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10 正しい告白のタイミングとは

樹の告白のところで、私の体に力が入ってしまった。


「一目惚れだって言われた。付き合ってほしいって。」

少し落ち着いてきたのか、奏は私が入れてきたココアを一口飲んでから話を続けた。 


勘のいい男、樹は奏の反応を見て優人との関係に気づいた。

奏と優人の仲を承知の上で奏に告白したらしい。

四人は友達になったのに何故樹は奏に告白何て出来たのだろうと私は思った。だけどたかが数時間の付き合いなのだ。樹は自分の気持ちを優先したのだろう。


樹の告白は、ドラマでよくある傷ついているところに付け入るという方法なのだろう。傷ついている奏には効果抜群だった様子。私は先程から体の緊張が解けないし、頭が痛い。私の存在が危機に去らされている。


「奏ちゃんは樹さんのことが好きなの?優人さんが好きなんだよね?」

誘導っぽい問いかけに奏はちょっと微笑むと言う。


「今日で優人を信用できなくなったんだと思う。優人とは付き合いも長いし、色々なあったけど、、、。今は楽だから一緒にいるっていうのもあるかもしれない。」


私は将来母として優人と一緒に私を育ててくれる奏の言葉に、悲しくなった。夫婦喧嘩を偶然見てしまったことがあるが、その時の気持ちに似ていた。奏の表情はこの結果は仕方ないと思ってるようにも見えた。


嫌な気持ちが私を支配する。

「樹さんに、乗り換えるの?」


奏は困ったように笑う。

「そんな意地悪な言い方しないでよ。」


「、、、ごめん。」

今、私はすごく嫌な奴だ。私が私として存在したい。樹の事が気になるから。そんな自分勝手な思いを優先して奏に詰る様な言葉を投げつけている。

それにもうひとつ。奏は優人と樹のどちらが好きなのかという私の問いかけには答えなかった。樹は優しい人なのに彼の気持ちに奏が誠実の答えてるとは思えなかった。

自分の気持ちを抑えられない。苦しい。

 

この後奏はまた考え込んでしまったため、話は自然と終わりになった。

本当は私が樹とは初対面じゃないことも、樹と初対面の時に感じた思いも奏には言うことができなかった。









奏の家、妃家に居候すること5日目。私は暇を持て余していた。

家出中だが鈴木莉桜として学校には通えるように環境は整えられている。鈴木莉桜としての通う学校はこの辺でも名門とされる学校で、ぶっちゃけ周りの子達のレベルの高さに圧倒されている。鈴木莉桜としての交遊関係もあまり把握できておらず、学校にいても心もとない。そういう理由から今は学校に行きたくないと駄々をこねて休んでいる状況だ。妃のおばさん、未来の祖母は最初こそ学校に行くように何度も言ってきたが、今は何も言わず好きにさせてくれている。もしかしたらだが、家出の原因が学校にあるかもと考えたのかもしれない。学校をサボるなんて今まで経験がない。罪悪感はあるものの、自由に動き回る時間が必要なのも事実だった。


さて、日中の時間の過ごし方だが私は喫茶店のお手伝いをしていた。妃家では小さな喫茶店を営んでいるのでお世話になっている少しものお返しにと私はお手伝いを始めた。お手伝いをすると、未来の祖父がお小遣いをくれる。祖母を通して実家の両親からいくらかのお小遣いをもらっているが、お金は何かのときのためにあるに越したことはない。できれば携帯電話が欲しいが、鈴木莉桜は持っていなかったらしい。この時代では珍しくないのかもしれないが、不便だ。


私が喫茶店でできる仕事なんて高が知れているが、二人からはとても助かるとのお言葉を頂いた。ちょうど、バイトさんが季節外れのインフルエンザでお休みしていたらしい。


高校を休んでいるのにバイト(家の手伝い)をしていることが分かると、いろいろ良くないらしい。また、日中に高校生が私服でうろうろしてると周りの目もある。ということで、ほぼほぼ私は皿洗いやお掃除など厨房でできるお手伝いを頑張った。本当はお料理運んだりレジしてみたりしたいが、仕方ない。夕方からならお客さんも減るし、放課後にバイトする学生もいるからと言うことで厨房以外の仕事をする許可がでた。きっとこの時代でなければそんな許可は降りなかっただろう。私は接客業をやってみたかったのでルンルンの気分だった。


そう、奏と樹が二人でお店に来るまでは。

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