説教臭い始まりの使徒
「ワシは前世の記憶を持ったまま、この世界に転生した」
始まりの使徒ゼイン・マクファーソン(Zane Macpherson)は、そう話し始めた。
ジョヴィが入れてくれた紅茶を飲みながら、唐突に話が始まった。
マリー、レオン、ゲオもやってきて、静かにダイニングテーブルの端に座る。
お爺さんは、フローレンスが抱えていた本を受け取って、懐かしそうに中を開いた。
そして、フローレンスとチャールズに向けて、私には見せたことのない笑顔を向けて言った。
「チャールズとフローレンス。二人と再び出会えて嬉しかった。ワシは前世で、この二人と出会っている。先程と同じ様にAGI(汎用人工知能)について語り合ったこともある。この二人は夫婦で、ワシとは全く違うアプローチで、世界を救おうとしていた。そして、今から思えば、そのアプローチこそが、世界を救うものだったと思う」
「「え?」」
「うぇ」
「やっぱり! ワタシはそう思っていたわ!」
テーブルの色々なところから声が漏れた。
お爺さんは、再び優しく微笑み、話を続けた。
「もちろん、今の名前とは、全く違う名前だった。見た目は、今よりも、もう少し歳上だったかな。美しい女性と格好良い青年だったぞ。その本は、その時にワシが贈ったものだろう。表紙の裏に、ワシのサインがある」
お爺さんは表紙をめくり、その後ろにあるサインを指差した。
私の頭の中には、クエスチョンが浮かぶ。
この本が、前世のフローレンスとチャールズに、お爺さんがあげたものなら、どうして私の空間部屋の書庫にあるのか。
「じゃが、前世の記憶がない者に、前世の話をするのはやめよう。其方らが前世の記憶を持たずに、この世界に転生してきたのは、おそらく意味があるはずじゃ」
「月は? お爺様も月は知っているのね!」
「其方は? チャールズの姉か?」
「え? 違うわ! ワタシはアンヌ=マリー・ド・フランスよ!」
「ほう。フィリップが育ての父か。なるほど。すまぬ、アンヌ=マリーよ。前世のチャールズには姉と兄が二人おると言っていた。兄姉は日本人の顔だと言っていたからな。つい、チャールズに似ている其方を姉だと思ってしまったのだ」
お爺さんは、マリーに謝った後、月は勿論知っておると答えた。
「ワシが、この世界で行ったことが、多くの社会的混乱を生じさせた。面と向かってワシにそう言ったのは、ララが初めてじゃが、やはり、そうなのだろうと今では思う。じゃが、やったことは、言ったことは間違ってはいないと今でも思っているのも事実じゃ。ワシがどうして、この世界に転生してきたのか。そして、どうして記憶を持ったまま転生してきたのか。その意味を考えれば……」
お爺さんは、前世の人生から話を始めた。
「ワシはAGI(汎用人工知能)の技術者、研究者だった」とお爺さんは言った。
お爺さんが転生する前の世界、『地球』のアメリカ合衆国という国にある先端企業の一番偉い技術者だったそうだ。
AIが開発され、数年後には、汎用的に活用できるAGIがリリースされる。
アッと言う間に世界に広がり、人々の代替役として置き換わったそうだ。
最初は一企業が開発したAGIだったが、お爺さんが開発したモデルを中心に、AGI自身が改善を繰り返すことで、世界中に広がる主要モデルになったらしい。
お爺さんは、一躍時の人だ。
同時に、当時の地球は何回目かの大規模気候変動期に見舞われていたと言う。
ある地域のカルデラ噴火が連鎖的に反応し、世界の各地で噴火が起きて、太陽の日差しが遮られてしまった。
大地の気温は低下し、氷河期が訪れたという。
人々は地下都市に移住した。
AGIがコントロールするロボットが、堅牢な地下都市を建設し、人間が生存できる環境を構築し、維持した。
世界中で何十個もの地下都市が作られたそうだ。
とは言え、当時の世界人口は八十五億超。
全員が地下都市に移住出来る訳ではない。
当然ながら、選別された地域の人々だけが移住し、残りの人たちは過酷な環境で生き延びることを強いられたという。
