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軍刀

400ユニークアクセスならびに1200PVアクセスを突破させて頂きました。これからも宜しくお願い致します。

出発したあたし達は2時間程進んで鬱蒼と木々の立ち並ぶ森を抜け、それから更に暫く進んだ後に大きな河に面した街へと到着した。

街はかなり人々によって賑わっていて、あたし達は城門を警備する兵士に通行料(あたしは金貨しかもってない為、カミラに立て替えて貰った)を払った後に人々で賑わう街中へと入って行った。

「……あ、あの、カミラ、そ、そろそろ、お、降ろしてもらっても、いい、かな?」

ヴィルヴェルヴィントの背にカミラと共に乗っているあたしの姿は行き交う人々の好奇の視線の的となり、あたしは集まる視線から逃れる為にカミラに声をかけたが、カミラは逆にあたしの背中にセクシー衣装に包まれた引き締まった肢体をより一層密着させながら囁きかけてきた。

「どうしてだ裕香?いいじゃないか、皆に、見せつけてやれば」

「……か、カミラ、さっきの仕返し、してるでしょ」

カミラの平然とした様子の言葉を受けたあたしは背中にまともにあたるカミラの豊かな膨らみの感触に頬を火照らせながら言葉を返し、カミラは少し意地悪な笑みを浮かべながらあたしの耳元に更に囁きかけた。

「……やられっぱなしは性に合わないんでね、それに悪戯好きな主に似て部下も悪戯好きなんだよ」

カミラは楽しげに笑いながらあたしに告げ、それを受けたあたしは頬を火照らせながらも両手をカミラの両太股へと重ねて引き締まった太股を撫でて反撃を試みた。

「……ンッ……フッ……フフフ、やはり悪戯好きだな……ンッ……我が主は」

「……フフ、主としては悪戯好きな部下にはこうして反撃しないといけないでしょ」

カミラの押し殺した甘い吐息まじりの声を受けたあたしはそう言いながらカミラの引き締まった太股をゆっくりと撫で続け、カミラは微かに身体を震わせてながら囁きを続けた。

「……ンッ……フフフ、そんな事を言ってるが今の裕香は……ンンッ……耳まで真っ赤になってるぞ」

「……ッ、し、しょうがないでしょ、こ、こんな状況なんだし」

カミラの更なる反撃を受けたあたしは図星をつかれて頬を火照らせながら抗議し、あたしの抗議の声を受けたカミラは優しく微笑みながら言葉を重ねて来た。

「そろそろ、店につくぞ、お疲れ様、裕香」

「うん、ありがとね、カミラ」

カミラの労いの意が籠った優しい言葉を受けたあたしはカミラの太股から手を離しながら言葉を返し、ヴィルヴェルヴィントの傍らを進みながらその様子を見ていたスコルが羨ましそうな表情であたしとカミラを見上げながら口を開いた。

「いいなあ、裕香とカミラは、ずっーと仲良くしてて、裕香、帰りはあたしが抱っこして帰ってあげるから楽しみにしててね」

「えっ……う、うん、楽しみにしてるね」

スコルの明るい声を受けたあたしがその明るさに気圧されて若干乾いた声で応じているとヴィルヴェルヴィントが駒を止め、カミラがサリッサをスコルに渡しながらあたしに声をかけて来た。

「着いたぞ裕香」

カミラの言葉を受けたあたしが周囲を見渡すと近くに道具屋とおぼしき店があり、あたしがその店を見詰めているとスコルにサリッサを渡したカミラがヴィルヴェルヴィントの背から降り、降り立ったカミラは笑顔であたしを見上げながら声をかけてきた。

「降りてくれ、裕香」

カミラにそう言われたあたしは頷きながら見よう見まねでヴィルヴェルヴィントの鞍から降り、カミラは地面に降りるあたしの身体を支えてくれた。

あたしが地面に降り立つとスコルが毛皮の入った包みを手に店へと入っていき、あたしとカミラもそれに続いて昼が近付き眩さを増した陽射しの下を店内へと入って行った。

店内には軍刀サーベルやマスケット銃、銃剣、短銃等の武器や外套、軍帽等の軍装品が並べられていて店の奥ではスコルが店主とおぼしき恰幅の良い男性の前に毛皮の入った包みを広げて商談に入っていて、それを目にしたあたしは傍らのカミラに視線を向けて問いかけた。

