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あの憧れた異世界へ!! 【憧憬転生】   作者: 神楽坂心一
【第一章】幼年期編
4/5

【憧憬二話】初めての外出!

※2019年11月1日更新しました。


異世界転生してから二年。

俺は一度も外に出た事はない。だが先に言っておきたい。俺は決して引き篭もりじゃない、と。

いや、ホントだよ? 嘘じゃないよ? 何だ怪しい詐欺師みたいな物言いだが、これは事実なのである。


俺が転生したこの家には、子供は三歳になるまで外に出てはいけないという言い伝えがあるらしく、そのせいで転生してから一度も外に出た事は無い。


そんな俺は今日、三歳の誕生日迎える。


……つまり、今日やっと外に出れると言う事だ!


ーーガチャッ。


お!? そろそろ行くのかな?


「アキ〜! 今日やっとお外に出れるね〜!」

「うん! たのしみ!」

「ねぇ、アキ? せっかく始めてお外に出るんだから、とびっきり綺麗な所が良いわよね?」

「え? あ、うん!」


綺麗な所? 何だろう、海とか?


「どこにいくの?」

「ふっふー、お母さんのとっておきの所へピクニックよ!」


そう言って母さんは得意げな顔でこう言った。


「へぇー! とっておき?」

「そう! この世界で私達しかいけない所よ!」


おぉ! 何だか分からないけど凄そうだ。ちなみに、そこまでの移動手段は?


「おかあさん、どうやってそこにいくの?」


最近は成長が早い。舌ったらずも無くなりつつある。


「それはね……、こうするのよ! ーー【亜空門(ワープゲート)】!」


突如俺の部屋に、神聖な門が現れた。

門の中は、真っ白い水面のように揺らめいている。

魔術は慣れたつもりでいたが、やっぱり母さんの使う魔術にはいつも驚きが隠せない。

ーーいや、もしかしたらこの世界ではこれが当たり前なのだろうか?


「ふぁ〜、ここをくぐるの?」

「そうよ〜ここを潜るとね、お母さん達の秘密の場所に行けるのよ〜!」

「へぇ〜! じゃあ早く行こうよー!」

「でも、その前にお父さんとピリアを呼んでくるから、少し待っててね〜」

「はーい」


おいおい、こんな神聖な門出しっぱなしで良いのかよ?

……まぁいいか。だって母さんだし。


それにしてもこの不思議な揺らめき。実際に見れる日が来るとは思わなかった。昔から、アニメや漫画で似たようなものを見る度その感触が気になって仕方が無かったんだよな。

まさか、それを確かめられる日が来るとは思わなかったけどね。


……ちょっとだけ手を突っ込んでみようかな。


「お!? ……こんなかんじだったのかぁ」


ほぅー? こんな感じか。

こう、ニュルン、とした感触とかかなーって思ったら、突っ込んだ手だけ今回向かう場所の風を感じられた。

見た目に反して全然水っぽくはない。


いやー、ここに来てからは毎日凄い体験をしてる気がするな。


それから少しして、母さんが父さんとピリアさんを連れてきた。


今度こそ全員揃ったみたいだ。


「……すまない。待たせたなアキ」

「アキ様、遅れて申し訳ございませんでした」

「うんうん! ぜんぜんだいじょうぶだから、はやくいこう!」


ちなみにだが、俺は今、これまでに無い程初の外出を楽しみしている。

そう思うのも仕方がないだろう。いくら、日本にいた頃の俺がアウトドアでは無かったとは言え、やはり精神が身体に引っ張られているのか、どうしてもこの歳で外出出来ない、というのはとても辛く感じた。

何より異世界の景色。その言葉だけでも惹かれるものがある。


「うふふ、そうね、早く行きましょうか」

「……そうだな。待たせた分、アキには沢山いいものをせてあげよう」

「ふふふ、旦那様の言う通りですね」


桃色空間形成か?