「生き残る者の選別。思えば、この辺から世界は狂っていったように思える。いや、元から狂っておったのだ。じゃが、狂っていることを取り繕うこともしないようになっていった」
お爺さんはそう悲しそうに呟いた。
屋根があり、寒さを凌げ、テクノロジーが生活を支える環境で生きられる人たちは『選ばれた』人たちだ。
でも、その選ばれた人たちが住む地下都市の中でも、ヒエラルキーは、選民思想は強く広がる一方だったと言う。
AGIが生み出す利権を独占していた企業を中心に、富を持つ者と持たざる者は明確に分けられて行った。
1%以下の層が、八割以上の富を独占する社会。
汎用人工知能は自己改善を休むことなく高速で行い続け、人間がやるべきことは少しずつ無くなった。
何もする必要もない。ただ与えられた物だけを享受する社会が出来上がっていったという。
「ワシは百二十四歳まで生きた。特別に長生きだった訳ではない。その時の平均寿命じゃ。ワシらの下の世代は百五十まで生きられるだろうと考えられていた」
AGIが人間の健康を適切に管理することで、人々の平均寿命は飛躍的に伸びた。
人間の医師は不要だ。絶対に失敗しない機械が正確に診断し、正確に処方し、正確に外科手術するのだ。
人間の医師の出番は、もはやない。
人々は最終的に政治的決定権までも、AGIに委ねたと言う。
いくら選挙で選んだ政治家であっても、人間である以上、必ず間違う。
間違った判断をしない人間なんていないのだ。
そうであるのならば、常に最適解を出すであろうAGIに判断してもらう方が、人々は安心できるという訳だ。
「いつの間にか、ワシが作った人工知能のモデルが、世界を牛耳るようになったのじゃ。その時は、AGIではなく、『セントラル・ガバナー(Central Governor)』と呼ばれるようになっていたがな」
人が働かない社会。
ただ、AGIが生産した物を与えられて生きるだけの社会。
何も判断せず、何も生み出さない。
富を持つ者は永遠に持ち続け、持たざる者は永遠に貧しいまま。
何も変わらない社会。
お爺さんは、晩年、自分がAGIを開発したことが社会のためになったのか、苦悩する日々を過ごしたと言う。
「ゼインさんが開発しなければ、他の誰かが開発しただけですよ」
チャールズはそう言った。
その通りだと、私も思う。
でも、同時に、そう考えるお爺さんの気持ちも、共感できる気がした。
「ワシは、自分が開発したAGIに問うたのじゃ。この社会は失敗作だ。貧富の差がなく、AGIに完全に依存することなく、自分たちの力で一生懸命に生きる。そんな社会を作るためには、どうすれば良かったのかと」
「AGIは何と?」
「『マスター。検討します』とだけ言った。答えは無かった。その後、ワシは死んでしまったからの。その答えは教えてくれぬままじゃ。ただ……」
お爺さんは、そこで言い淀んだ。
少し考えて、チャールズとフローレンスの方を見て言った。
「ワシはチャールズとフローレンスが、ワシとは違うアプローチで世界を救おうとしている。そう言ったはずじゃ。あまり、前世の事は言いたくないが……、前世の二人は、違う社会を作っておった。日本の令和島という島で、これまでとは違う社会を作っておったのじゃ」
その島は、噴火によって新たに生まれたモノだと言う。
チャールズ達が中心となって、自給自足の街をそこに建てた。
お金と言う交換手段を放棄して、人々は自分たちが生産した物を分け合う。
農業、果樹園、酒造、都市インフラ、役人、防衛と自分の特性にあった仕事を皆が選択していたそうだ。
「この世界に生れ落ちた時、ワシは十代の若者だった。百二十四年の記憶を持ったジジイが若者の身体を持って、生れ落ちたのじゃ」
お爺さんが生れ落ちたのは、現ユニオン・リパブリック、旧アメリカーナ王国の広場の真ん中だったと言う。
すぐに教会によって保護され、この世界の事を教えてもらったそうだ。
