんじゃないの」

「わかりません、こんなことは初めてです」

 劉開華は鬼を退ける力があるはずだった。それでも実体化し人の目に見えるようになるとは。ちなみに、羅彩女は逆に近くの鬼が見え、そばに近寄れば他の者にも見える、という面倒なことになっていた。

 ともあれ、鬼が実体化し、見える。これが何を意味するのか。

 鬼は半透明な人形ひとがたで、足が地に着かず少し浮いて風に乗るように漂っている。

「怨念。なにかとてつもない怨念を感じる……」

 桃の木剣を構えて、劉開華は悪寒がひどくなるのを禁じ得なかった。

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