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出逢い…月華の狼…

主人公が異世界に転位します、早速ブックマークして頂きありがうございます(^O^)

ハヤシライスとデザートの白玉餡蜜(コンビニ製品)を平らげたあたしは皿を洗って歯磨きや洗面をした後に服を着替え、ショッピングに向かう為にも財布と携帯を手にマンションの部屋を出た。

部屋を出たあたしはエレベータで1階に降りると一応部屋の郵便入れをチェックし、中が空なのを確認した後に大きく伸びをしながらマンションの正面玄関からのんびりと歩み出た。

マンションの玄関を出たあたしは最寄り駅を目指してテクテクと歩き始め、その道の半ばまで来た所で足を止めて時間を確認する為に携帯を開いた。

携帯で時刻を確認したあたしは携帯を閉じて再び歩き始め、駅の駅舎が見えて来た所でもう一度時刻を確認する為に携帯を開いたのだが、そのまま首を傾げてしまった。

開かれた携帯に表示された時刻は先程確認した時刻と同じままであり、それを目にしたあたしは首を傾げたまま口を開いた。

「……うーん、故障かなあ?」

あたしはそう呟きながら携帯の設定メニューで時刻表示を操作しようとしたが携帯は無情にもその操作を受け付けず、それを確認したあたしはため息をついた後に設定メニューを閉じて何の気なしにモバイルメニューのブックマークモードに切り替えてみたが、そこで再び首を傾げてしまった。

ブックマークモードの文字は殆どが接続不能を意味する薄灰色だったが、何故か「キュイラシェ」への接続ページの文字だけは接続可能を意味する鮮やかな黒であり、その明らかに怪しさ全開の光景を目にしたあたしは暫く首を傾げたまま携帯の画面を見詰めたが不審感よりも好奇心の方が勝っており、あたしはその好奇心に身を委ねる事にしてログインしてみる事にした。

「ケセラセラって奴よね」

あたしはそう呟きながら接続ページにログインする為にボタンを押してみたが、画面は切り替わる事無くそのままであり、それを確認したあたしは些か拍子抜けした気分を味わいながら顔をあげ、そのまま身体を硬直させてしまった。

あたしの周囲には見慣れている筈の駅前の光景が拡がっていたが、その色彩はセピア色に染まっており、あたしは異様な光景に圧倒されて立ち竦んでしまった。

あたしが立ち竦んだまま身動き取れないでいると、セピアに染まっていた景色を呑み込む様に眩い光の粒子が溢れだし、光の波はセピア色に染まった景色を呑み込みながらあたしの所へと迫って来た。

あたしは動こうとしたがその足はまるで言う事を聞かずに動こうとせず、あたしは立ち竦んだまま迫り来る光の波を見詰めていた。

(……何か、戦国自衛○のOPみたい)

あたしがそんな場違いな事を感じながら光の波を見詰めていると、光の波は周囲の景色もろともにあたしを包み込み、あたしの意識は眩い光の中へと消えて行った。

それからどれくらいの時が経過したんだろう?永遠に感じる程に永続的にも、刹那と言える程瞬間的にも感じられる時が経過した後にあたしの意識は覚醒し、あたしは小さく頭を振った後にいつの間にか閉じてしまっていた瞼を開けたが、周囲の景色を目にして途方にくれてしまった。

あたしの周囲に拡がるのは鬱蒼と立ち並ぶ木々のみと言ってよく、その景色を目にしたあたしは唖然とした表情を浮かべたまま口を開いた。

「……ここ、どこ?」

あたしの口から出た間の抜けた声は鬱蒼と立ち並ぶ木々の中に空しく消えて行き、あたしは暫く茫然と立ち尽くしていたが、それでこの全く訳の分からない状況が好転する筈も無く、それに気付いたあたしは遅蒔きながらに自分や周囲の状況を確認し始めた。

周囲を見渡すとあたしはどうやらこの鬱蒼とした森の中にわずかばかり存在する開けた(と言っても見たとこ7、8メーター四方程度だけれども)所におり、足元には恐らく野宿の為に起こしたと思われる焚き火がか細く揺らめいていた。

あたしは焚き火が消えそうなのに気付くと慌てて手近な所に纏めてあった枯木を何本か放り込み、か細くなっていた火が勢いを取り戻したのを確認すると安堵のため息をはいた。

焚き火を護ったあたしが改めて自分の様子を確認してみると、あたしの服装は駅前にいた時のお出掛け用の服装とは全く異なる軍服の様な服装になっており、それを確認したあたしは思わず天を仰いで途方にくれてしまった。