「何故、ワシが転生したのか。すぐに理解できたわ。この世界は産業革命が始まったばかりじゃった。このまま進むと、百五十年後にはAGIが開発され、同じような社会になっていくじゃろう。それを身に沁みて分かっていたワシは、当然、自動機械産業の推進を止めるように説いて回った。人間が人間らしく生きるためには、テクノロジーに依存してはいけない」
お爺さんの教えは、こうやって聞くとシンプルかつ理解できるものだった。
アジテーターと言っていたのも分かる。
人々の心に染み入るような分かりやすい論旨と、幾分過激な主張。
上手く女神に利用されちゃったのかもしれないと、私は思う。
お爺ちゃんのベースの考え方は、富への罪悪感と空虚さだ。
「穴の開いた酒樽を満たそうとする徒労」
「富を追求するために人生の浪費をしてはならない」
物語の教訓の様に、その言葉を繰り返し言った。
これが、第一の思想。
第二に、社会の基本となっている私有財産制度や資本主義的な経済活動への反対。
その制度は、富を所有する者が、富を所有しない者に対する支配を保証している事だと断じていた。
第三に、お爺さんは、支配階級がその権力を自発的に手放すことはないと考えていた。
社会的不正に対して武力闘争や暴力革命を是とする思想。
つまり、武力による打倒によってのみ社会変革が達成されるということだ。
第四に、真の幸福は物質的な豊かさではなく、精神的な充足と他者への奉仕にあると説いた。
他者の苦しみを和らげる実践的な行動こそが、富の追求よりも価値あるものである、と。
この考え方により、アジテーターとしての活動から、より実践的に共同体を作る活動へシフトしていった。
お爺さんは改革者としての情熱を徐々に失い、飲酒と喫煙をやめ、菜食主義者になり、質素で自給自足の生活を目指したそうだ。
その社会は、財産を共有し、質素で自給自足の生活を送るユートピア共同体。
ストーンブリッジの森のコミュニティが、まさに、お爺さんが目指したそれなのだろう。
お爺さんは、一通り、自分の人生と、その思想を語った。
その語り口は滑らかで、聞きやすい物語だった。
誰もが、その物語を集中して聞き入っていた。
その物語が終わり、お爺さんは私に問いかけた。
「ララ。ワシは化石か? ワシが考える人間の真実は幻想か?」
お爺さんに集中していた皆の顔が、一斉に私の方に向いた。
チャールズやフローレンスは、前世の自分たちの活動が、このお爺さんに影響を及ぼしたのだと聞いて、少し厳しい顔になっていた。
私は投げかけられた問いを考える。
正直言って、十四歳の女の子に答えを求めるには、難しすぎる問いだと思う。
分からない。その言葉が、一番正しい答えなのは分かっていた。
「まず、ただの感想だけど、女神の主張に似ていると思った。だからこそ、お爺さんは『始まりの使徒』に選ばれたのだと思う」
喉が少し乾いていたのか、擦り切れた声になってしまっていた。
私はカップに残っていた紅茶を飲み干す。
紅茶はもう冷たくなっていた。
「問いに対する返答だけど、お爺さんが化石かどうかは分からない。それはお爺さんが街に出て、街を歩き、人々を見て回って確認してほしい。そして、その後の行動が化石かどうかを決めるのだと思う。あと、お爺さんが話してくれた『人間の真実』という物語は、間違ってはいないと思う。凄く綺麗なストーリーだったよ。でも、それは正確には『人間の真実の一つ』なのだと思う」
お爺さんは、眉を少しだけ上げた。
「『人間の真実の一つ』とは?」とさらに問いを重ねる。
視界の端で、真理伯母さんと隆叔父さんが視線を笑顔で交わし合っているのが見えたよ。
「うーんと。まず、ストーンブリッジの森のコミュニティの人たちが幸せに生きているのなら、それは一つの真実だと思うよ。でも、世界中の人、全員が実現できるか言うと、難しいと思う。つまり、実現可能性に疑念がある」
「ふむ」