相変わらず仲が良いなぁ、この家の人達はさ。まぁ、嫌いじゃ無いけどね。


あ、今更だが、俺の父親について説明しておく。


ーー俺の父親は()()()。見た目三十代前半のイケメンだ。

薄紫の髪に、母さんと同じ金の瞳が特徴的な人物なので、やっぱりここはファンタジー世界なんだなぁ、と思う。

身体の方もしっかり鍛えてある筋肉が透けて見える程なので、全体的に見ると精悍な男性と感じる。


そんなイケメン父さんは、あまり頻繁に俺の所には来れないらしく、会えるのは一週間に一度だったり、たまーに、一ヶ月に一回しか会えない時もある。


何で会えないんだろ? と思わない訳では無いが、従者のピリアさんがいるくらいだし、俺的に父さんは、社会的に高い地位についている、と考えている。

でも、時々会えばこのようにちゃんと俺の相手をしてくれるので、寂しい、哀しいと思った事は無い。


「……それにしても、【亜空門(ワープゲート)】をそんな豪華にする必要があるのだろうか」

「旦那様、これはアキ様のためかと」

「そうよ〜! こういうのは演出が大事なのよ?」

「……いや、分かってはいるんだが、な」


父さんはそう言って苦笑していた。

……やっぱり母さんの演出だったのね。まぁ、綺麗だから良いけど。


そうこうしている内に皆が扉の前に立った。


「よ〜し! じゃあ、行くとしますか!」

「うん!」

「……楽しみだ」

「参りましょう」


こうして、俺達は門を潜り抜けた。






><><><><><><><><><><><><><






門を潜るのはほんの一瞬だった。

身体が完全に前いた空間から出ると、自分の身体がプリンみたいに、ぷるんっ! と、震えて一瞬身体が心配になった。


そして、視界が開けた先に見えたのはーー


ーー白く輝く、荘厳な柱が立ち並ぶ神殿だった。


「うわぁ……」


す、凄いな。あれだ、地球でいうパルテノン神殿だなこれは。でも、壁の幾何学模様が青く光り輝いていてこっちの方が凄く綺麗で神秘的な感じはするな。


……あれ? 外の景色を見ようとしたけど、何故か白い靄がかかっているようで見えない。


疑問には思ったけど、いくつかに柱を通り過ぎるといつの間にか出口へと着いた。出口と分かったのは明らかに大きな門が大きく口を開けるようにして建っていたからだ。この門は周りの柱と同じく幾何学模様が刻まれている。ただ柱とは違って光ってはいないようだ。


俺達は一斉にその大きな門から外へと歩み出した。


「……」


俺は思わず目を見開いた。


「……いつ来てもここは本当に綺麗だな」

「そうですね……。」

「そうねぇ……それにまた一段と神秘的になった気もするわ」


……なんて綺麗なんだろう。


空気中に漂う幻想的な光。どこまでも広がる青空。

眼下には緑の絨毯(じゅうたん)とも言うべきものがあり、目の前に目を向けると、そこには先程から見えていた幻想的な光を出している大樹があった。

後ろを見ると、たった今出てきた真っ白に輝く神殿がある。

どれ程高い位置にあるのか分からないが、少し遠くを見ると雲の海が広がっていた。今は雲で見えないが、もしこれが晴れていたなら眼下に広がる景色は一体どうなっていたんだろう。


「きれい……」

「そうでしょ〜! アキの初めての外出は、どうしてもここに連れて来たかったの〜」

「そっかぁ……。あうがとう、おかあさん」


こんな景色を見せくれて、これは感謝しなきゃだな。


「ふふふ、喜んでくれて嬉しいわ」


スーパー美女の母さんが魅せる笑顔は破壊力抜群だな。


……それにしてもここは一体どこなんだろう。


「おかあさん、ここはどこ?」

「ここはね、『アイオンの墓標』っていう遺跡なのよ」

「へぇー」


アイオンは昔の偉人とかかな?

やっぱ遺跡とかって、冒険心くすぐられるよな〜。

聞いてみよ。


「あいおん〜?」

「一番偉い神様のお名前。難しいお名前で言うと、【創世神アイオン】と言って、この場所はその神様が死んじゃった場所と言われているの」

「ふーん」


話だけ聞くと、ここって凄い歴史的価値がありそう。


「そうせい〜?」

「まだアキには早い話だからまた後でね〜」


そこまで言われると気になる。


「もっとおはなしききたいー!」

「面白くないわよ〜?」

「お願いー!!」

「えぇ…そんなに知りたいの〜?」


母さんは少し困惑気味だ。そりゃ幼児が神話や歴史に興味を抱いたら困惑するか。

俺が幼児頃なんてアン○ンマンとか戦隊ヒーローに夢中だっただろう。

もう少し年齢が経つまでは我慢するか……。


すると、木を見上げていた父さんがこっち向いた。


「……アキ、お前にプレゼントがある」


えっ!プレゼント!?


