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第29話 「絶望の淵で」

城塞を突破した翌日、25人は瘴気の源へと向かう最後の道を歩き始めた。

セレナの言葉通り、進むにつれて瘴気の濃度が増していく。


「空気が......重い......」

マリアが息を切らす。

「まだ源まで距離があるのに、もうこの濃さ」

トーマスも顔をしかめる。

景色も徐々に変わっていく。

城塞跡の美しい草原から、次第に荒涼とした大地へ。

植物は姿を消し、岩と砂だけの世界が広がる。

「まるで、生命を拒絶する土地のよう」

ユカが呟く。


一日目の夜、野営地で異変が起きた。

何人かのメンバーが、悪夢にうなされ始めたのだ。

「やめて......やめて......」

レインが寝言で叫ぶ。

「レイン、しっかりして!」

ユカが肩を揺するが、目を覚まさない。

他にも、フローラ、マリア、そして何人かが同じように悪夢に囚われている。

「これは......」


セレナからの緊急通信が入った。

「皆さん、源に近づくと『悪夢の瘴気』が影響します」

「悪夢の瘴気?」

ミナが尋ねる。

「はい。眠っている間に、心の奥底にある恐怖を引き出します」

その説明の通り、悪夢に囚われたメンバーたちは、それぞれ異なる恐怖を見ているようだった。

「対処法は?」

アオイが冷静に確認する。

「起こしてあげることです。そして、温かい言葉をかけること」


8人のリーダーたちが、それぞれのメンバーを起こし、励ます。

しばらくして、全員が目を覚ました。

「ごめんなさい......」

レインが申し訳なさそうに言う。

「謝らないで」

ユカが優しく答える。

「誰だって、怖いものはあるわ」


二日目、さらに瘴気の濃度が増した。

歩くだけで体力を消耗し、ペースが落ちていく。

「このままじゃ、源に着く前に全員が倒れてしまう」

ハルが心配そうに言う。

「休憩を増やしましょう」

エマが提案する。


しかし、休憩中も瘴気は容赦なく彼女たちを蝕む。

体力だけでなく、精神的にも疲弊していく。

「本当に......私たちでできるのかな......」

ニーナが弱音を吐く。

「大丈夫よ」

リコが励ますが、その声にも疲労が滲んでいる。


二日目の夜、さらに深刻な事態が発生した。

エルネストとアルトが、高熱を出して倒れたのだ。

「瘴気中毒です」

フローラが診断する。

「長時間の曝露で、体が限界に達しています」

「治療法は?」

ミナが焦る。

「源から離れるしかありません。でも、今から戻るのも危険です」

深刻な状況。

二人を看病しながら、他のメンバーも疲弊していく。

「このままじゃ、みんな倒れてしまう......」

サキが不安そうに呟く。


三日目の朝、ついに瘴気の源が見えてきた。

地平線の彼方に、巨大な黒い渦が見える。

それは、まるで世界の傷口のようだった。

「あれが......」

全員が言葉を失う。

その規模は、想像を遥かに超えていた。

三つの関門を合わせたよりも、さらに巨大な瘴気の塊。

「こんなの......」

カノンが震える声で言う。

「本当に、私たちで浄化できるの......?」

その言葉に、誰も答えられなかった。

瘴気の源から一キロの地点で、25人は最後の野営地を設営した。

しかし、もはや誰も元気がない。

エルネストとアルトは依然として高熱のまま。

さらにケインとリアンも体調を崩し始めていた。

他のメンバーも、疲労と瘴気の影響で顔色が悪い。


「作戦を立てないと......」

ミナが地図を広げようとするが、手が震えている。

「ミナ、無理しないで」

トーマスが心配そうに言う。

「でも、私がリーダーなんだから......」

その時、突然強い瘴気の波が襲ってきた。

全員が苦しみ、何人かはその場に倒れ込む。

「みんな!」

ユカが叫ぶが、自分も膝をついてしまう。

しばらくして、瘴気の波が収まった。


しかし、その攻撃で大きな打撃を受けた。

25人のうち、10人が動けない状態になった。

「こんな......まだ戦ってもいないのに......」

ミナが悔しさで拳を握る。

残る15人も、満身創痍の状態。

「どうすれば......」

アオイですら、冷静さを失いかけている。

「このままじゃ、全滅する......」

エマが絶望的な表情を浮かべる。

その夜、動けるメンバーだけで会議が開かれた。