「人間は自己実現を追求する生き物だと思う。もっと出来るようになりたい。もっと色々なことを経験したい。美味しいものを食べたい。刺激的なことを経験したい。知らないことを知ってみたい。それを制限させたり、我慢させたりするのは難しいよ。禁欲的・利他的な生き方は大多数の人々にとって持続不可能だと思う」
お爺さんは小さく頷いた。
私はそのまま話を続ける。
ジョヴィが温かい紅茶に入れ替えてくれた。
「経済成長とか技術革新って、大抵、自己実現欲求から生み出されてきたものだよね。お爺さんだってそうでしょ?」
「まぁ、そうだな……。否定は出来ん」
「人間はね、前にしか進めないんだと思う。先にしか歩けない。後ろには戻れないし、ずっと立ち止まってはいられないんだよ。だから、全員に、そのままでいろって我慢を強要するのは違うと思う。ララはね『万人に同じ生き方を強制する』のだとしたら、相容れないと思う。ララは多様な価値観や生き方を認めたいし、誰にも強制されたくないから」
「そうだな。ワシもそうだ」
「ふふふ。そうだよね。多分、みんなそうだよ。だから、強制しようとする女神は嫌いだけど、自分たちの世界で幸せに生きているお爺さんは嫌いじゃないよ。あとは、富の配分と武力解決の是非だけど。多分、お爺さんの前世の社会は、富の配分を失敗しちゃったんだよね。決して、技術革新が間違っていた訳でなく、AGIが発展し、その利益をキチンと配分していれば、それは凄く幸せな社会になったんじゃないかな」
「しかし、資本主義経済である以上、富の配分は無理なのだ」
「そうなのかもしれない。そこはララには分からない。でも、社会的な富の配分をどうやって実現するのか、という社会制度の話と、自己実現追求と言う本能に基づいた技術革新の話は、切り分けて考えるべきだと思う。武力解決も同じ」
「ララさん、ララさんは武力で解決することは是なの、否なの?」
テーブルの一番端に座っていた真理伯母さんから、質問が上がった。
何だろう。この人と、隣に座る隆叔父さんだけが、凄く嬉しそうにしている。
「武力で解決しなくて済むのなら、そうした方が良いに決まっている。誰の命も取らなくて良いのなら、そうしたい。それはベジタリアンの話にも繋がっちゃうけど。でも、人間も生き物である以上、生きるために誰かの命を奪って生きている。殺されるくらいなら殺すしかない。だから、ララは必要ならば武力を使うと思う」
「ララちゃんは女神を殺そうとしているしな」
「ふふ。そうだね。チャック、でも、チャックも気づいたと思うけど、女神が誰なんだか、何かわかっちゃった気がしてきたよ」
「そうだね。僕もだよ。ゼインさんに色々教えて貰わないとだ」
私はテーブルに座る人たちを見渡した。
首を小さく前後に振って頷いている人たちが半分。
残りの人たちは首を傾げている。
まあ、未だ仮説だ。
チャールズの言う様に、これから調べてみないといけないことが沢山ある。
私はお爺さんに、御礼とこれからのお願いを伝えてみることにした。
「お爺ちゃん、話してくれて、ありがとう。ララは、ララ達はお爺ちゃんを受け入れるよ。ストーンブリッジの森とここ迎賓館をつなげよう。いつでも、ここを使って、色々な国に出入りしても良いよ。でも、一つだけお願いがあるの」
「ララ、何でも聞こう。それで恩を返せるのであれば」
「うん。これから先も、お爺さんが知っていることを私達に教えて欲しいの。出来れば知っていることを全部、教えて欲しい」
「説教臭いジジイの話を聞きたいという若者がおるのか?」
「はーい! まずは僕が聞きます!」
「私もです。ゼインお爺様、是非、先生になってください」
チャールズとフローレンスが挙手してくれた。
私もお爺ちゃんの知識を受け継ぐのなら、この二人だと思っていたよ。
「ゼインおじさま、この家の書庫、一緒に読みましょう。先ほど、議論していた富を配分する社会制度の本もありますわよ。隆兄さまと既に読んでいますよ」
「マリ、ありがとう。化石にならぬようにするためにも、ワシもまだ先に歩まねばならぬ、ということか。なかなか、厳しいの。体感では二百年生きているのだがな」
