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平均アイテムドロップ率85%の異世界  作者: 888回目の良い香り
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未踏、森林

 再びギルドにこんにちは。

 辺りはすっかり暗くなり始めていた。


「どうしたアユム。自分の過ちに気付いたか?」

 

 おっさんがなぜだか嬉しそうに話しかけてきた。

 俺は一つ咳払いをする。


「お気に入りの奴隷が32万ゴールドだったわ」

「おーおー、そりゃあお高いこった」

「ほんとだよ」

「32万もあったらいい武器でも装備でも買えるな。まあこれでお前も諦めがついたんだろうし――――」

「諦めてはいない。時間をかけて金をためる。それまでだ」


 そう、俺は諦めてなどいない。

 もちろん、32万など、現実世界では相当厳しい。

 だがここは異世界。

 さらに俺には、アイテムドロップ率85%というチートスキルがある。

 それを上手く使いこなせば、32万ゴールドなどすぐ手に入るはずだ。


「というわけでおっさん。俺は金をためる」

「途中で折れることを願ってるぜ……依頼を受けるのか?」

「いや、依頼は受けない。まずは魔物を片っ端からぶち殺す」

「じゃあ何でここに来たのさ」

「一応報告と思ってきたのさ」


 おっさんはなるほどと言った風に頭を掻いた。

 この時間帯(夕方ごろ)になると、ギルド内にいる冒険者も少なかった。

 皆日の出ているうちに依頼を受けてこなしたいということなのだろう。

 俺も今日はもう何もする気はない。


「明日さ、森の中に入ってみようと思うんだ」

「ほう」

「森の中にはどんな魔物がいる?」

「いろいろいるな。ビットゥもいれば、ゴブリンもいる」

「ゴブリン…か」

「ゴブリンは最悪無視してもいいかもな。アイテムは一切ドロップしない」


 その後、つまらない世間話をして、俺はギルドを出た。

 燻製肉と果物を適当につまんで腹を満たし、俺はマイホームに戻った。


 明日から本格的に魔物狩りをしていこう。

 俺はそう心に誓い、眠りについた。




 翌朝、時刻もろくに分からない時間に起きた。

 記念すべき異世界での二日目の朝だ。

 どうやら転生は夢ではなかったようだな、安心安心。


 俺はさっそく朝飯を食って、剣片手に街を出て魔物狩りを始めた。

 ビットゥを始末しながら、どんどん街から離れて、奥に見える森を目指した。

 


 暫くして、森の中へと入った。

 森の中は木々が生い茂っていたが、朝日が差し込んでいたさほど暗くはなかった。

 視界も上々だ。

 すると、見たことのない、いや、ある意味見たことのある魔物に出会った。


 俺の世界でも空想上の生き物として有名な、ゴブリンだ。

 緑色の皮膚に出べその腹。

 口元は汚く、途轍もなく臭そうだ。

 片手には粗相な木の棒を持っている。


「木の棒じゃ相手にならんぜ」


 俺は鞘から剣を抜いて、勢いよくゴブリンに斬りかかる。

 ゴブリンは木の棒で俺の剣を受け止めようとするが、木の棒ごとあっさり両断。

 ゴブリンは煙と化した。

 残ったのは400ゴールドのみ。

 ゴブリンは何もドロップしないというおっさんの話は、どうやら本当のようだ。


 その後もゴブリンを何匹も倒し、どんどん資金を貯めた。

 10体以上倒しても、ゴブリンは何もドロップしなかった。

 本当にカスだなこいつ。


 途中コウモリの魔物が目の前を横切ったので、斬ってやった。

 100ゴールドと、小さなキバをドロップした。

 あとは1,5メートルくらいありそうな大き目の犬。

 涎を垂らして噛み付いてきたから、口の中に剣をぶっ刺してやった。

 500ゴールドと肉を落とす。


 そんな感じで、俺はビットゥ、ゴブリン、コウモリ、犬を次々と斬り、2時間足らずで資金は6000ゴールドを超えた。

 この調子なら32万なんて一週間くらいで溜まってしまいそうな気がする…なんて言い過ぎか。

 ここからさらに食費や装備代を考えれば、一週間でなど到底無理だな。


 するとその時、木の陰から何かが俺に向かって飛んできた。

 不意を突かれ、俺はそれを剣を持っていない方の手で防ぐ。


「なんじゃこりゃ!」


 手に引っ付いたのは、白い糸が何本も束になって縄のようになっているものだった。

 そして、木の陰がコソコソと蠢き、巨大なクモが姿を現した。


「うっわ、グロいな」


 俺は剣で糸を切ろうとする。

 しかし、糸は(しな)るばかりで一切切れない。


「なんでやねん!」


 巨大蜘蛛は再び糸を発射する。

 今度は右足に引っ付き、俺はバランスを崩して倒れこんだ。

 ズルズルと巨大蜘蛛の方へと引きずられる。


 最初は焦ったが、こいつの攻略は簡単だった。

 わざと蜘蛛の糸を引っ付け、引き寄せられたところで蜘蛛の脳天に剣を刺す。

 それだけで巨大蜘蛛は簡単に倒せた。


 700ゴールドと蜘蛛の糸をドロップ。

 蜘蛛の糸は俺の新品ショートソードでも切れなかったから、たぶん丈夫なんだろう。

 これは使えるかもしれない。


 その後も何回か巨大蜘蛛に遭遇したので、そのたび同じやり方で倒していく。

 一体一体を倒すのに比較的時間はかかるが、今の俺にとってこの蜘蛛にはそれほどの時間をかける価値があった。

 巨大蜘蛛は、時折気になるものをドロップする。


「毒針…」

 

 そう、毒針である。

 毒が塗ってあるのであろう大きな針をドロップする。

 用途は分からないが、これもすべて回収する。



 気付くと、4,5時間ほどが経過していた。

 かなり多くの魔物を倒したおかげで、収穫はだいぶあった。


 まず、合わせて22000ゴールド。

 そして、蜘蛛の糸10セットに、毒針8本、ビットゥの肉38個、コウモリの小さなキバ4本、犬の肉18個だ。

 多すぎる、これがアイテムドロップ率85%の力だ。

 おかげで袋の中身は既にパンパンだった。


 後はこれを持って帰るだけだ。

 午前中を全て費やしてしまったような気はするが、それでも構わない。

 午後は色々とやりたいことがあるからな。


 俺が森から出ようと方向を変えると、背中に嫌な感触が走った。

 柔らかい何かが背中全体を包み込んでいる。

 キモイ!


「やばいやばい…!」


 俺はそのまま、その柔らかい物体に飲み込まれていく。

 このままではまずい、非常にまずいぞ!

 俺は横目で、その物体の正体を確認する。


 この色、感触…間違いない。


 これは世界一メジャーな魔物、スライムだ。


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