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魔女が落とした宝物  作者: 内藤ナイト
9/12

二つ目の愛⑤

 梅雨明けが待ち遠しいと感じた6月半ば研究中にこんな出来事が起きた。

『中川さん、もし私が強引に酔った君を押し倒したらどうする?』唐突に何の話かと思ったが、『拒否的な行動を取ると思います。』と即答した。『それは何故?』先生も再び返す。『先生と私の間に愛が成り立っていないからです。』私の答えを聞くと先生は、『君は実に真面目に育ってきたんだねぇ。いいかい?例え心が繋がり合わなくても肉体が重なってしまうと人は催眠にかかるんだ。良くあるパターンがサークルの飲み会での所謂お持ち帰りだね。酔った勢いが故の過ち。教師としては否定しなければいけないが私個人としては否定しない。好きになった人とどんな方法であれ繋がり合いたい。それが心よりも先に肉体であったとしても。これも一つの愛の形だと私は思う。ちなみに中川さんはまだ未成年だからお酒はまだダメだよ?』と少し茶目っ気混じりな言い方だった。

 高校時代の私は新しくできた弟が可哀想だったと言う姉弟愛から肉体関係に至ったがこれではただ肉体的快楽を求める獣と同じではないかと考えた。

 先生の話は続く、『さっき話した通り肉体関係が先にありそこで快楽を感じてしまうと、悪くないなって心が認識してしまうんだよ。だって欲求の一つを満たしてくれるし相手は自分のことを望んでくれてるんだから悪い気はしないよね?』

 強ち否定はできないなと思った。

『それでもそこに愛は生じるんだよ。君は多分否定的になるかもしれないけど。』

 これに対し私は『でも、私は心から繋がりたいです。それが愛だと私は思います』と返した。

 先生は首を2回縦に振り『君のその価値観は非常に美徳的だ。大事にしなさい。』と言ってくれた。自分が考えていた形のない愛についての見解が認められたのが少し嬉しかった。

 6月も残りわずかとなった週末。研究は基本的に放課後行われるため遅くなることが多かった。それでも先生との会話はとても楽しいもので時間も忘れて議論し合った。天気予報ニュースで今日の曇り空を抜けると明日からは梅雨明けになると言っていた。

 講義を受け終わると先生の所に行き、いつものように研究テーマについて話合っていた。時計を見ると20:16とデジタル時計が示していた。一日中曇り空だったためか一層外が暗く感じた。

 大体これくらいの時間になると先生が家まで送ってくれる。徒歩では20分の距離でもバイクなら5分程度でアパートに着くのだ。

 帰り自宅をしていると先生がトイレから研究室へと帰ってきた。『今日はこれくらいにして帰ろうか?駐輪所で待ってて。すぐ終わる用事を済ませて向かうから』そう言うとお互い研究室の外に出て私は駐輪所へと向かった。

 10分も経たないうちに先生がやって来た。バイクのエンジンをかけつつ私にヘルメットを手渡す。バイクに跨がり先生の体を抱くようにしがみつく。バイクは文字通り風を切りあっという間に私達をアパートへと運んでくれた。アパートの周りには結構な数の街灯が立っているのでこの時間でも明るく貼り紙の文字までくっきり視認できる。

 ヘルメットを外しいつものようにお礼を言おうとした瞬間顔色の悪い先生が私の視界へと飛び込んだ。

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