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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 かといって、足踏みをする源龍でもなかった。思い切り地を蹴り、打龍鞭を上段から振るって、頭に叩きつけようとする。しかし光燕世子もさるもの、腕を組んでたたずんだ姿勢のまま、横跳びに避け。さっきまでいたところに打龍鞭が振り下ろされて。先が地面に着こうという時、すかさず足で踏んだ。

 が、咄嗟に源龍は柄から手を放し。

「何ッ!」

 拳が迫り、光燕世子の頬を殴りつけ。う、とよろけたところへ、今度は腹に蹴りを入れられ。たまらず吹っ飛ぶ。

「世子!」

 天君は対峙していた香澄を置いて、慌てて倒れこむ光燕世子のもとへ駆けつけ。信徒らも集まる。

 源龍は余裕綽々で打龍鞭を拾い、肩に担いで。不敵に笑う。

「できるか、と思ったが。これぐれえのことで隙を見せちゃあ使い物にならねえぜ、世子さまよ」

「おのれ、私に恥をかかせおって……」

 衆人環視のもと源龍にいいようにされて、光燕世子はわなわなと震えながら、天君に支えられながら立ち上がる。

 その時に、劉開華と羅彩女も桃の木剣をたずさえて戻ってきた。

「なんかやばいことになってきているよ!」

 やけに悪寒を感じる。天頭山の天湖にいたときよりも強い寒気が周囲に舞い降りたようだ。

「何がやばいんだ?」

「もう、鈍いねえ」

 羅彩女はさりげに源龍のそばに近寄り、世子らと対峙する。

 立ちはだかる信徒をぶっ飛ばし、貴志は門を開け放てば、兄とその手勢は勢いよくなだれ込んでくる。

「世子!?」

 まさかのことに瞬志たちも驚きを禁じ得なかったが。それ以上に、召使いや家来のなきがらを見て、

「何というむごい!」

 と悲憤慷慨する。それでも判断は早かった。

「不本意ながら、世子を捕らえよ!」

 怪しげな者らと一緒にいる。弁解など聞くつもりもない。

 外ではまだ戦闘が繰り広げられているのが門ごしに見えた。数も多く、信徒だけでない、世子の手勢もいるのは明らかだった。これは明らかな反乱だ。

 しかし。

 武士ムサらが世子をお縄にかけようとした時、天君の軟鞭閃いて。相手の顔面、鼻柱を強くたたき。たまらず皆鼻血を噴き顔を覆って倒れこんでしまった。

「世子には指一本触れさせぬ!」

 信徒のひとりが笛を吹く。すると、外で戦闘をしていた信徒や世子の手勢が一斉に駆け込んでくる。抵抗をされてもはねのけ、あるいは避けながら。光燕世子と天君を取り囲んで、鉄壁の守りをなす。

「我は天君! 天頭山教の教主にして、光燕世子の未来の后なり!」

「なんだと!」

 その宣言に瞬志ら一同驚きを禁じ得なかった。

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