表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平均アイテムドロップ率85%の異世界  作者: 888回目の良い香り
14/15

対峙、アホドラ

 夜が来た。

 風が強かった昼頃とは打って変わって、無風、ほぼ無音。

 不気味なほど静かな空間に、階段を駆け上がる音だけが響き渡った。

 俺が階段を上り終えると、全員が外に出たことになる。


 落獣人が用意してくれたランプを腰につけ、準備完了だ。

 全員がランプを装備しているので、その場はかなり明るかった。

 これならドラゴンも寄ってきやすいだろう。


「いいかみんな。落ち着いて行動するんだ。最初は俺が注意を引くから、構わずに湖に向かって走れ」


 俺の指示に、各々が頷く。

 俺はポイズンダガーを手に持ち、身構えている。


 すると、どこからか異様な音が響き渡った。

 一定のリズムで大きく風を切るような音。

 これは、翼の音だ。


「く、来るぞ!」


 落獣人の一人が叫ぶ。

 その時、月光を浴びた巨大な竜の影が、奥の方に見えた。

 デカいな。5メートルくらいはありそうだ。

 俺はポイズンダガーを握る力を強める。


 ドラゴンは一度近くの岩山に立ち止まっていた。

 逆光でシルエットしか見えないが、既になんかもう強そうだ。

 そして、ドラゴンの顔は明らかに俺たちの方を向いていた。

 

 瞬間、ドラゴンは再び飛行し、俺たち目がけて滑空してきた。


「今だ!湖の方へ走れ」


 俺の掛け声と共に、全員が湖の方へと走る。

 まずはドラゴンの気を引く。

 

 ドラゴンは案の定、その場に残った俺とラト目がけて滑空をかます。

 何とかそれを躱す。

 ドラゴンはその場に着陸し、半壊した家を倒壊させる。

 近くで見ると、やはり5メートル近くありそうなドラゴンで、全身が岩に覆われていてゴツゴツしていた。

 シルエットまでゴツゴツしてやがる。


「っしゃ!」


 気合いの入った声を上げ、まずは懐に入ってポイズンダガーを浴びせる。

 無論、弾かれるだけで、毒は通用しない。

 このドラゴン、巨体で防御力もあるが動きはとろい。

 だとしたら、この場で倒せるかもしれない。


「ラト!頼む!」

「は、はい!」


 ラトはラスソードを持って跳び上がる。

 人間には到底理解できないジャンプ力だ、滞空時間も長い。

 しかしラトの一撃もドラゴンの岩の体表に防がれ、ラトはゴツゴツの尻尾で吹き飛ばされる。


「ラト!」

「…も、問題ありません」


 何とか無事だった。

 俺は体表の隙間を探しながらポイズンタガーを振るう。

 少しでも傷が付けば勝てる。

 しかし、隙間はなかなか見つからない。


「グァァァァァァ!!」


 奇妙な野太い鳴き声を上げると、ドラゴンは尻尾であたりを一掃する。

 家も、馬車も、ゴーレムも粉々になり、地下へと続く階段が露わになる。

 それに乗じて俺も吹き飛ばされるが、何とか体勢を立て直す。


「ラト、魔法はいけそうか!」

「やってみます……」


 ラトは片手をドラゴンに向けて構える。


「…アイシャー!」


 ラトの唱えの後に、掌から太い氷柱が一本発射される。

 それは見事にドラゴンの首元に直撃、ドラゴンは叫び声をあげた。

 効いているのか?

 見た感じ無傷だが、魔法自体効果があるのかもしれない。


「アイシャ!アイシャ!アイシャ!」


 続けざまに撃ち、ドラゴンを怯ませる。

 しかしドラゴンは途中で翼を振るい、高く跳び上がった。


「くそっ!」


 これでは堂々巡りだ。

 ラトの魔力とやらももたない。

 