「そうよ〜!きっとアキなら喜んでくれるはずよ〜!」


お、おれが喜ぶもの……。もしかして……。

ピリアさんが持っていたバケットから一冊の本を取り出し、父さんに渡す。


「……お前は賢い。それに好奇心も強い。そんなお前にピッタリだと思ってな」


微笑みながら俺に渡したのは、《新魔術大全》と書かれた本だった。

こ、これはまさに俺が欲しかったものだ……。今すぐにでも読みたいぐらい。

しかしまずはお礼だ。


「ありがとう!とーさん!!」

「……喜んでくれて何よりだ」


父さんは常に穏やかであまり表情を変えない人だが、嬉しいことがあったときは明らかに表情で分かる。

俺はこのときおり見せる表情が好きだ。

アタイがオンナだったらイチコロだったワ。


「母さんも嬉しいわ〜!はい。母さんからはこれをあげる!」


そう言って母さんがくれたのは銀細工のペンダントだった。


「これはね、母さんの知り合いに頼んで作ってもらったものなの。これと同じ物を付けてる人の居場所がどんなに離れてても分かる……。つまりはお守りね」


三歳の子供にはまだ早いんじゃないかと思ったが、将来なにか見越してプレゼントしてくれたんだろうか。


「さ、付けてみて!」


サイズはまだ小さい俺の身体はには不釣り合いだったが、重さ自体はそれほど感じない。

よく見るとオシャレだ。将来使わせてもらおう。


「かあさんもありがとう!」

「喜んでくれて良かったわ〜」


次は私と言わんばかりにピリアさんが先程のバケットから何か取り出した。


「私からはナリム様と同じく本を」


どうやらまた本のようだ。しかし本好きで好奇心旺盛な俺にとってはいくら貰っても嬉しい。

タイトルは、っと……。

《白銀の勇者》。これはあれか?日本む○しばなしみたいなやつか?


「これは伝記物語と言いまして、ご公明なアキ様なら楽しめると思い、選んだしだいです」


伝記物語といえば、世界の偉い人の一生を描いたものか。よくエジソンとか小学生の頃読んでいた記憶がある。中には英雄記に近い内容もあり、ワクワクしたものだ。


「ありがとう!ぴりあ!」

「お礼なんて……。こちらこそ誕生してくださって感謝の極みです」


跪かれた。人生初の経験だ。

ピリアさんはちょっと仰仰しすぎるんだよなぁ。

なんて返していいか分からず、思わず「う、うん!」と動揺気味に返してしまったの仕方がないだろう。

早速だが読みたい。今すぐにでもページをめくりたい。


「ねー、もうみていい!?」


ただをこねてみる。


「良いわよ〜!でも今準備するから待っててね〜」


母さんは俺の頭を撫でながらいう。


それから俺達は大樹の近くにマットを広げ、座った。

テキパキとピリアさんがお菓子と飲み物を準備している。

あの本二冊を出してほとんど空にになったはずのバケットから到底入りきらないはお菓子と飲み物を取り出した。

あれも魔術を使った四次元ポケ○トのような物なのだろうか。


そんなこんな考えているうちに準備が出来たようだ。

言語は以前ピリアさんから教わったので読める。日本語のようにいくつか種類があるわけじゃなく、どちらかと言えばアルファベットに近い感じだ。

早速マットの上に腰を下ろし読み始めるとする。





><><><><><><><><><><






ーー【魔術】


この世界において魔術はとても大事なものだ。魔素という万能物質を利用し、人々の生活を手助けしたり、安寧を守るためにその力を使用する。




[使用方法]


使用方法は大きく三つありーー


・自らの魔力を使用する。


・魔力が篭ったものを媒体として使用する。


・これはあまり使える人がいないため一般的ではないが、大気中の魔力を消費し、使用する。


三つ目を使う人が少ないのは魔力変換効率が悪いからだという。


これらが魔術の使用方法だ。

元々この世界の人々は魔力をみんな持っており、初歩の魔術に関しては誰でも扱える。




[属性]


魔術には『火』『水』『風』『地』『闇』『光』『空間』の七大属性がある。


さらにこれらから派生して、生活魔術や召喚魔術、契約魔術や精霊魔術など、多様な魔術があるようだ。


そして、それぞれの属性には初級・中級・上級・帝級・天級の五段階があり、初級は誰でも、中、上級になると使える者が少し限られ、帝級になるとほとんど使える者はいない。天級は神と呼ばれる、一部の超常存在のみが行使できるとされている。




[詠唱]


