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幻想小説 流幻夢  作者: 赤城康彦
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血腥魂哭

「その時に私もお声掛けをいただき。思い切って素性を打ち明ければ、たいそうお気に召されて。まことに光栄。巡り合わせとはほんとうに面白きもの」

 話を聞いて、なんとも悪い巡り合わせが重なったものだと頭を抱えたくなる。まさか立場をわきまえずに市井で女性を漁って、その漁った中に天君がいたなど。

 何がそのような巡り合わせを生むのであろう。

(世界樹か)

 そう思わずにはいられなかった。

「悪い事は言いません。ご改心をなされれば、世子は後世に名を遺す名君となりましょう」

「いやだ」

「なぜそのような」

「私は私の道を生きる」

「お言葉ながら、世子は道を外れております。その果てにあるのは、破滅でございます」

 気が付けば目の前裏に拳が飛んできて。咄嗟に避ける。

「宰相のじじいと兄と同様、お前も言うな。それに、文弱の輩と思っていたがなかなかどうして。お前たち李家の者は、逆賊として処刑だ」

 禍々しい目つきで貴志を見据えるが、ひるまず見返す。

 外に出れば、多数の武装した信徒が刃をさらけ出している。その足元には李家に仕える者、男女問わず斬り殺されたむごい有様だった。

 その光景を見て、貴志はもちろん一同総毛立った。

 言いようのない怒りを覚えた。抑えることはしない、素直に怒りを覚える。

「あなたは暴君だ!」 

 貴志は光燕世子を指さし叫んだ。この死んだ者たちとは、ともに月日を過ごし生活し、また人生もともにした。人生の一部といってもよい。

 子どものころに遊んでもらった年長の召使いも、食事を運んでくれ、桶に水を汲んで持ってきてくれた召使いも刃にかけられて。あふれる涙を抑えることなく、素直にあふれさせた。

 外はと言えば、李家に一大事ありと大騒ぎになっていた。

「うぬら何者だ!」

 という兄の瞬志の叫びもこだまする。

 周囲は騒然となった。天頭山教の信者も何の遠慮もなく、外で瞬志らと渡り合い、刃を交えていた。

「漢星を戦場にする気か!」

 ここまでおおっぴらに事を起こすとは。歴戦の公孫真も唸る。怒号と悲鳴が響き渡る。周辺住民も巻き込み、屋敷の壁の向こうで、信者が手当たり次第に手をかけているのは容易に想像できた。

「!!」

 光燕世子向け叩きつけられようとする打龍鞭。源龍だ。それを咄嗟に避け、後ろ向きに跳躍し距離を取る。それと入れ替わりに、天君がチマをはためかせて、腕を伸ばし源龍の顔面に掌打を打ち付けようとする。

 それをすんででかわし。頬に風の破片を感じながら、後ろ向けに跳躍し距離を取れば、入れ替わるように香澄が天君向けて地を蹴り同じように掌打を放ち。

 しかし天君は逃げず、掌と掌とがぶつかりあい。衝撃でくうが弾ける。

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