「スコルだけで大丈夫なの?」

「ああ、この店とは何度か取り引きの経験があるし、それにスコルは意外に交渉上手だからな」

カミラの答えを聞いたあたしが様子を窺ってみると店主らしき男性は商談しつつも身を乗り出しているスコルのはち切れんばかりに瑞々しい肢体に気を取られがちであり、あたしは納得して頷いた後に手近な所にあった軍刀を手に取ってその刀身を鞘から覗かせてみた。

軍刀の刀身はしっとりとした黒曜の輝きを放ち、それを目にしたカミラは興味深げな面持ちになりながら口を開いた。

「黒刃か、粗製乱造の品とは少し趣が異なるな、ちょっと見せて貰っていいか?」

「あっ、うん、どうぞ」

カミラに声をかけられたあたしは返事をしながらカミラに軍刀を手渡し、カミラはそれを受け取ると、軍刀を鞘から出して黒曜の輝きを放つ軍刀をじっくりと確認した後にそれを鞘へと戻しながら言葉を続けた。

「やはり、中々の出来栄えの軍刀だ、通常の軍刀は20フランティーヌくらいが相場だが、こいつは100フランティーヌくらいはするな」

カミラは「キュイラシェ」内で使われていた通貨単位で軍刀の値段を告げいながら軍刀をあたしに返し、あたしはそれを受け取った後に懐から金貨を入れた袋を取り出しながらカミラに質問した。

「因みにこれで買えたりするかな?」

あたしはそう言うとカミラの手に6枚の金貨を渡し、カミラは金貨を確認した後に頷きながら言葉を続けた。

「これは30フランティーヌ金貨だな、6枚あるから全部で180フランティーヌになる、買えはするが大丈夫なのか、決して安い買い物では無いぞ?」

金貨を調べたカミラは少し心配そうな顔であたしに問いかけ、あたしは頷くと軍刀を掲げながら言葉を続けた。

「あたしにこれは使いこなせない、それは分かってる、だけどね、こんなあたしにカミラやスコルは仕えてくれている、だったらせめてそれに相応しい物を持っていなければならない、軍刀は指揮官の証でもあるの、だから生半可な物を持つ訳にはいかないの、そんな物を持ってしまったらあたしだけじゃ無く、カミラやスコルまで軽く見られてしまうから」

あたしはカミラのトパーズ色の瞳を真っ直ぐに見詰めながらあたしの思いを告げ、無言でそれを聞いていたカミラはあたしが話を終えると仄かに頬を赤らめさせて微笑みながら口を開いた。

「裕香は優しいな、裕香の言葉は優しくて、真っ直ぐに私に届く、お前を主として本当に良かったよ、スコルもこれを聞いたらきっと喜んでくれるよ」

カミラの言葉と嬉しそうな微笑みはあたしの頬を火照らせ、あたしはそれを感じながら頷いた後に店主の所へと向かった。

あたしが商談(とスコルの肢体観賞)を終えた店主に軍刀を購入する旨を伝えると店主は150フランティーヌを請求してきたがそれを聞いたカミラとスコルは身を乗り出さんばかりの勢いで値切りを開始、店主はその勢いと迫るカミラとスコルのセクシー衣装に包まれた引き締まった肢体に押され、便乗してあたしも身を乗り出して値切りを試みてみたら値段は95フランティーヌにまで下がってしまった。一瞬申し訳無い気もしたが店主の話の端々から察するに二束三文で買い叩いたみたいだったので暑いふりをして軍服の上着のボタンを幾つか外し、気付かない風を装って胸元をチラ見せしながら更に値切りをして85フランティーヌにまで値下げさせ、お釣りの5フランティーヌは通行料を立て替えてくれたカミラに返した。

ちなみに店を出た後にカミラからあたしの話した事を聞かされたスコルは大喜びであたしに抱き着き、更にカミラにまで抱き着かれたあたしは周囲の好奇の視線を一身に浴びる事になってしまった。


軍刀、それは武器であると同時に指揮官の象徴、だからこそあたしは扱いに長けていなくとも良い物を手にする。

それは何の取り柄もないあたしに仕えてくれた凛々しくて素敵な二人の為、大切な二人を決して軽く見させない為……


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