魔術を行使する際には詠唱するのが一般的だ。

詠唱というプロセスを経て、発動したい魔術をイメージし、世界と繋がり、事象を改変する。

ただ、賢者と呼ばれる高位の術者などは『無詠唱』の技能を持ってる者もいる。

長きに渡って魔術を使用したり、魔と繋がりが深い者は世界と繋がりやすいために詠唱を必要としないらしい。


威力に関してだが、式句を短くすれば威力が落ち、逆に長くすれば上がる。

無詠唱の場合はどうなのかというと、込める魔力の量によって変わる。多ければ、威力が上がり、少なければ下がるといった具合に。

では魔力を大きく込めれば込める程威力が大きく上がるというとそうでもない。

本人が扱える量は才能によって元々決まっており、それを超過すると魔術が破綻してしまうらしい。

分かりやすい話、コップ一杯に水を注ぐと溢れるというやつだろう。


[魔術一覧]


・火属性初級魔術一覧 〜〜〜

・火属性中級魔術一覧〜〜〜

・火属性上級魔術一覧 〜〜〜


・水属性初級魔術一覧 〜〜〜

・水属性中級魔術一覧 〜〜〜

・水属性上級魔術一覧 〜〜〜


・風属性初級魔術一覧 〜〜〜

・風属性中級魔術一覧 〜〜〜

・風属性上級魔術一覧 〜〜〜


・地属性初級魔術一覧 〜〜〜

・地属性中級魔術一覧 〜〜〜

・地属性上級魔術一覧 〜〜〜


・光属性初級魔術一覧 〜〜〜

・光属性中級魔術一覧 〜〜〜

・光属性上級魔術一覧 〜〜〜


・闇属性初級魔術一覧 〜〜〜

・闇属性中級魔術一覧 〜〜〜

・闇属性上級魔術一覧 〜〜〜


それぞれの魔術の詠唱式句が記されている。上級魔術までしか載ってないみたいだ。帝級とかはやっぱり特別な人にしか使えないからだろうし、天級は載っている筈もないか。

よく見ると魔術一覧の下に何か書いてある。


ーー「空間属性には特殊な適性が必要である。故に特別な師を必要とすべし。」


空間属性が使える人にしか分からないということか。その師匠というのがどこにいるのか知らないが、いつか教わってみたいものだ。




早速使ってみたいけどどうすれば使えるのだろうか。ページをめくって……あった。


ーー「最初は己の内に宿る魔に目を向け、凝縮し、どう変化させたいかイメージするのがいいだろう。」


まずは自分の魔力を感じろって解釈で合ってる……よな。

良しやってみよう。

自分の内側に目を向け魔力を感じる……。

目を閉じ、しばらくすると、流れる血液以外にも何かもう一つ鳴動してるのを感じる。

()()()とも呼ぶべきだろうか。

ここに流れいるであろう魔力を、次は凝縮し一点に集めるように意識する。

どこに集めるべきなのだろうか。本にはどこに集めなくちゃいけないとは書いてなかった。それなら身体中何処からでも出せるのかもしれない。


一番イメージしやすい手のひらに集めるように意識する。


「……何をしている?」

「ひゃあ!」


突然声を掛けられたので変な声が出てしまった。集中し過ぎてて父さん達のことを忘れていたようだ。

話をやめて皆怪訝な顔でこっちを見ている。

な、なに?


「……驚かせてすまない。しかし急に魔力が集っていくのを感じてな」


あぁ、そういうことね。

今魔力を凝縮していた様子を父さん達は感じた、というより感知したみたいだ。

ここはちゃんと説明すべきだろう。


「いまね、まじゅつを練習してたの!」

「……なに?アキ、お前もう内容を理解したのか?」


まずい。流石に気味悪がられるか?

誤魔化した方が良かったかもしれない。

三歳の子供が魔術を操ろうとしたら魔女狩りみたいみたいに火炙りとかにされてしまうだろうか。あり得ないとは限らないだろう。ここは前世とは違う世界なのだろうし。常識が俺にとっては非常識のことの方が多いだろう。

か、考えただけで寒くなってきた……。

今更間に合うか分からないが誤魔化そう。


「さ、さいしょだけみたの!そしたらなんとなくおててがあつくなってきたの!」


だあぁぁあぁ!上手い言葉が見つからなかったああぁぁ!


「……勝手に熱くなったのか?」

「う、うん!」

「……」


母さんとピリアさんはなにか驚いた顔をしている。

これはまずいか……?


「……そうか。どこか痛んだりはしないか?」


よ、良かった。どうとも思われないみたいだ。

魔術の練習は人前ではやらないようにしよう。

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