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第八話



「じゃあとりあえず初の戦闘やってみますか」


「体が思ったより動かない気もするが……まあ行けるぞ」


 よしと頷いて、間抜けヅラをしたベビーゴブリンとの距離を詰める。気配に気付いたようでこちらを見上げた時には俺のボロッちい剣での一撃が見事に命中する。ベビーゴブリンはやられた勢いで背中から地面に体を打ち付けた。


 直後、起き上がろうとするベビーゴブリンに漆黒の球体がぶつけられた。


 ずどんと重い音とともに球体が地面にめり込む。そして少し経ったあと、それは溶けるように消えていった。


 そしてそれが去った地面にはほとんど粒子状となり姿を失いかけているベビーゴブリンがいた。


「こんな感じか」


 そこに大きな感情はない。


「こんな感じじゃの」


 そこに大きな起伏もなかった。


 そしてベビーゴブリンを倒し、次なる獲物を探す。草原はほぼ開けた場所だ。次の敵を探すのにもそう時間はかからなかった。


 次に見つけたベビーゴブリンは俺たちとは街と逆の方向に100メートルほど離れた場所にいた。しかも今回は二匹だ。


「ちょっとは歯応えがあるといいの」


「まああんま期待はすんな。ゲームの序盤なんてそんなもんだ」


 興を削ぐような発言をしてしまったがアデルは気にした様子は見せない。

 

 そしてよしと言って駆け出すアデルを俺は追う。


「お前職業考えろっての!」


「そんなの関係ないの。大切なのは力と気持ちじゃ」


 アデルは長いステッキのような杖を自分の脇下に構えてベビーゴブリンを目指す。スピードが出ていたために発生した音に二匹が気付き、迫ってくるアデルに対して小ぶりなナイフを臨戦態勢を取る。


 アデルとベビーゴブリンがお互いの領域へと入る。まず先手を取ったのはアデルだ。ナイフを真っ直ぐに刺すイメージで飛び込んできたベビーゴブリンを小さなステップを踏むことでかわし、その反動で思いっきり横から杖で一撃を叩き込む。その瞬間を狙ってもう一匹のベビーゴブリンがアデルに横から飛び込んで来るがそのナイフがアデルに届く前に、その勢いを殺さずに杖をぶん回してアデルが攻撃をヒットさせる。そして倒れた二匹を見ながらスキルを連続で発動させた。それは先ほどと同じ黒い球体を生み出す魔法だ。


 その球体は無慈悲に二匹のベビーゴブリンの命を潰した。


「……ふう疲れたの」


「ふうじゃねえよ! 先走りすぎだろ!」


「こうでもせんとつまらんじゃないか」


 そんな真っ直ぐな瞳で言われてもしょうがないんですけどとは思いつつも堂々巡りになる未来しか見えないので俺から折れることにする。


「どうやらレベルが上がったようじゃ」


 そんな俺の様子を見てか、アデルが話しを変えた。


 確かに先ほどアデルがベビーゴブリンを二匹倒した後、小気味いい電子音が耳に響いていた。


 俺とアデルはパーティー登録をしてあるので倒した相手の経験値も折半でどちらにも入ることになる。


 ただその機能のおかげで初のレベルアップを相方の力だけで達成することになってしまったことにはあまりいい物は感じないが。


「おっ、パワーと体力結構上がってるわ」


 でもゲームをやっている以上ステータスを確認してしまうのは性みたいなものである。


「私は闇魔法のスキルも上がったようじゃ」


 アデルの言葉に羨ましさを感じる。このゲームではレベルスキル制を導入しているため、モンスターを倒す際にスキルを使ってそちらも強化していけば、レベルアップによるステータス強化とはまた違った恩恵を得られるようになる。要はどちらも重要だということだ。


 アデルはチュートリアルの中で街の引退した魔法使い(見た目はほんとに小説に出てくるようなしわがれた老婆)に闇魔法のスキルを授かっていた。そのスキルの熟練度が上がると単純に技の威力もあがるし、新しい技を習得することもある。デメリットのあるスキルもあることにはあるそうだが、基本的には上げて損はない。


 しかも話しを聞いているとどうやらこのスキルのレベルアップによってアデルは新しい技を覚えたようだった。今までは黒い球体を相手にぶつける技しか使えなかったが、自己の攻撃力を一定時間上げる技を習得したようだ。


 見てわかるくらい上機嫌になったアデルに付き合わさせれてこの後一時間ほど狩りに付き合った俺の剣スキルも見事に上がり、連続切りという剣戟を連続で繰り出せるという技を習得した。そして二人が5レベルに到達したところで俺たちは宿に戻りログアウトした。


 現実世界はもうみなが寝る時間になっていた。


「ほらアデルぼさっとすんな布団しくぞ」


 眠たそうに目をこするアデルを無理やりどかせて布団をしけるスペースを確保する。そこにすぐアデルは飛び込み、刹那的早さで寝息を立て始めた。


「なんちゅうやつだ」


 なんて俺は誰にも届かないであろう独り言を言いながら自分の布団に入る。


 いつの間にか俺の意識も闇の底へと落ちていた。




 

 



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