 俺はラトと共に湖の方へ走る。

 既に先に行った落獣人たちの姿は見えない。

 このまま山道を真っすぐ進み、落獣人達の無事を確認せねば…。


 遮るものが無い山道では、ドラゴンからこちらの姿は丸見えだった。

 だがそれはこちらも同じ。

 ドラゴンの動向が窺えれば、落獣人達も相応の対応はとれるはずだ。


 俺たちは走る。

 やはりドラゴンは重い体表のせいかスピードが遅い。

 俺たちが走るスピードと大して変わらない。




 暫く走り、湖に到着。

 既に落獣人達も湖の手前で待機していた。


「よし、安全な場所に隠れてくれ!」


 俺の指示で落獣人達はそれぞれ岩山の裏などに身をひそめる。

 俺とラトはそのまま湖の中へと体を沈めた。


「アユム殿、何を!?」

「いいから隠れてろ!」


 案の定、降り立ったドラゴンは何の躊躇もなく湖の中へと体を沈めてきた。

 凄まじい水しぶきが上がった。

 だが、これを待っていた。


「よし、いまだラト!」

「アイシャエス!」


 ラトがそう唱えながら手をかざす。

 しかし、何も起こらない。


「アイシャエス!!」


 再び唱えるが、何も起こらない。

 本来であれば、ドラゴンが湖に体を沈めた時に起こる水しぶきを、氷に変えて攻撃できる魔法を使うはずだった。

 しかし…失敗か。

 俺は状況を察する。


 ドラゴンはすぐに牙をむいた。

 巨大な腕を、俺とラト目がけて振り下ろした。

 俺はラトを覆うようにして水中に隠れる。

 凄まじい衝撃が湖全体へと響き渡り、ラトだけが湖の外へと放り出される。


「し、失敗だ!ラト!!他の奴らと一緒に地下室に戻れ!!」

「し、しかしアユム様はっ…!?」

「俺は大丈夫だ!」


 話の最中にも硬い腕が振り落とされる。

 全く、お話の最中に攻撃とは礼儀がなっていない。

 ってか、これ水中じゃなかったら死んでるよな…。

 水中に顔を沈めて分かったが、この湖は浅く、ドラゴンは底に足がついていた。

 湖と言うより池に近いということか。

 深ければそのまま沈んでくれたのになぁ…。


「アユム様を置いていくなど…」

「いいから早くしろ!」


 頼む早くしてくれ。

 水中で大声を上げるのは体力を消耗する。

 ラトはやりきれないような表情で立ち上がり、先陣を切って落獣人達と共に元来た道を戻る。

 ドラゴンもそれに気づき、振り向く。

 振り向きざまに尻尾が振るわれ、俺の眼前ギリギリを通り抜ける。


「ラト!攻撃が来るぞ!」


 ラトは立ち止まり振り向く。

 半獣人たちはそのままラトを抜いて走っていく。

 ラトはドラゴンの岩の腕攻撃を魔法で何とか弾き、逃げる。


「…アホドラちゃん、尻尾ががら空きだぜ」


 先ほどラトを吹き飛ばした時の一撃で、尻尾の体表が欠けていた。

 俺は間髪入れずに、欠けた体表から僅かに露出されたドラゴンの皮膚に、ポイズンダガーを刺す。


「グッ、ググギャアアアァァァ!!!」


 奇声を上げて暴れるドラゴン。

 尻尾は毒され、はじけ飛んだ。

 しかし、体全体を飛散させるには至らない。


「十分だぜ…」


 俺はドラゴンが怯んでいる隙に岸へ上がる。

 ドラゴンは尻尾を失ったのと同時に、背中部分の体表も一部失っていた。

 あそこにポイズンダガーをぶち込めば、次は勝てる。


「ほら…こっちだぜ、アホドラちゃん」


 ドラゴンは岸に上がった俺に気付き、自らの肩のあたりの岩を抉りとり、投擲してきた。

 凄まじいスピードで飛んでくる岩を何とか躱す。

 しかすすぐに二発目が飛んでくる。


「あっぶね!ドッヂボールじゃねえんだぞ!」


 悪いが俺には魔法もなけりゃ戦闘用のスキルもない。

 生憎俺のスキルは成果として初めて発揮されるものだからな。

 このアホドラちゃんを倒すまではスキルは発揮されねえ。


 俺は思い切ってドラゴンの懐まで入る。

 こいつは動きが鈍けりゃ図体もデカい。

 小回りは苦手なはずだ。


「オラ死ね!」


 しかし、ドラゴンは翼を広げて、再び飛び立とうとしている。


「逃がすか!」


 俺はドラゴンの足にしがみ付く。

 ドラゴンはそのまま宙へと翼を羽ばたかせる。

 こいつ、自分の体重のせいか、それほど高くまでは飛べないようだ。

 俺はそのままドラゴンの抉れた尻尾の部分までよじ登る。


 何度かふるい落とされそうになるが、こいつは体がゴツゴツしているから掴みやすいわ、足は掛けやすいわで、落ちることは無い。

 そして、先ほどの尻尾の飛散の拍子に体表が砕けた背中へと到達。


「じゃあな、アホドラ!」


 俺はポイズンダガーを刺した。

 瞬間、ドラゴンは悲鳴を上げる間もなく、弾け飛んだ。

 そして煙と化す。

 しかし、ドラゴンの実態がなくなったことで、俺はそのまま直下に落下。


「やべ」


 下を見るが、微妙なところ。

 岸に落ちるか、湖に落ちるか…。

 嗚呼、ギリギリ岸かなこりゃ。

 死んだわ。


「はっ!」


 女の声と共に、岸に落下する寸前だった俺の体は湖の方へと蹴飛ばされた。

 俺はそのまま湖へと落下した。

 誰かが落ちる寸前に俺の体を湖の方へと押してくれたおかげで、何とか生きていた。

 しかしどうも、拍子にポイズンダガーを落としてしまったようだ。


「も、申し訳ありませんアユム様!!」


 水面から顔を上げた時、岸にいるラトの姿を見て唖然とした。

 

「お前、なんで…」

「落獣人達は地下室に既に逃げました」


 はやっ。

 やっぱ獣人だの亜人だのは非常識だよな…良い意味で。


 俺は何やら気が抜け、月光の下で水面に身を任せた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