「どこに行きゃいいってのよ」

あたしがそう呟きながら焚き火の傍らに腰を降ろすと左手に何かが触れ、あたしは思わずビクッとなりながらそちらに視線を向けると丈夫な布製の背負式の鞄の様な物が手に触れているのが確認された。

「……たぶん、あたしの物って事なんだよね」

あたしはそう呟きながら鞄を手に取り、焚き火の揺らめく光を頼りに蓋を開けて中を覗き込んだ。

覗き込んだ鞄の中には白い布包みが幾つか置かれており、あたしは鞄から布包みを取り出して目の前へと並べた。

鞄の中には全部で六個の包みが存在しており、あたしはその一つを手に取ると包みを解いてみた。

包みを解いてみると中には干肉と燻製肉の固まりと岩塩の塊が存在しており、それを目にしたあたしは取りあえず飢死の危険性が回避された事に安堵しながら包みを元に戻した後にもう一つの包みを解いてみた。

もう一つの包みの中には十五枚の恐ろしく固いビスケット(恐らく保存食様に水分を飛ばしきった物、食べる際には水やスープにつけて柔らかくするか、スープに入れてどろどろに溶かして食べるしか無さそうだ)が入っていた。

(……まっ、これで暫くは飢死を免れれそうね)

あたしは安堵しながら肉と岩塩の入った包みとビスケットの入った包みを鞄に戻し、その後に独特な形状をした包みを手に取ってそれを見詰めた。

「……まっこの形なら間違いなくあれよね」

あたしがそう呟きながら包みを解くと鈍い光沢を放つ前装式のマッチ・ロック式の短銃が姿を現し、あたしはそのズッシリとした感触を感じながらもう一つの包みを解いてみた。

解いた包みの中には短銃に使用する火薬と弾丸が入っており、あたしはそれを確認すると顔をしかめて短銃を見詰めながら口を開いた。

「……せめてリボルバータイプが欲しかったなあ」

単発でしかも火縄を保持しなければならない短銃はかなり使い途に困る武装であり、あたしは思わずぼやいてしまった物の全く訳の分からない所に丸腰のままいる訳では無い事に幾ばくか安堵しながら短銃と火薬類を傍らに置いた。

短銃と火薬類を傍らに置いた後、何とも落ち着いた対応をしているなあと自分でも驚いたが、あたふたと右往左往してしまうよりはマシだろうと思いなおし、それから残る二つの包みを次々に解いてみた。

包みの中には水筒(ありがたいことに水は入っていた)と銀製の小さな水筒があった。

あたしは最後に出てきた銀製の水筒を鼻の近くまで近付けた後に蓋を開け、そこから漂う芳醇でフルーティーな薫りを鼻腔に感じた。

「カルヴァドス、か、しかも結構上等な奴、元の持ち主はかなりの酒好きだったみたいね」

あたしは水筒から漂うカルヴァドス(リンゴのブランデー、フランスのカルヴァドス地方が原産の為こう呼ばれる)の薫りを楽しんだ後に蓋を閉め、それから水筒の水で喉を湿した後にそれ等を鞄に戻した。

カルヴァドスの入った水筒を鞄に戻した際に何か固いものが当たった事を示す、チャリンッと言う音が響きそれを聞いたあたしが音のした辺りを探ってみると鞄の中に縫い閉じられていた金貨が6枚も出てきた。

出てきた金貨は以前博物館等で見た事のあるナポレオン金貨(20フラン)とほぼ同じ大きさの金貨であり、それを目にしたあたしは金貨と同時に鞄の中から見つけた靴下の中に6枚の金貨を入れてしっかりと入口を縛りあげた後に軽くそれを振ってみた。

かなりの大きさと重さのある金貨を6枚も入れている靴下はブンッとかなり重みのある風切り音を発し、それを耳にしたあたしは静かに頷きながら靴下を懐へと入れた。

(不意をついて相手に喰らわしてやったら時間稼ぎ位は出来そうだし、鞄を無くしたとしてもこれを持って街に入れば何とかなるわね)

あたしは金貨入りの靴下をしまいながらそんな事を考え、その後に肩を竦めながら口を開いた。

「まあ、ここが何処だか、街が何処にあるのか分かんないと詰んだまんまなんだけどね」

あたしがそう呟いて苦笑した瞬間、背後から下生えを踏み分ける音と唸り声の様な音があたしの鼓膜を揺さぶり、あたしは置いていた短銃を手に取ると銃口に火薬の粉を注ぎ入れた。

