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15 根拠のない自信

手段を選んでいる場合ではない。利用できるものは利用する。

リリの言葉の意味を私は考えていたが、私にはわからない。


奏が忘れていった資料を大学に届ける道すがら考えた。

梨佳と樹は二人とも彼氏と彼女がいる相手を好きになった。梨佳も樹も、自分が好きな相手に振り向いてもらえるように告白もするし、アプローチもしている。それは本当にとがめられないことなのだろうか?そんなことを考えてえいた私は道に迷ってしまった。

そもそも方向音痴なのだ。それなのに考え事をしながらぽやぽやと歩いていれば、そりゃ迷う。

昨日の居酒屋の帰り道も、正直リリがいてくれて助かった。無事に帰りついたから。ちなみに昨日、ジュエリーボックスをたまたま開けてみたらリンゴ飴くらいの小振りなリンゴが出てきた。小振りとはいえ、明らかにジュエリーボックスよりは大きいそれを、恐る恐る引っ張ってみると引き出せてしまった。それはきっと白雪姫の毒リンゴ。リリが言っていたものなのだとわかったが、得体の知れないものに思えて口にするまではとても勇気が必要だった。それを食べると自然と眠たくなり、そのまま眠ってしまっていた。



「あれー?確か・・・莉桜ちゃん?」

ゆるふわなしゃべり方には覚えがあった。振り向くと梨佳がいた。

これは、天の助けだ。きっと30分は迷っている私を気の毒に思った神様が梨佳を連れてきてくれたのだ。1回しかあったことがないから仲良くはないけど。

背に腹は変えられない。私は通学中という梨佳に一緒に大学に連れていってもらう事にした。


「昨日は大丈夫だったー?気分悪くなったって。」

「はい、大丈夫です。」

私は昨日、一足先に帰る理由として気分不良を訴えたのだ。完全に仮病だった。


「何となく思ったんだけどさー。ちょっと今回は私も自信ないんだけど莉桜ちゃんって樹くんのこと好きでしょ?」

急に聞かれた言葉に私は足を止めてしまった。

数歩歩いて、私が歩みを止めた事に気づいた梨佳は振り返る。

「あ、当たっちゃった。」

そしてゆるふわに笑う。

「いや、違うくて。」

私の否定の言葉を聞かずに梨佳は続ける。

「自分の気持ち否定する必要ないじゃん。好きなら好きって言えばいいのに。」

変なの、と続けた梨佳は本当に理解できないという様子だった。

樹に好意は抱いている。だけど、それは優しくされたからとかで、まだ恋と呼べるまでの代物ではない。

そんな説明を上手くできる気がしない。

私が黙ってしまうと梨佳は私の手を握ってきた。そしてゆっくりと手を引いて歩き始める。

梨佳とは昨日はじめて会ったばかりで、直接交わした言葉も多くなくて。それなのに彼女はそんなことを感じさせない。手を引かれることに抵抗もなかった。それはちょっと不思議に思えた。



「樹君は奏ちゃんのこと好きみたいだけど、奏ちゃんは迷ってるみたいだからまだチャンスあるよー。」

「・・・迷う?」

「奏ちゃんすごく迷ってるじゃん。優人君と樹君の間で。奏ちゃんが答え出すまでは私にも莉桜ちゃんにもチャンスあるよー。まぁ、奏ちゃんが選んだ時点で私たちのどちらかの可能性は低くなっちゃうんだけどね。」

私が樹を好きだと仮定すると奏が樹を選べば私が、優人を選べば梨佳が失恋をする。それなのに。

「梨佳さんは、何で私の応援するの?」

梨佳の行動に理解できない。

「奏ちゃんが優人君とこのまま付き合っても、私に振り向く可能性はゼロじゃないでしょ?それに優人君のこと梨佳幸せにできると思うんだー。だから莉桜ちゃんの応援できるよ。」

梨佳は、どうして彼女がいる人を好きになってなんなら迷惑とまで言われても諦めないのだろと思っていた。同時に彼女にハンターのような姿勢を理解できなかった。

もしかしてと思った。

梨佳は自信があるのだ。それは根拠のないものかもしれない。


好きな人が幸せでいられるなら、自分が隣にいなくてもいいという考え方もある。それは好きな人の幸せを考えられるすごい考え方だと思う。

だけど梨佳は違う。梨佳は好きな人を自分が誰よりも幸せにできると信じていてその自信がある。だから彼女がいても関係ないのではないだろうか?自信満々すぎて傲慢な印象を受けるが、私は嫌いじゃないと思えた。


「梨佳さんってすごいね。本当に好きなんだね。」

ゆるふわに笑っていた梨佳はきょとんとしたあと今度ははにかむように笑った。

「迷惑って言われても諦められないくらいにね。」

繋いだ手から伝わる体温が心地いい。

私が迷子にならないように、足を止めないように。彼女は手を貸してくれた。


「・・・樹さんは奏ちゃんの事好きだけど。」

自然とでた言葉を私は途中で止めた。

「うん。」

梨佳は頷いてくれた。


樹の事が好きだ。



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