槍騎兵(ランシェ)
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朝の訪れとを感じて重たい目蓋を開いたあたしの視界に最初に飛び込んで来たのはあたしの左手を握ったまま安らかな寝息をたてているスコルの可愛らしい寝顔とその寝息に合わせて微かに震えるはち切れんばかりに瑞々しい肢体であり、寝惚け眼のままR―18ゲームでもなかなか見る事が出来ないであろう光景を見詰めるあたしは改めて自分が置かれた状況が夢では無い事を確認した。
あたしが視線をカミラが寝ていた筈の所に向けてみると案の定とでも言うべきか、そこにカミラの姿は存在しておらず、あたしは自分の右手を軽く握ってあたしの手を握り締めてくれていたカミラの手の感触を噛み締めた後に再び視線を安らかな寝息をたてているスコルへと向け、頬が緩むのを感じながらその可愛らしい寝顔を見詰めた。
あたしがスコルの寝顔を見詰めていると狼の耳がピクンッと小さく震え、閉じられていた目蓋がゆっくりと開いて寝起きでぼんやりとした鳶色の瞳があたしを捉えた。
「フニュ……裕香」
「フフフ、おはよう、スコル」
スコルは寝惚け眼であたしを見ながら舌足らずな声であたしの名を呼び、あたしは頬を緩めてスコルに呼び掛けつつスコルの頭を優しく撫でた。
「……えへへ、おはよう、裕香」
あたしに頭を撫でられたスコルはあどけない笑みと共に嬉しそうにあたしに挨拶し、あたしは暫く頬を緩めさせながらスコルの頭を撫でた後にぼんやりとした鳶色の瞳を見詰めながら言葉を続けた。
「……そろそろ、起きよっか、スコル?」
「……うん、分かった」
あたしの言葉を受けたスコルは頭を撫でるあたしの手の動きに気持ち良さそうに頬を緩めながら応じるとゆっくりと身体を起こし、あたしはそれを確認するとスコルと同じ様にゆっくりとと身体を起こした。
身体を起こしたあたしはベッドに腰かけるとあくびをしながら大きく身体を伸ばし、あくびをしているあたしの耳にカミラの穏やかな声が届いた。
「おはよう、裕香、スコル、二人とも良く寝ていたぞ」
あたしが声のした方に視線を向けるとカミラは竈でシチューの残りを温めていて、あたしがセクシー衣装での料理と言う朝イチで見るにしては些か(と言うより明らかに)インパクトがある光景を眺めているとスコルが大きなあくびをした後にカミラに向けて口を開いた。
「おはよ〜カミラ」
「おはよう、スコル、二人ともそろそろシチューが温まるぞ、朝食にするとしよう」
カミラはスコルの挨拶に応じながら寝惚け眼のあたし達に声をかけ、あたしとスコルはあくびをしながら立ち上がった。
あたしは着替えをした後にスコルと共にテーブルへと移動し、カミラの指示に従って朝食の準備を整えた後に三人で朝食を食べ始めた。
あたし達はシチューにビスケットと言う朝食を食べ、その最中にカミラがスコルに昨夜のあたしとの話の事を伝えてスコルに意見を求めた。
「カミラがそう言うんなら間違い無いね、それにあたしも裕香の事信頼してるし、あたしもカミラと一緒に裕香に仕えるよ」
意見を求められたスコルは笑顔でそう言った後にシチューをほおばり、あたしとカミラはその微笑ましい姿に笑顔を交わし合った。
それからあたし達はゆったりと朝食を摂り、皿を洗った後に三人でテーブルを囲んで今後の方針を話し合う事となった。
「裕香、取りあえず近くにある街に行ってみるか?そろそろ、採取した毛皮の販売と物資の買い込みに行こうかと考えていた所だったんだ、顔見知りの傭兵も何人か居る筈だし、行ってみて損は無いと思うぞ」
「そうだね、それじゃ同行させて貰うね」
特に方策がある訳でも無かったあたしはカミラの提案を即座に受け入れ、あたしの答えを聞いたカミラは頷きながら立ち上がるとスコルを見ながら言葉を続けた。
「そうと決まれば早速街に向かうとしよう、スコルは毛皮を用意してくれ」
「あたしも手伝わせて、カミラ、あたしだけ見てる訳にはいかないよ」
カミラの言葉を聞いていたあたしは立ち上がりながらカミラに声をかけ、それを受けたカミラは頷きながらスコルに話しかけた。
「スコル、裕香と一緒に毛皮を用意してくれ、私は少し準備をしている」
「うん、分かった、行こう、裕香」
スコルはカミラの言葉に頷きながら立ち上がりると笑顔であたしに声をかけ、あたしが笑顔と共に頷くと嬉しそうに尻尾を大きく振りつつあたしを促して小屋の外へと歩み出た。
