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35.ダンジョン選定

ここからは書き溜めないで1話書けたら投稿しようと思います。

更新間隔はちょっと計れない感じですね。またおつきあいください。

 翌朝、俺は藁の上で目が覚めた。女性陣はまだ寝ているが、ヘンミは起きていて身支度を済ませていた。


「随分早起きなんだな」

俺は問う、彼は答える。

「それほどでもない。こいつらがぐうたらなだけだ」

ヘンミがイリシアに蹴りを入れるふりをする。何か因縁でもあったのだろうか……だいたい察しはつくが。


 そして、俺も顔を洗いに井戸に行ったりしているうちにイリシアとセフィアも目が覚めたようであった。俺達は例によって物売りの女の子から朝飯を買って身支度をして打ち合わせを始めた。


「やっぱりこう、最初は『ダンジョンでござい!』っていうのをマサルさんにはやってもらいたいわね」

セフィアは昨日と同じ種類のサンドイッチを口にしている。そして彼女が身支度ついでに斡旋所からもらってきた地図を指差しつつ提案してくる。


「死亡率が低いダンジョンだと緊張感が出ないわ。経験を積み重ねることができないんじゃないかしら……?」

物騒なことを言うのはイリシアだ。彼女には怒らせるようなことはしてないはずなのでゲーム中ではごく普通の会話なのだろう。


「促成栽培的な育成はあまりおすすめしない。せっかく作ったチームだ。段階的に行こう」

「それもまた然り。賛成するわあ」

ヘンミとイリシアは合意に至ったようだ。


 俺はまだダンジョンに入ったこともない。とりあえず詰むことのないであろう、ビゲストシティ周辺の低レベルでも攻略できるダンジョンにすることになった。


 俺はどうすればいいんだろう。聞いてみた。

「もしかしてこれ、チュートリアルの続きか?」

「ある意味ではそうだが、これは実戦だ。高田さんには一通りのことができるようになってもらわないと意味がないからな」

ヘンミは言い切る。


 ヘンミはダンジョン攻略にあたってまず、物資調達の前にチームを編成すべきだと提案した。

「そうすれば街中でチーム内通話ができる。同じアイテムを安く入手することもできるだろう」


 ヘンミは俺に聞く。

「レシーバーは持っているか?」

「ああ」

「ではまずはここにいる全員とフレンドになるんだ」

「どうやって?」

「その辺はどのレシーバーを使っているかによる。ちょっと耳を拝見……ふぅん?」

ヘンミは俺の耳の中を見てなにか引っかかったようだ。俺は『はじまりの街』で買った安物だと補足した。


「安物か。……まあその機種ならやり方はわかる。その手のレシーバーの場合だとカーソルで視界内のフレンドという四角枠を探して選択するか、フレンドコマンド、と俺を見ながら強めに念じてみろ。フレンドウィンドウ、と念じるのでもいい。

 ついでだ。画面を出したり引っ込めたりをフレンドウィンドウで練習してみてくれ。もうできるはずだ。ウィンドウ操作はゲーム内で一番良く使う」


 やはりヘンミの説明は理にかなっている。こういう説明が俺にもうまくできれば就職がうまくいったのだろうか。そう思いつつフレンドウィンドウを出したりしまったりしながら3人を登録した。フレンドウィンドウはオペレーター達とのウィンドウと違う場所に出てくる。


「ついでにチーム結成してリーダーになってもらおうかしら」

セフィアが言う。俺がリーダーか。


「俺がリーダーでいいのか?」

「いいわよ。初心者のペースに合わせるためにね」

なるほど、みんなが歩調を俺に合わせてくれているわけか。


 言われたとおりの手順で自分がリーダーになるチームをフレンドの一覧から3人をピックアップして結成する。すると、ヘンミが指摘をしてきた。


「この共有財産の1410ルビーは誰の財産かな?高田さん、自分の財布は持っているか?」

「いや、持ってない」

「ではこれに移し替えておくんだ、でないと、あとで精算する時にややこしいことになる」

そういうと彼は懐からがま口の財布を出して渡してきた。インベントリーリストにその財布が入るのがわかる。


 今度はオペレーター達にもやり方を聞き、財布に共有財産からの入金するコマンドを発行した。すると、共有財産の1410ルビーは0ルビーになり、新たに自分だけの財産を表すウィンドウが出現し1410ルビーが入った。


「悲しいけど彼らのほうがユーザー経験の度合いが高いのよね」

オペレーターのレベッカがレシーバーから話しかけてくる。俺は咳払いを軽くして、口の中でレベッカに答える。

「何か付け加えることがあれば遠慮なく言ってくれ」

「了解っ」


 俺はそんなオペレーターと目の前の仲間と交互に、または同時に会話をしながらチーム編成をする操作を終えた。慣れればスムーズにできるようになってくる。慣れっていうのは恐ろしいよな。


 セフィアら3人からしてみれば、俺が運営側からの刺客だと言うのは半ば公然の秘密。見なかったことにしてやろうといったところだが、ゲーム攻略が進むのであれば願ったり叶ったりだろう。あまりに長い不自然な硬直をすれば咳払いなりあくびなりをしてくれる。


 イリシアが思い出したように言う。

「あーそーそー、『はじまりの街』で手に入れたアイテムは多分ダンジョンで使わないから、そこの箱に自分のスペースを作って詰めておいてね~」


 壁際にキッチンなどと並んで金属製の箱がある。たぶん、俺のポケットと似たようなものだろう。そこにヘンミが差し込む。

「『木の棒』は持っているか?10フィートあると尚いいが……それは残したほうがいいかもしれない。ダンジョン攻略に使えるぞ」

「何に使うんだ?」

「怪しいところを棒で突く。すると罠があれば安全に無効化できるかもしれない」

「なるほど」


 てんやわんやしているところでセフィアが宣言する。

「そろそろ行かない?街の商店街に足りないものを買いに行きましょう」

俺達は同意して残りの準備をして小屋を出た。




 ビゲストシティの街は基本的に石材と漆喰で構成されている。恐らくやろうと思えば破壊できるだろう。民家や商店はそんなに頑強な建材では出来ていないようだ。


 中世ヨーロッパ風とでも言おうか、そんな感じだ。窓のデザインなどはどこもそれぞれ別ベクトルで怪しいが。


 違いはといえば電柱が街の中にぎっちり散りばめられていて、その上を電線や電話線などのケーブルがびっちり敷き詰められてことくらいか。俺のいたところではヨーロッパの建築物は景観上の理由でそういったものを排除する政策を取っている国もある、そんな記憶を思い出していた。


 が、ここではそういったものは不要らしい。


 4人で歩いていると、商店街のアーケードが見えてきた。色々買うものはあるが、俺個人で所有するものは自分でどうにかしないといけない。パーティーメンバーから借りるのも手だが。


 さあ、買い物の時間だ。

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