もはや、明るい雰囲気はない。

「正直に言うわ」

ミナが重い口を開く。

「今の私たちの状態では、あの源を浄化するのは不可能よ」

誰も反論できなかった。

「撤退を......考えるべきかもしれません」

アオイが苦渋の表情で言う。

「でも、撤退したら......」

ハルが言葉を詰まらせる。

「この世界は、永遠に瘴気に覆われたままになる」

沈黙が続く。

誰もが、答えを持っていなかった。


その時、倒れていたはずのエルネストが起き上がった。

「まだ......諦めないでください......」

高熱で顔を真っ赤にしながら、必死に訴える。

「エルネスト、無理しないで!」

ミナが駆け寄る。

「でも......僕たち、ここまで来たんです......」

エルネストの目から涙が溢れる。

「ミナさんから、リーダーシップを学びました......」

「諦めない心を、教えてもらいました......」

「だから......」


その言葉を聞いて、他の倒れていたメンバーたちも起き上がり始めた。

「私たちも......まだ戦えます......」

マリアが震える声で言う。

「みんな......」

ミナの目から涙が溢れる。

「でも、どうやって......」

リコが尋ねる。

「今の私たちの力じゃ、どう考えても足りない」

カノンも同意する。


その時、セレナからの通信が入った。

「皆さん、聞いてください」

セレナの声が、いつもと違う。

「私、古い記録で見つけました。最後の方法を」

「最後の方法?」

ミナが食いつく。

「『世界共鳴』と呼ばれる術です」

セレナが説明を始める。

「これまでの『多重共鳴』は、25人だけの力でした」

「でも、『世界共鳴』は違います」

「この世界に住む、全ての人々の想いを集めるんです」

「全ての人々......?」

ユカが驚く。

「はい。皆さんが救ってきた町や村、都市の人々」

セレナが続ける。

「その人々全員に、歌ってもらうんです」

「それぞれの土地の歌を」

「でも、どうやって?」

アオイが尋ねる。

「魔法通信網を使います」

セレナが説明する。

「王国全土に設置された通信機を通じて、皆さんの声を届けます」

「そして、人々に協力を求めるんです」

「それで、本当に勝てるの?」

ハルが不安そうに尋ねる。

「分かりません」

セレナが正直に答える。

「でも、記録によれば、過去に一度だけ成功例があります」

「それしか、方法はありません」


その言葉に、全員が顔を見合わせた。

「やりましょう」

ミナが立ち上がる。

「私たち、ここまで来たんだもの」

「最後まで、諦めない」

ユカも立ち上がる。

「そうよ。私たちには、まだできることがある」

サキも続く。

一人、また一人と立ち上がる。

倒れていたメンバーたちも、互いに支え合いながら立ち上がる。

「私たち、一人じゃない」

エマが言う。

「この世界には、私たちを信じてくれる人々がいる」

リコが続ける。

「その人たちと一緒なら、きっとできる」

カノンが締めくくる。


「明日、『世界共鳴』に挑みます」

ミナが決意を込めて宣言する。

「これが、私たちの最後の戦い」

その夜、25人は円座になって座った。

疲れ果て、傷つき、弱っている。

でも、その目には、まだ希望の光があった。

「みんな、今まで本当にありがとう」

ミナが感謝を込めて言う。

「異世界に来て、色々なことがあった」

「最初は、何もできないと思ってた」

「でも、みんなと一緒だったから、ここまで来れた」

一人一人が、想いを語る。

「私、ミナから勇気をもらった」

「僕たちは、みんなから希望をもらった」

「私たちは、絆を学んだ」

「明日、どうなるか分からない」

ユカが正直に言う。

「勝てるか、負けるか」

「生きて帰れるか、帰れないか」

その言葉に、全員が黙る。

「でも」

サキが続ける。

「後悔はしないわ」

「私たち、精一杯戦ったもの」

「そうね」

ミナが微笑む。

「だから、明日も精一杯戦いましょう」

「みんなで、一緒に」

25人は手を繋いだ。

その手は、震えている。

でも、確かに温かい。


絶望の淵に立たされながらも、彼女たちは諦めなかった。

最後の希望「世界共鳴」に賭けて、明日の決戦に臨む。

これが、本当の最終決戦の前夜だった――。

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