嫁ぎにいく子候補:湯足柑奈(ゆたりかんな)
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「懐かしいなー。……って、なんだか実年齢より上みたい……」
週末のとある日、私はひさしぶりに実家近くの商店街へやって来ていた。
私の名前は、湯足柑奈。今年、母校である星花女子学園へ教育実習に行くことになった大学生。
「……あ、この本屋さんも懐かしいなー」
ふと目についた、懐かしい本屋さんに足を踏み入れた。大学の寮に入るまでは、ここによく参考書を買いにきたものだ。
「いらっしゃいませー」
見慣れた内装とは逆に、見慣れない店員さんにあいさつされた。
「えっと……店主のおじいさんはいますか?」
「店長ですか? ……少々お待ちください」
そう言い残すと、店員さんはお店の奥……住居の方に入っていった。しばらくすると、奥からはさっきの店員さんのと店主のおじいさんのお孫さんの響ちゃんの話し声が聞こえてきた。
『響、店長ってどこに行ったっけ』
『おじいちゃんなら、今日は一日中町内会の集まりに行くって朝ご飯食べてる時に言ってたじゃない』
『そうだっけ』
『……それより、アタシのパンツ知らない? 一枚見当たらないんだけど』
『え、今わたしが穿いてるけど』
『…………え!?』
『だって、昨日の夜汚しちゃってわたしと響のでひどい臭いしてたし、替えの下着とか持ってきてなかったから、そのまま洗濯機に入れてタンスの中から借りた…………って痛いっ! 暴力! 暴力反対!』
大きな物音がした十数秒後、奥から私服姿の響ちゃんが出てきた。
「あ、おひさしぶりですお姉さん」
「ひさしぶりー響ちゃん。大きくなったねー。……えっと、さっきの店員さんは……?」
「ちょっと疲れちゃったみたいで、交代しました」
「そ、そう…………」
なにも変わってないと思っていたけど、この本屋さんは少し変わったらしい。




