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平均アイテムドロップ率85%の異世界  作者: 888回目の良い香り
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理性、保つ

 俺とラトは初めて二人で街を出た。

 ラトの戦闘能力をはかるというのが主な理由でだ。

 

 手始めに草原にいるビットゥを倒すように指示を出してみる。 

 いきなりの森は流石に可愛そうだからな。


「えっと…あのウサギさんを斬ればいいのですね?」

「ウサギさんとか言ってると情が沸いてくるから、ビットゥと呼べ」

「はい、すいません…」


 そんなマジに凹むな。


 

 ラトの戦闘能力には、やはり目を見張るものがあった。

 俺も戦闘初心者だから偉そうなことは言えないが、素人目に見てもそのセンスの良さは明らかだった。

 初めて武器を握ったとは思えないほど堂々とした剣捌きだ。

 なんか、ビットゥが気の毒になってくる。


「ラト、やっぱお前は強かったな」

「い、いえまだまだでございます…」

「俺よりは強いぜたぶん。まあ俺にはその分武器のアドバンテージがあるんだけどな」


 俺はそう言いつつ、腰からポイズンダガーを取り出す。

 初めて見るポイズンダガーの刀身に、ラトは少し狼狽えていた。


「…なんだか、不気味な色ですね……あ、いや!決してアユム様の武器を貶したわけではなくて…」

「分かってるよ。迂闊に触るとマジで死ぬから気を付けろよ?」


 ちょっと言い方がキツいようにも思えるが、事実なのだから仕方がない。

 そのまま俺たちは森に入った。


 

