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15.レベッカポイント

「あなたが何かするたびに耳に指突っ込むの、ちょっとかっこ悪いと思わない?」


 テソと俺がどうすれば石を簡単に運べるか議論していると、レベッカ少尉が連絡してきてこう言ってきた。


「スパイ映画のように変わった方法でいいんじゃないかと思うが…」


 正直、俺の反論は厳しい。実際問題として耳くそをほじる角度で指を突っ込まないとスイッチを入れられず、傍目には耳をほじっているようにしか見えない。確かにかっこ悪い。


「スパイ映画は低予算でもかっこいいものよ?それにあなた、視線を合わせてスイッチで決定というスタイルを取っているけど、それもっとかっこ悪いわ。手でどかすほうがなんぼかマシよ。さて、ここでグッドニュース!あなたの選んだレシーバーはスパイ用じゃないけど、なんと、軍用グレードの未来脳波センサーが付いてます!」


 レベッカ少尉は得意げにまくし立てた。そういえば前に念じても動かせるって言ってたな。俺は聞く。


「念じて動かせるって聞いて試してみたがカーソルを出す以上のことができなかったぞ、故障か?」


「チュートリアルでいきなり不良品アイテムつかませるネトゲ、出てたら売れてないと思う。故障じゃなくてあなたが念動力の初歩しかできないだけよ」


 彼女がうーん、と言った表情になるのは珍しい。俺は問う。


「念動力だって?」

「物を動かすほどの念動力ではないけど、脳科学的な分野で、たとえば四肢麻痺の患者がコンピューターで文字入力したり、ロボットアームを動かしたり、戦闘機を飛ばしたりみたいなことは、あなたのいたところから20年位したら普通に見られる分野になるわよ(厳密には念動力ではないけど)」


 レベッカ少尉は大真面目に言う。俺は正直信じられない。


「戦闘機は無理だろ…」


 すると、この言葉が彼女の何かに火をつけてしまったらしい。レベッカ少尉は俺に何か見せようと何か画面越しの機器に向かってものすごい早さで何か操作している。が、5分ほど試行してついに諦めてしまった。


「この間見つかった脆弱性使って作ったバックドアが塞がれてて権限昇格できなかった…ちっくしょーあの動画見せたいのにぃー」


 レベッカ少尉がうなだれると彼女のポニーテールの根本が見える。俺は彼女をなぐさめてみる。


「わかったわかった。信じるよ。つまり、念じたらこのカーソルが動かせるようになるんだろ」


「ふふ、まあ、そうよ。このスキルがあれば本来1ヶ月位練習が必要な脳波コントロールの修練をやりつくしたことにできるわ。カーソルを動かすなんてちゃちなレベルじゃないことが脳にはできることがあなたにもわかるわよ」


 レベッカ少尉はすぐに立ち直っていた。俺の言葉は必要なかっただろうか。元気になったのなら、まあいいか。彼女は続ける。


「『ブレインコントロール』の低レベルのスキルを付与するわね。もちろんこれはアクティブスキルよ」


 すると、感覚が拡張されたと言うべきか、えも言われぬ感触が俺を襲った。気持ち悪くなる。


「吐きそうだ…」

「大丈夫、そのうち収まるわよ」


 こともなげにレベッカ少尉は言う。彼女の言う通りにすぐに気持ち悪い感覚は取れてきた。俺は報告する。


「なんとかなってきた」

「いい子ね。じゃあ簡単な課題を出すからやってみてね。ウィンドウを全部消去して、念じるだけで私を呼び出してみて」


 彼女はそう言うと彼女のウィンドウが消えた。とりあえず、今まで通り操作してウィンドウを消して、念じてみることにした。どう念じればいいかわからないので色々考えてみる。


 試してみれば、わりと簡単な感覚だった。例えて言うなら手を伸ばす感覚を発するだけでチャンネルリストのウィンドウが現れ、レベッカ少尉のシンボルを選択するためにまたその感覚で選択する。すると呼び出し音が鳴り、レベッカ少尉が出た。


「かあっこいい!そうでなくちゃあ!レベッカポイントを1あげます」


 例によってレベッカポイントというタイトルのウィンドウが出て数字が1から2に増える。そしてレベッカポイントウィンドウは消えた。そうだ、いい機会だから聞いてみるか。


「なあ、そのレベッカポイントを貯めると何かいいことがあるのか?」

「ふっふっふ、それは時が来るまでの内緒です」


 レベッカ少尉はわざとらしく謎めいてみせる。本当になにがあるんだろうな。


 …というやりとりが割り込んでしまったが、いつのまにかテソは俺の所持金を消費し道具と木材を買い込んでいた。そして、試行錯誤の末、石をそのまま引きずるより木枠でソリを作ってその上に乗せて引っ張ったほうが軽く感じることに気がついてしまったようだ。あー、そうか、この金個人用と分けないと共同研究費扱いになるのか。


「なにか取り込んでいたみたいだから作業の方を進めていたよ。勝手にやってごめんよ」


 テソは謝罪する。俺は許すしかないわな。


「いや、いいんだ」


 俺はたぶんここからが長くなると踏んだので補助発明アイテムの『コロ』をテソに渡した。すると渡したアイテムはテソにすっと溶け込み、テソはものの滑りへの関心をかなり高めたようだった。


 そして無論、コロを使った輸送で石を引っ張る人数を減らせることを実証できた。しかしコロの場合、常にコロを進路上に運んで置いておく役が必要であるため、テソ達の規模では作業人数そのものはあまり減らせないことがわかった。


 これが大規模だと効果が高いんだがなー。

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