小屋の外に出たあたしとスコルは小屋に据付けられている収納棚から毛皮(黒狼もあった)を20枚程取り出してそれを布で包み、スコルはそれを軽々と抱えながらあたしに声をかけて来た。
「それじゃあ、カミラが出てくるのを彼処で待とうよ、裕香」
スコルはそう言いながら昨夜のあたしが湯浴みをした木を指差し、あたしは頷いた後にスコルと一緒にその木の根元へと移動して並んで腰を降ろした。
あたしとスコルがのんびりと言葉を交わしているとカミラが小屋の出入口から姿を現し、カミラはあたし達に笑いかけながら歩み寄って来た。
カミラは右手に3メートル程の長さで両端部に刃を持つ槍を手にしていて、あたしはそれを見詰めながらその槍の名を呟いた。
「サリッサ」
「……ほう、随分詳しいな裕香」
あたしの呟きを耳にしたカミラは感心した様に呟きながらサリッサ、大王アレクサンドロスの軍勢の決戦打撃戦力としてその名を轟かせたマケドニア軍重騎兵が用いた両刃(前後に刃があるという意味)の槍を示し、その後に腰に装着した皮のベルトの両側に装着した鞘に収められているグルカ・ナイフのお化けみたいな剣を一瞥した後にスコルに声をかけた。
「スコル、お前も装備しろ」
「うん、分かった」
カミラの言葉を受けたスコルは立ち上がってカミラに歩み寄るとカミラの腰に装着されていた皮のベルトを外して自分の腰に巻き付けた後にあたしを見ながら言葉を続けた。
「かっこいいでしょ、裕香」
「うん、かっこいいよ、スコルにピッタリな雰囲気だよ」
あたしが答えるとスコルは嬉しそうに尻尾を振りながら笑顔を浮かべ、あたしは頷いた後に視線をカミラに戻して言葉を続けた。
「ねえ、カミラ、カミラのサリッサは騎兵用(サリッサはマケドニア軍のもう一つの主力部隊であるマケドニア軍重装歩兵も使用していて、こちらの長さは約5メートル)のサリッサ、だよね?」
「ああ、そうだ」
あたしの言葉を受けたカミラはそう言うと指先を口に当て、鬱蒼と立ち並ぶ木々の奥を見据えながら指笛を鳴らした。
カミラの澄んだ指笛の音色が周囲に響き渡り、それから暫くするとその音色に誘われる様に木々の合間から青鹿毛の駿馬が姿を現すとカミラの傍らへと駆け寄って来て駒を止めた。
「こいつはヴィルヴェルヴィント、私の相棒だな、何時もは勝手気ままに過ごして、用がある時だけ協力して貰っている」
「そうなんだ」
あたしがカミラの説明に頷きながらヴィルヴェルヴィントに近寄るとヴィルヴェルヴィントは静かにあたしに向けて頭を差し出し、あたしが少し躊躇いながらその頭を撫でると心地よさげに鼻を鳴らしてくれた。
「こいつもお前を気に入ったようだな」
その様子を目にしたカミラは満足げに呟きながらスコルにサリッサを預けてもう一度小屋に戻り、鞍や鐙、手綱等の馬具を手にして再び姿を現すとヴィルヴェルヴィントにそれを装着して軽やかな身のこなしで鞍上に跨がった。
青鹿毛の駿馬に股がるカミラの姿は凛々しくそしてどこか蠱惑的で、あたしはその姿に見とれながらカミラに声をかけた。
「鞄を背負ってくるからちょっと待っててね、カミラ」
あたしは荷物を取りに戻る事を告げたが、それを受けたカミラに首を傾げながらさらっととんでもない事をあたしに告げてきた。
「何を言ってるんだ、裕香?お前は私と一緒にこれに乗って街に行くんだぞ」
「……はい?」
あたしはカミラの告げた思いがけない言葉に思わず間の抜けた声をあげてしまい、その様子を目にしたカミラは笑いながら言葉を続けた。
「言っただろう、裕香、私達はお前に仕えるのだと、だったら私だけ馬に乗ってお前を歩かせる訳にはいかないだろう、それにこいつを扱えるのは私だけだ、だとしたら私とお前がこいつに乗って行くしかあるまい」
「……えっ……あの、それは、そうかもしれないけど」
「裕香、裕香の鞄はあたしが持ってあげるから心配しないで」
あたしがカミラの言葉に戸惑っているとスコルが笑顔であたしに声をかけた後に小屋へと向かい、カミラはその背中を一瞥した後に穏やかな眼差しであたしを見詰めながら言葉に重ねた。「……さあ、来てくれ、裕香」
「……う、うん」
カミラの言葉と眼差しを受けたあたしは頬が熱を帯びるのを感じながら頷いて鐙に足をかけた。
あたしが鐙を支えに状態を上げるとカミラは優しくあたしを支えてくれ、あたしはカミラに支えられながらヴィルヴェルヴィントの背に上がれた。