 ゴブリンや蜘蛛に対しても、ラトの敵ではなかった。

 一体一体着実に、一撃で仕留めている。

 ただやはり戦い慣れしていないのか、足元がおぼつかなくて体勢を崩しそうにはなっている。

 しかし持ち前の剣捌きでカバーしていると言った感じだ。


 そして俺は気付いてしまったのだが…。

 ラトが俺の奴隷であっても、アイテムドロップ率85%の力はラトには関係がない様だ。

 当然と言えば当然だが、ちょっと期待していた自分がいる。

 血の誓約とか交わせば譲渡されるのかもしれないが、そんなことをやるつもりはない。

 俺とラトの関係はもっとこう、フランクにいきたい。


「ということでラト。敬語を禁止にしないか?」

「え、いや…それは無理でございます。私は奴隷なので…主にため口など…」

「んー、じゃあその、ございますとか、何とかでありますとか、そういうのはやめよう」

「…分かりました」


 従来のラトなら承知しましたとか言うところだが、やはりこっちの方がしっくりくる。

 あまり堅苦しいのは好きじゃない。

 それにまあ、ラトもまだ若干緊張しているのかもしれない。



 そうして俺たちは、未踏の地へと足を踏み入れていた。

 それは森を抜けた先にある山道だった。

 若干勾配になっている山道は、木々がなく、広い空が広がっていた。


「ここからは俺も初めてだから、気を付けろよ」

「は、はい…」


 ラトは強くラスソードを握りしめた。

 俺もポイズンダガーをしっかり握りながら歩を進める。


 早速、初めての魔物にお出ましだ。

 全身岩で覆われたアルマジロみたいな魔物だ。

 アルマジロは俺を見るや否や、何の躊躇もなく転がってきた。


「ラトは離れろ!ここは俺が様子を見る」

「はい!」


 ラトが下がった後、俺は身構え、アルマジロの突進を躱す。

 しかし、アルマジロはすぐにブレーキをかけ、Uターンして再度突進してきた。

 躱すくらいなら最初からポイズンダガーを食らわせるまでだ。


 しかし、ポイズンダガーの刃はアルマジロの体表の岩を通らず、弾かれてしまう。

 不意に、ポイズンダガーの刃に目をやる。


「アユム様!またきます!」


 ラトの声でアルマジロに目を移した時には、俺の腹にアルマジロが突進していた。 

 俺は勢いよく後方に吹き飛ばされる。

 まともにダメージを受けたのは初めてかもしれない。

 だが、さほど痛くはない。

 あのおかまコーディネーターの腕は本物だったというわけだ。


 それにしても、ポイズンダガーが通用しないというのは驚きだ。

 今のでなんとなくわかったが、ポイズンダガーは相手に傷をつけることが出来て初めて効果があるようだな。

 つまり、岩の体表に弾かれた程度では無意味と言うこと…。

 さて、どうするか。


「アユム様、腹です!腹を狙ってください!」


 ラトが大きな声を上げて俺に指示を出す。

 腹か、そんな初歩的なことにも気付けないとは俺も終わってんな。

 いや、ここはラトの判断を褒めておくべきか。

 流石亜人、その辺のセンスは抜群だ。


 アルマジロの再びの突進を俺は躱す。

 アルマジロはUターンする直前に一瞬腹を全面こちらに向けて助走をつける。

 その時を狙う。


 俺はアルマジロが腹をこちらに向けたのを見逃さず、ポイズンダガーを投げてやった。

 見事に傷が付き、アルマジロは毒されて煙と化した。

 その場には1500ゴールドと、岩の体表がドロップされていた。


「やりましたね、アユム様!」

「おう、ラトのおかげだ。ありがとな」

「い、いえ私は何も…」

「次はお前が戦ってみてくれ」

「はい!」


 ラトは気合いが入っているようだ。



 結論から言うと、アルマジロはラトの敵ではなかった。

 最初こそ多少の苦戦はあったものの、ラトはアルマジロの岩の体表の僅かな隙間を見切って、そこにラスソードを刺し込んでいた。

 刀身が細く長いラスソードは、アルマジロには相性抜群だ。

 そんなこんなで、森を抜けてから30分ほどで早くも1万ゴールドを超えた。


「いいぞラト、なかなかの稼ぎだ」

「はい!」


 一つ懸念されるのは、アイテムのドロップだな。

 アルマジロ程度では大したものは落とさないっぽいが、強い魔物に関してはドロップアイテムが気になる。

 となると、とどめは俺が刺した方がいいってことになる。

 良いとこ取りみたいに聞こえるが、これは致し方ない。


「ラト、話がある」


 

 俺はラトに、アイテムドロップ率85%スキルのことをバラした。

 もちろん異世界から来たことは伏せたままだ。

 疑い深い人間であれば、スキルを手にした経緯などを問い詰めてきそうなものだが、ラトに限ってそんなことはしないだろう。


「それは…すごいスキルですね」

「そう。でも戦闘能力はお前の方が上だ。だから俺はとどめを刺すことになる」

「構いません。アユム様の為になるのなら、命をかける覚悟があります」


 そいつは有り難いが、何も命をかけろとは言っていない。

 ヤバくなったら逃げてもらって構わない。


「そう堅くなるなよ」

「いえ…堅くなどなっていません。…私はアユム様に救われました。その恩返しがしたいだけです」

「俺はただお前を買っただけだぞ。金で」

「それが私にとっての救いです。あの檻の中から私を見つけ出し、外の世界へと誘ってくれたのは……アユム様ではありませんか」


 またしても、ラトの唇ギュッが炸裂。

 俺はポイズンダガーにでも切られたのかってくらい胸が破裂しそうだった。

 可愛いな、ほんとに。


「取り敢えず、今日はもう街に戻ろうぜ」

「……あ、あの、アユム様…」

「ん?」


 ラトは頬を染めて俯いた。

 頬の赤色はより濃さを増していく。


「その…今日はその…」

「…ん?」

「お、同じベッドで……一緒に…」


 俺は自らの覚醒を抑えた。

 元来の俺であればここでラトを押し倒してしまうところだったが、生憎今の俺は少し違う。

 抑えろ、抑えるんだ如月歩!


「い、いいぜ。寝よう」

「……すいません…変なお願いして…」


 ラトは頭から生えてる耳を丸め、尻尾をぎゅっと握りしめた。

 可愛すぎて死にそうだったが、何とか抑えた。



 結局その日の夜は、理性を保つことが出来た。

 お互いになんか恥ずかしくて多少距離があったしな。

 ただ、夜が明けるまでは、俺のナニはギンギラギンのままだったとさ。


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