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平均アイテムドロップ率85%の異世界  作者: 888回目の良い香り
10/15

ラト、外出

 翌朝、目を覚ますと、ベッドで横になっているラトアーネの姿があった。

 まだぐっすりと眠っているようだ。

 起こすのも忍びないと思い、俺は一人支度をして森に入った。

 朝の運動も兼ねて魔物を狩る。

 金になるかならないかは関係なく、実は俺はこの魔物狩りが楽しくて仕方がない。

 ポイズンダガーが強すぎるってのも理由の一つだ。


 途中で奇跡的にスライムに遭遇した。

 倒して得たスライムボールをイーデムの所へ持って行って取引するように頼んだ。

 流石に二度目は、二万ゴールドしか受け取れなかったが、まあ文句など無い。


 2時間ほど森の中で金稼ぎをしてマイホームに戻ると、ラトアーネが起きていた。


「おはようラトアーネ」

「お、おはようございますアユム様」

「眠そうだな」

「申し訳ありません…奴隷の分際でアユム様より長く眠ってしまっていて…」

「いや良いよ別に」


 ふかふかのベッドで寝るのも久しぶりだったのだろうしな。

 

 俺には一つ、考えがあった。

 これからラトアーネと共にこの世界で生きていくわけだ。

 その際に、アイテムの調達や依頼の達成、金稼ぎなどの理由から、魔物との戦闘は恐らく避けて通れないだろう。

 だとすると人手は多いに越したことは無い。

 

「ラト、お前戦闘経験はあるか?」

「ほ、ほとんどありません……というかアユム様、その呼び方は…」

「ラトアーネって長いから、略してみた。嫌いか?」

「いえ、うれしいです」


 ラトは頬を僅かに染めていた。

 可愛いが、もちろん”まだ”手は出さない。

 俺がラトに手を出すのは、もっと時間が経ってからだ。


「今日はすることが山積みだ、お前もついてきてくれ」

「もちろんでございます!」


 ございます…か。



 ラトは日差しに眩しそうに目を細めていた。

 何やら落ち着かない様子でソワソワしている。


「どうした?」

「いえ…本当に久しぶりの外なので…なんだか落ち着かなくて…すいません」

「まあしょうがないよね」


 そもそもラトはなぜ奴隷になったのか…そんな話もいずれ聞けると良いな。



 俺たちはまず、仕立て屋に向かった。

 ギルドのおっさん(名前忘れた)の話によると、俺が死ぬほど手に入れた蜘蛛の糸は、良い装備品の素材になるらしい。

 どうせ有り余っているのだから、良い服を作ってもらおうという魂胆だ。

 ラトの服もみすぼらし過ぎるからな。

 

 ちなみにだが、仕立て屋と防具屋は違うらしい。

 仕立て屋はお洒落に重点を置いた所謂”アウター”専門店って感じで、防具屋は防御力に重点を置いた”インナー”専門店って感じなんだと。




「ん~、醜い!実に醜いわっ!お二方ッ!」


 仕立て屋に入ると、やばい奴が出迎えてきた。

 俺よりはるかに身長が高く、ムキムキな奴。

 口紅は真っ赤で、髪も長い。

 これはあれだ、マッチョなおかまだ。

 加えて、ファッションにうるさいタイプ。

 天才コーディ―ネーター感は溢れ出ているから良しとしよう。


「えっと…巨大蜘蛛の糸があるからそれで服を作ってほしいんだけど…」

「いいわっ!でも!コーディーネートはあたしにお任せて!」

「お任せます…」

 

 俺はおかまコーディネーターに蜘蛛の糸を渡した。

 その数58個。

 おかまコーディ―ネーターは若干狼狽えていたが、プロ根性から成る営業スマイルでごまかした。


「まずは男児!そこの男児の服よっ!」

「男児って言うな、俺はアユムだ」

「アユミンの服のデザインを決めますわっ!」


 アユミンって、なんか女のあだ名みたいだな。

 まあ好きに言わせておこう。

 俺が相手にするには、こいつはクセが強すぎる。

 ラトも苦笑いが止まらないと言った感じだった。



 暫くして、おかまコーディネーターが服を持ってきた。


「着る!着るべくして着るのよッ!」


 格言っぽい一言を上げながら、おかまコーディネーターは強引に俺に服を着せた。

 それは、お洒落なベストとマントだった。

 黒を基調とした如何にも異世界っぽい装飾だ。

 触り心地もよく、軽くて全然気にならない。

 