銃口から火薬を注ぎ入れたあたしは次に短銃に添えつけられているカルカを使って入れた火薬を突き固め、その後に鉛の弾丸を入れて火縄に火を点した。

「……当てる自信なんてこれっぽっちも無いから出来る事なら来て欲しくないんだけどなあ」

あたしはそんな風にぼやきながら背後を向いて短銃を音のする方へと向けたが、そんな都合の良い展開が訪れてくれる筈も無く、音は無情にもこちらへと近付いて来てやがて音の正体があたしの前に姿を現した。

姿を現したのは真っ黒な剛毛に覆われ深紅に輝く双眸とめちゃくちゃ鋭い牙と爪をもった巨大な狼(しかも五匹もいる)でありそれを目にしたあたしの脳裏に浮かんだのは「詰んだ」の三文字であった。

「……やだなあ、何かめちゃくちゃ痛そうなんだけど、どっか行ってくんないかなあ」

伊東一刀斎とか塚原卜伝とかだったら眼光一閃で追い散らせるのかもしれないけど、キャバ嬢だったあたしにそんなチートな芸当が出来る筈も無く、あたしは見るからに痛そうな狼の牙と爪にげんなりしながらぼやくしか無かった。

五匹の巨大な狼は左右に拡がるとあたしに向けてジリジリと近付き、あたしは短銃を真ん中の狼に向けたまま身体を更に焚き火に近付けた。焚き火に面した部分は相当熱いが今がそんな贅沢を言える状況である筈も無く、あたしは熱さを我慢しながら五匹の狼と向き合い続けた。

「……これ、マジでヤバ過ぎなんだけど」

あたしがそうぼやくと狼達はそれが聞こえた様に更にあたしに近付き、それを目にしたあたしがそろそろ出鱈目なお経でも唱え様かと妙な覚悟を決めているとその耳に今の状態には場違いな涼しげな声が届いた。

「そんな玩具じゃアイツ等止められないよ、あたしがアイツ等追っ払ってあげるから、銃を降ろして」

現在の状況から考えたら明らかに場違いな響きを耳にしたあたしの中に懐かしさの様な、安心感の様な感じの感情が芽生え、あたしはその声に従って静かに構えていた短銃を下に下ろした。

「……ありがと、後はあたしに任せて」

あたしが短銃を下ろすと同時にあの涼しげな声が再びあたしの鼓膜を心地好く揺さぶり、続いてあたしの横を美人さんが通り過ぎていた。

勢いを失い始めた焚き火の頼りなげな光はビキニの水着にいたセクシーな衣装に包まれたはち切れんばかりに瑞々しく引き締まった背中とお尻から延びるフサフサとした狼の尻尾、そして銀糸のロングヘアとそこから覗く狼の耳と言った後ろ姿をぼんやりと照らしだし、それを目にしたあたしはある事を思い出していた。

(……始めてゲットしたURキャラって彼女だったよね)

あたしがそんな事を考えながら美人さんの後ろ姿を見詰めていると、美人さんは臆する様子を微塵も見せぬまま巨大な狼達の所に歩み寄っていき、狼達は近付く美人さんに気圧された様にか細い声をあげながら後退りし始めた。

「……どうするの?るんなら容赦はしないよ」

美人さんは静かな声で狼達に声をかけ、それを受けた狼達はか細く吠えた後に美人さんに背中を向けて鬱蒼と立ち並ぶ木々の奥へと逃げ散って行った。

「……もう大丈夫だよ、お姉さん」

美人さんが狼達が逃げ散った先を見詰めながらあたしに声をかけていると勢いを失っていた焚き火が消えてしまい、その代わりに蒼い月光があたしと美人さんの周囲を照らし始めていた。

(……良かった焚き火が消えて)

大事な焚き火が消えた筈なのにあたしはそれを喜んでしまっていた。

だって焚き火の光よりも今あたしと彼女を包み込んでいる蒼い月光ひかりの方が彼女の魅力を何倍にも引き立てると確信していたから……

「……うん、もう大丈夫そうだね」

彼女がそう言いながら此方を振り替えると、銀糸のロングヘアと鳶色の瞳のワイルドな雰囲気の美貌があたしを見据え、あたしは振り注ぐ蒼い月光ひかりに包まれたワイルドな雰囲気の美女に見とれてしまっていた。

「あたしはスコル、お姉さんの名前、教えてくれる?」

彼女、あたしが初めて手に入れたURキャラ、スコルは蒼い月光ひかりの中でそう言った後にあたしに笑いかけ、あたしは頷いた後に自分の名をスコルへと告げた。


あたしが異世界で初めて出逢ったひと彼女は蒼い月光ひかりに輝く美しい銀の狼……

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