あたしがヴィルヴェルヴィントの背に上がるとカミラは鞍の後ろの方にずれて座ってくれて、あたしはカミラがあけてくれたスペースに跨がって両足で鐙を踏んで身体を固定させた。
「座れた様だな、少し前に詰めさせてもらうぞ」
「う、うん」
あたしが鞍上に跨がり終えるとカミラが声をかけてきて、あたしが頬を火照らせながら頷くとビキニ水着みたいな衣装に包まれたカミラの引き締まった肢体があたしの背中を包み込み、あたしが背中に当たるカミラの豊かな膨らみの感触に心臓を五月蝿く鳴らしていると、カミラが耳元に囁きかけてきた。
「少し狭いかもしれんが我慢してくれ、これでも歩くよりは楽だからな」
「うん、カミラは鐙がなくても大丈夫なの?」
カミラの言葉を受けたあたしは鐙を占有してしまったあたしの足をみながらカミラに問い掛け、カミラに優しく笑いながら言葉を返しくれた。
「問題ない、そもそも鐙は裕香に乗ってもらう為に装着したんだからな」
カミラはそう言いながらヴィルヴェルヴィントの手綱を手に取り、あたしはその手に自分の手を重ねながら言葉を続けた。
「カミラは優しいね、そんなに優しくされたらもっと甘えたくなっちゃうよ」
あたしはそう言いながらカミラの手を握り、あたしの言葉を受けたカミラは更にあたしの身体に自分の身体を密着させながら更に囁きかけてきた。
「……もっと甘えてくれても構わないぞ、裕香、お前は私達の主なのだからな」
カミラの言葉と密着している引き締まった肢体はあたしの心臓をやかましく脈打たせ、あたしは脈打つ心臓と頬を火照らせる熱に促される様に空いている手をカミラの引き締まった太股に添えた。
「……ンッ」
あたしの手がカミラの太股に重なった瞬間、カミラの口から甘い吐息がもれ、それを聞いたあたしは心臓が更にやかましく脈打つのを感じながらカミラの引き締まった太股を撫で続けた。
「やっぱり女戦士って凄いね、カミラの身体って本当に引き締まってる、羨ましい」
「……ンッ……フッ……ンンッ」
あたしはやかましく脈打つ心臓とそれに誘われてあたしの胸の奥に生じた熱に浮かされて呟きながらカミラの引き締まった太股を撫で続け、カミラは暫く甘い吐息をもらしながら身体を震わせていたけどやがて空いている手が撫で続けているあたしの手に重なって動きを止められてしまった。
「……フフ、随分悪戯好きだな、私達の主は」
「……フフフ、だってカミラが魅力的過ぎるんだもの」
あたしの手を止めたカミラは引き締まった肢体をあたしの身体に密着させたまま、熱の籠った笑みを浮かべてあたしに囁きかけ、あたしが同じ様に熱の籠った言葉で応じると笑いながら囁きを続けた。
「それは嬉しい言葉だな、これでも自信を持っているからな、この身体に」
カミラがそう言っていると小屋からあたしの鞄を背負ったスコルが姿を現し、スコルはヴィルヴェルヴィントの傍らに歩み寄るとあたしとカミラの姿を目にして羨ましそうな表情を浮かべながら口を開いた。
「良いなあ、カミラと裕香は一緒にいられて、あたしも裕香と一緒にいたいなあ、はい、カミラ」
スコルはぼやく様な口調で呟いた後にカミラにサリッサを手渡し、カミラはそれを受け取ると笑いながら口を開いた。
「すまないな、スコル、今回は我慢してくれ」
「ごめんね、スコル、帰りはスコルと一緒に帰るからね」
カミラに続いてあたしも慰めの言葉をかけ、それを受けたスコルは表情を明るくさせながらあたしに向けて口を開いた。
「じゃあ、帰る時はあたしが裕香を抱っこして帰ってあげるね、楽しみに待っててね裕香」
「……ソ、ソウナンダ、タ、タノシミダナア」
スコルの口から出た衝撃的な言葉を受けたあたしはスコルの笑顔に反論を封じられて、妙なイントネーションの言葉で応じざるを得ず、その会話を聞いていたカミラは笑いながら口を開いた。
「さて、それじゃあそろそろ行くぞ、スコル」
カミラが声をかけるとスコルは笑顔で頷きながら歩き始め、カミラはそれを確認した後にヴィルヴェルヴィントをゆっくりと歩かせ始めた。
あたしをカミラを乗せてゆっくりと駒を進めるヴィルヴェルヴィント、あたしはその鞍上であたしを包み込んでくれるカミラの引き締まった肢体の感触に頬が火照るのを感じながら爽やかに晴れた異世界の空を見詰めていた。
いよいよ始まった異世界での歩み、その第一歩に付き添ってくれるのは、セクシーで可愛い狼さん、そしてあたしを包みながら進んでくれるのは凛々しくて素敵で、そしてとてもセクシーな槍騎兵だった。