表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/41

14.少年テソ

 テーブルで肘鉄をついている少年テソの側に寄ると、俺はなんと声を掛けたものか困った。ひとまず知り合いになってみるか。俺は近くに来て声をかける。


「よう、俺は高田勝だ」


「はじめまして、たか…ま…?」


 発音できないということはなさそうだが、いいづらそうなので名前をもう一度名乗る。


「マサルでいい」


 テソ少年は恥ずかしそうに鼻をすすった。そして自分の名前を名乗った。


「ありがとうマサル。ぼくの名前はテソ、石切場で働いているんだ」


 俺はテソの悩みを聞くことになった。俺は小さいテーブルに椅子を寄せて座る。


「石を何人かで運んで40ルビーほど貰っていたのだけれど、それが10ルビーまで減ってしまって、みんなでやるには割に合わなくなってしまったんだ」


 テソの表情は深刻そうだ。俺はスタートアップガイドの解説を思い出しながらテソに発明を持ちかける。


「なら、より少ない人数で運べる方法を一緒に考えてやるよ、どうだ、のるか?」


「ほんとうかい?もちろんだよ!」


 テソは満面の笑みを浮かべた。すると、新しいウィンドウが浮かび、『『物運びが得意なテソ』があなたのチームに加入を打診しました。受け入れますか?』というメッセージが出てきた。これはたぶん、カーソルを出して『受諾』で耳の中のレシーバーのスイッチを押せばいいのだろう。


 そのようにすると、新たにチームメンバーというウィンドウが現れ、俺とテソのシンボルと名前が並んだ。ウィンドウが重なってしまったので恐る恐る自分でどかしてみる。できた。なるほど簡単だ。今度からは並び替えは自分だけでできるだろう。




 石切り場で運ぶ石材を見てみることにした俺達は、一人で運ぶには無理のある重さの切り出された石を前にしたというわけだ。石のことは正直よくわからない。角が取れているが、まっすぐに切り出された普通の石だ。普通の力で動かそうとしたがピクリともしない。


「ぼくたちはああやって運んでいるんだ」


 テソが指で示す先には、テソくらいの少年が何人もかかって皮と紐を使った器具を使ってやっとゆっくりと先程の石と同じくらいの石を運んでいた。


 俺にはダメなところは明らかだが、いきなり正答を教えてもスコアは高くならない、発明者に考えさせることが必要だとスタートアップガイドにもあった。初手についてはオペレーターのみんなに聞いてみよう。




「初手ヘルパーアイテム全ブッコミ店売り工具全ブッコミで放置」

「日本語を喋れ」


 レベッカ少尉が日本語なのに日本語とは思えない言葉を発したので俺は思わずツッコミを入れてしまった。彼女は半眼でニヤつきながら語る。


「まあ、王道を行くならば研究の様子見しながらアイテムを逐次投入して行くのがベストよ。でもこのゲームのスピードランの議論を見るにそれは必ずしも正ではないの」


「どういうことだ?」


 俺はこう聞くしかないよな。こういう時の彼女の得意そうな顔はからかわれているようで若干腹に据えかねそうになるが、彼女が美人故かその他のなにがしかがあるのか不思議と怒りには至らない。ちょうどいいところで彼女が俺をコントロールしているのだろうか。レベッカ少尉はそのまま続ける。


「発明の研究時間の差がプレイヤーが発明者に働きかける時間分、逐次投入より初手で全部やってしまう方がロスがないのよ」


 レベッカ少尉は落ち着いた表情になった。


「このミッションは、あなたがゲームに慣れるためだけにあるものよ?あなたに依頼されている飛行機発明とほぼ関係ない。だからこのミッションをスコア無視して最速でクリアして、私達みんなで飛行機発明の攻略法の探求に時間を割く方がいいと思うのよ」


 彼女もこのゲームのプレイヤーだ。だから、初心者の俺よりは発明王についてよく知っている。だからこそ、最速の正答を俺に示しているんだ。それはわかった。俺は言う。


「レベッカ少尉、アンタのアドバイスは雑誌の最速攻略のそれそのものだ。参考になる。だが俺はこの手のゲームが初めてなんだ」


「そうね。あなたの言わんとしていることもわかるし、私もそう思うわ。参考までに攻略法のひとつを教えたまでよ。ゴールディ少尉にも聞いてみたら?」


 レベッカ少尉は俺の不安を汲んでくれているようだ。俺はアドバイスに従いゴールディ少尉にも聞いてみることにした。


「難しい問題です。我々も仕事なので効率的な攻略法を包み隠さず伝授しますが、私個人としては高田さんには色々やってみて、発明王の醍醐味を味わってもらいたいのですよね」


 ゴールディ少尉は真面目に問題に向き合っている。レベッカ少尉が問題に向き合っていないわけではないのだが、こう対比するとゴールディ少尉の真摯さがポイントになっているのではないかな、と思う。ゴールディ少尉はスタートアップガイドについて取り上げた。


「スタートアップガイドに書かれた手順はVRMMO版とは厳密には違いますが、おおよその手順は踏襲されています。高田さんがVRMMOに慣れる意味でも早解きなどせず、スタートアップガイドを参考に、納得がいくまでテソと研究をするのがいいと思います」


 俺は納得した。そして質問をぶつけてみる。


「なるほど…で、最初には何をするのがいいんだ?」


「テソが何ができるか。すなわちテソのステータスを確認してみてください。カーソルを出して、テソに向けてレシーバーのスイッチを押せばメニューが出ます。そこから『ステータス確認』を選べばステータスウィンドウが出ます」


 ゴールディ少尉の指示がくる。それをもとにスタートアップガイドに何が書いてあったかを思い出す。とするとあれがあるはず。ゴールディ少尉の指示通りにテソ少年にカーソルを合わせ、右耳内のスイッチでメニューを出す。『ステータス確認』でスイッチを押すと大きめのウィンドウが出る。いくつかあるスキルのうち、ある1つが目にとまる。


 なるほど…『木工』か…。この少年は道具を作る素養を備えているというわけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