「ん、蜘蛛の糸って白じゃなかった?」

「蜘蛛の糸は加工して色を変えられるのよッ!これはコーディネートにおいて基本中の基本よッ!」

「はい、すいません…」


 なんかもう勢いが別格だ。


「手触りもいいな」

「蜘蛛の糸の特徴よッ!防御力もあって、尚且つお洒落!お洒落は美しさ!美しさとはすなわち―――――」


 だいぶうるさいな。




「続いてそこの女児!」

「女児っていうな、こいつはラトアーネだ」

「ラトッチ!」


 もう知らない。




 ラトの服は、俺の服なんかよりも全然出来が良いように見えた。

 白と水色で出来た優しい服だ。

 空色の髪のラトにはピッタリの代物だ。


「こっちもアユミンと素材はほぼ一緒よッ!」

「こんな素敵な服……いいんですか、アユム様」

「いいのよッ!あなたは美しいからねッ!」

「お前はアユム様じゃねえだろ」


 俺はおかまコーディネーターに一応ツッコミを入れた。


「いいんだ、どうせなら綺麗な方がいいだろ」

「…ありがとうございます」


 ラトは嬉し恥ずかしそうに唇をギュッとしめた。

 ああ、キスしたい。


 

 全部占めて1万ゴールドを支払った。

 思っていたよりも全然安かったから正直驚いている。

 おかまコーディネーターの御厚意あってのことかもしれないが、真意は謎だ。




 その後俺たちは、武器屋に行った。

 武器屋のおっさん、バドロスが作業をしていた。


「アユムか。っと、そっちの可愛い姉ちゃんは?」

「ラト、俺の仲間だ」

「初めまして…その…アユム様の奴隷のラトアーヌと申します」

「ははっ!アユム、お前奴隷にお洒落させるたぁなかなか心が広いじゃねえか」


 こいつ普通に言ったな。

 まあ別にいい。


「それより武器を買いたい」

「そっちの姉ちゃんのかい?」

「そうだ。種類は…そうだな…」


 俺はラトを見る。

 ラトは店に並んでいる武器に釘付けだった。

 正直、適性が一切分からない以上、使ってみないことには何とも言えないのが現実である。

 俺が短剣だから、それ以外となるか。


「ラトは何が良いんだ?」

「えっと…私は武器を使ったことがないので、何とも…」

「なんかないの?どれが使ってみたいとかでもいいぞ」


 出来るだけラトが使いたいものの方が上達は早いだろう。

 好きこそものの上手なれ的な?

 ギルドのおっさんから聞いたことがあるが、ラトのような亜人は人間に比べると身体能力も高く、戦闘センスも抜群らしい。

 正直どれでもいけるとは思う。


「じゃあ、これで…」


 ラトが指差したのは、ラスソードと呼ばれる剣だった。

 俺が最初に使っていたショートソードよりも長く、細い。


「バドロス、これはどんな剣?」

「女専用の剣だな。軽くて扱いやすいのが特徴だ。魔法との組み合わせも抜群にいいぞ」

「魔法との組み合わせ?」

「ああ。魔法を習得すれば組み合わせて使うことも出来るし、常魔鉄タイプの鉱石を練りこめば色々な付与効果が得られる、所謂マジックタイプの剣だ」


 要は、魔法剣ってところだな。


「じゃあこれで」

「2万ゴールドだ」


 俺は2万ゴールドを支払う。

 懲りずに魔物を討伐していたおかげで、足りてよかった。

 ただこれで所持金は1万ゴールドを切ってしまった。

 また集める必要がありそうだ。


「よし、じゃあラトは今日からこれで頑張れよ」

「ありがとうございます。強くなれるように…一生懸命頑張ります!」


 初めて聞く、ラトの気合いに入った声。

 綺麗なラスソードの刀身は、ラトによく似合っていた。


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