「まあ、わらわは、音楽で楽しんでも怒られないのであれば、歓迎するさな」
「そうねぇ。この歳で怒られるのは嫌よね」
「ナタリア、カタリナ、お前らは勉強が足らんのじゃ。立ち止まっていたら、孫達に化石扱いされるぞ」
「ゼイン、わらわは学んでおる。日々、ララちゃん達から学んでおるわ」
その後、アス姉が事務的な話を進めた。
ストーンブリッジの森の何処に転移の扉を作るか。
後は、各国で出入りできるようにするための身分証とかの話だ。
お爺さんは、出来れば四人分、出入りできるようにしておいて欲しいと言う。
その中には、メイソンさんも入っていた。
「フィオナがいるのですか? それは是非、会いたいです!」
「あらあら、フィオナはいつの間にか、田舎に引っ込んでいたのさね」
「それこそ、フィオナこそ、書庫の本に夢中になるだろう」
「そうねぇ。早速、呼びに行こうかしらね」
フィオナ・ロックウッド(Fiona Lockwood)。
ユニオン・リパブリックの知性の十使徒だ。
ユニオン・リパブリックの立上げに尽力した後、真理伯母さんの様に顧問として活動していたそうだ。
お爺ちゃんの話によると、十五年ほど前にウィンザーグローブのお爺ちゃんのもとにやってきて、それ以来、共に過ごしているそうだ。
同世代の真理伯母さん、隆叔父さん、女王のお母様、そして宰相のお祖母様が再会を楽しみにしている。
逆に私達、選ばれし使徒は、そのフィオナさんが育てているという使徒の方に興味があった。
ケビン・ロックウッド(Kevin Lockwood)。
私達と同じ歳の選ばれし使徒だ。
お爺ちゃんが、私の魔法の話を聞いて、全く驚かなかったのも、既にストーンブリッジに選ばれし使徒がいるからだそうだ。
「ケビンは外の世界を知るべきだろう。アイツにストーンブリッジは狭すぎる。ララ、どうか、仲間にしてやってくれ」
「うん。ケビンが望むのならば、ララ達はウェルカムだよ。早速、連れて来てよ」
「ゼインお爺様、宜しかったら、本日の夕食は、その御三方もご招待なされては如何ですか? ベジタリアンが楽しめる夕食を用意しますよ」
「そうか。アストリッド、すまぬな。世話になる」
「爺ちゃん、部屋がいっぱいあるから、ここに寝泊りしなよ。自由に行き来出来ると言っても、こっちを本拠地にした方が書庫にも近いし、身体にも良いよ」
「ララ、ありがとう。じゃが、あそこはワシがリードしてきた町で、責任が……」
「ゼイン、そういうのはもうやめるさね。年寄りがいつまでも出張ってはいかんぞ。若い奴らに任せるのじゃ。たまに行くくらいが丁度よいさね」
「ナタリア、随分と言うでないか。其方も十分年寄りじゃろう。まあ、良い。ララ、世話になろう」
こうして、私達に、説教臭い爺ちゃんが一人、仲間になったのであった。
「はわぁぁぁ……」
難しい話が終わったと油断したからか、盛大なアクビが出てしまった。
慌てて、口を隠すが、時すでに遅し。
全員の視線を浴びてしまっていた。
「ララ様、少しお休みしましょう。昨晩は殆ど眠れていない筈です」
そうだよ。私は寝ていないんだ。決して、マリーの様にお寝坊さんでも、話が退屈だったという訳でもない。
ナナちゃん、ありがと。私は後ろに振り向いて頷いた。
「ララ! 小さな子はちゃんと寝るのよ! 大きくならないわよ!」
「マリーは沢山寝たじゃんか。さっきまで寝てたじゃんか」
「ワタシは待ってたのよ! 夜遅くまで、ララがフリーダムランドの作戦が終わって、コクリュウちゃんに乗るのを待ってたの!」
う、そうだった。
マリーを呼び出すのを忘れたのは私だ。
ごめんね、次の機会はちゃんと乗せるからと謝っておいた。
アス姉からも、寝なさいと言われたので、私は爺ちゃんに、また夕ご飯でね、と挨拶して席を立った。
ダイニングルームを出る時に、爺ちゃんの声で「ララは、本当に同じ歳か?」と皆に聞いてるのが聞こえたよ。
その後、大きな笑い声が上がっていた。




