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魔女が落とした宝物  作者: 内藤ナイト
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最初の愛④

 お互いが見えなくなるまで近づき今度はベットに押し倒された。再び彼の顔を視認する。また悲しそうな顔をしていた。

 『どうしてそんな顔をするの?』私が問うと彼は何も言わないまま唇を重ねてきた。私は自分の体温が上がったのを認識し唇を重ねる事がここまで心地よいものだとは思ってもみなかった。ただの粘膜同士の接触。そう思っていたが実際今体験したこの行為はその考えを大きく覆した。

 今まで他人に触れることも、触れられることも避けてきた私にとっては刺激が強くそう感じているだけかもしれないが今まで感じたことのない感覚が私を襲った。

 恐怖は無かったが初めてということもあり戸惑いの方が大きかった。敦は私の服に手をかけゆっくりと脱がせていく。抵抗することもできたが今自分が置かれている状況をうまく整理できておらず処理が追いついていない為か若しくは私自身がこの状況を受け入れているのか何一つ抵抗することはなかった。

 互いに生まれたままの姿となり今度は互いの身を重ねた。男性の方が女性よりも体温が高く、筋肉も多いと聞くが正にその通りだった。敦の体は犬を抱いた時の様に温かかった。ただ犬と違うのは筋肉の為だろう。彼はサッカー部ということもあり抱かれている腕、触れている胸や腹から筋肉の収縮を感じる。

 ここでようやく敦の口から言葉がでてきた。

『ごめん、色々』

 何が色々なのか?強引に迫ったこと?先にシャワーを浴びたこと?女の子の前で泣いてしまったこと?はたまたもっと別の理由か。

『別に謝ることじゃない。嫌ならすぐに否定してた。』

どうやら私もこの状況を望んで受け入れたらしい。

 ようやく頭の中が整理され体がそれに適応してきた。

 『色々あったんだね』そういうとそれ以降互いに言葉は交わさずただ互いを求めあった。

 お互いが初めてだったため上手くいったかどうかは当人にも分からなかったが、想定したよりも痛みや恐怖は少なかった。

 全てが終わった後私は言った『これからは仲良しだね』

彼も私を見て軽く微笑んだ。

 彼とはその後私が卒業する3月までの間付き合った。たくさん遊んで今までにない感情を教えてくれた。時には喧嘩もしたけどそれはそれで一人を好む私には新鮮だった。

 県外の大学が決まり家を出ていくことが決まった時敦から別れようと言われた。私は首を縦に振り最後に唇を重ねた。

 卒業式当日初めて身を重ねた時のことをふと思い出した。中川敦は母と死別しており誰にもこの悲しみを相談できず表面は繕えても中身は一人ボッチのままだった。そこに丁度私が優しく接したのが母と重なったらしい。

 私が交際を受け入れた一番の理由は『ほっとけなかった』から。再婚する前に私は父親から暴力を振るわれていた。母は仕事で帰りが遅く私の出すサインには中々気づいてはくれなかった。中学校に上がり父の行動に気づいた母は離婚を提案し、親権を自分に移した。母は私をもっと早く救いたかったと後悔していたがそれからは片親として最大限の愛情を注いで貰った。

 置かれた状況は違えど昔の私に似ていたからあのとき私は彼にあんなことをしたのだと思う。そんなことを考えていると私のクラスの子が名前を呼ばれ壇上で卒業証書を貰っていた。長い間思い出に耽っていたらしく気づくと次は私の番だった。

『卒業証書授与されるもの、中川美香』大きな声を出すのが苦手な私はいつも通りのトーンで返事をして壇上へと向かった。

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