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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

 その直後、互いに後ろに飛びすさって間合いを取り、睨み合う。

「できますね」

 香澄は無言ながらその言葉に対して頷き。

 互いに手練れであることを認め合い、次の一手をどう繰り出すかを探る。しかし互いに隙なく、動けない。

 風が吹く。秋とはいえ、やけに冷たい風だ。

(嫌な予感がする)

 はっとして、劉開華は得物の桃の木剣が部屋に置きっぱなしなのに気付いて。咄嗟に地を蹴り部屋に駆け戻ろうとする。羅彩女も続く。

「行かせるか!」

 と信者が止めようとするが。

「よい。行かせてやれ」

 と光燕世子が止める。また戻ってくるであろうと見抜いたうえでのことだった。

 貴志は涙をぬぐい、瞬志の手勢を入れようと門まで駆けるが、これも信者が阻んで、渡り合う。

 公孫真は子どもたちを守って、迫りくる信徒を払いのける。

(この娘、得物を使わないのか。私が無手であるから?)

 天君は香澄と対峙しながら、剣を眺める。

 意を決し、天君は駆け出し。香澄も駆け。さきほどと同じように、互いに掌打を繰り出す。かと思われたが。帯に手を突っ込み素早く何かの得物を抜き出し。それが香澄の顔面に迫る。 

 咄嗟に七星剣を抜いて、弾き。後ろにではなく、相手の脇を駆け抜け。程よく間合いを取って振り返り、今度は互いに得物を構えて対峙する。

 無手と思われた天君だったが、手には銀色に光る軟鞭なんべんが握られている。長さは使い手の手の長さほどか。

 軟鞭とは短い鉄の棒を鉄の輪で繋いだ武器の事で、普段はこれを帯の中、胴に巻いてしまっているのだった。

「よく避けられましたわね。ともすればあなたのかわいらしいお顔は砕かれていましたよ」

 天君は不敵な笑みを浮かべる。しかし香澄無言。もともと口数は少ないのだが、戦いにおいては唇はつぐまれたままだった。

「ああ、あなたは辰のお方。私の言葉はわかりますまい」

「アル(わかる)」

 ちなみに、香澄は暁星の言葉を理解できる。暁星の言葉で応えられ、天君は意外そうにしながらも、ふっと不敵な笑みを返す。

 源龍は光燕世子と対峙する。打龍鞭を構えて、いつでも打ち込める体勢をとっているが。

「無手の私を相手に得物を使うのかね」

「あいにくオレには武人の矜持なんてご大層なものはないんでね」

 軽口を叩き合い、睨み合い。隙をうかがう。

(ひよわなおぼっちゃまかと思ったが、なかなかどうして)

 内心舌打ちする。どのようにして鍛錬したのか、天君が手取り足取り教えたのか、これも手練れだった。源龍とて迂闊に踏み込めない。

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