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第14話 「みんなで一つの家族」 〜ユカ・サキ〜

 グリーンフィールドの成功から二週間が経ち、ユカ・サキチームは既に三つの町村を解放していた。

 チームの調和は日に日に深まり、6人はまるで本当の兄妹のような絆で結ばれている。

 最後の目標地点である『ゴールデンバレー』は、東部農業地帯最大の穀倉地帯だった。

「ここが最後の村ね」

 ユカが地平線まで続く麦畑を見渡しながら言った。

 しかし、美しい金色の麦畑は黒い瘴気に覆われ、作物が枯れ始めている。

「ひどい状態ね......」

 フローラが心を痛める。

「あの麦畑、全部枯れてしまったら、近隣の町村も食料不足になってしまいます」

 レインが農家の息子として深刻な表情を見せる。


 ゴールデンバレーの瘴気は、これまで経験したものとは桁違いの規模だった。

 地平線の彼方まで続く農地全てが黒い霧に包まれている。

「これまでの町村の十倍はありそうね」

 サキが冷静に分析する。

「私たち6人で、この規模を浄化できるのかしら」

 アルトが不安そうにつぶやく。

 しかし、ニーナが明るく言った。

「大丈夫よ。私たち、もう家族でしょ?」

 その言葉に、全員の表情が和らいだ。

「そうね。私たち、いつの間にかこんなに仲良くなってたのね」

 ユカが嬉しそうに微笑む。


 その夜、ゴールデンバレーの村で宿泊した。

 村の人々は、枯れゆく農作物を見ながらも、チアダンサーたちを温かく迎えてくれた。

「あなたたちが来てくれて、本当に心強いです」

 村長が深々と頭を下げる。

「この村の麦は、近隣十の町に出荷しています。もし失えば......」

 その責任の重さに、6人は身が引き締まる思いだった。

 夕食の時間、村の子供たちがチアダンサーたちの周りに集まってきた。

「お姉ちゃんたち、本当に畑を治してくれるの?」

 小さな女の子が不安そうに尋ねる。

「もちろんよ」

 ニーナが優しく答える。

「私たち6人で力を合わせれば、きっと大丈夫」

 レインが子供の頭を撫でる。

 その光景を見て、ユカは心の底から温かい気持ちになった。


 その夜、6人は作戦会議を開いた。

「面積が広すぎて、通常の方法では聖魔法が届かない場所が出てくる」

 フローラが地図を見ながら分析する。

「分割して攻略するしかありませんね」

 アルトが提案する。

「でも、瘴気は繋がっているから、一部だけ浄化しても時間が経てば戻ってしまう」

 サキが問題点を指摘する。

「じゃあ、同時に全体を浄化するしかないのね」

 ユカが結論づける。

「でも、どうやって?」

 全員が考え込んだ。

 その時、レインがひらめいた。

「農作業では、みんなで連携して大きな畑を耕すんです」

「それって、どういうこと?」

 ユカが尋ねる。

「僕たち一人一人が、畑の異なる場所で同時にダンスをするんです」

 レインが興奮気味に説明する。

「魔法通信機を使えば、タイミングを合わせることもできるでしょう」


 翌朝、6人は作戦を実行に移した。

 ゴールデンバレーを6つの区域に分割し、それぞれが一つずつ担当する。

「みんな、準備はいい?」

 ユカが魔法通信機を通して確認する。

「こちらレイン、準備完了!」

「フローラ、大丈夫です!」

「アルト、いつでも!」

「ニーナも準備OK!」

「サキ、行けるわ!」

 全員の返事が揃った。

「それじゃあ、せーの!」


 6人が同時にダンスを始めると、6箇所から聖魔法の光が立ち上がった。

 そして、ゴールデンバレー全体に、美しい収穫歌が響き渡る。

 各地点で、それぞれのメンバーが音響水晶を通じて同じ音楽を奏でている。

 村の人々も、畑のあちこちで一緒に歌い始めた。

 何百人もの歌声が重なり合い、巨大な合唱となって大地に響く。

 最初はバラバラだった光が、次第に一つのリズムで脈動し始める。

 そして、6つの光が互いに響き合い、巨大な光の網を作り出した。

「すごい......繋がってる......」

 ユカが感動する。

 光の網は、ゴールデンバレー全体を包み込み、瘴気を隅々まで浄化していく。

 枯れかけていた麦畑が、見る見るうちに黄金色を取り戻していく。

 収穫歌のメロディは、まるで大地そのものが喜びを歌っているかのように響き続けた。


 1時間後、ゴールデンバレーの瘴気は完全に消失した。

 地平線まで続く美しい麦畑が、風に揺れている。

 6人は中央の広場で合流し、抱き合って喜んだ。

「やったね! 私たち、やり遂げたのよ!」

 サキが涙を流しながら笑う。

 村の人々が畑から駆けつけてきて、6人を囲む。

「ありがとう! 本当にありがとう!」

「君たちは、この地域の救世主だ!」

 村長が深く頭を下げる。

「これで、近隣の町村にも食料を届けられる」

 子供たちも嬉しそうに6人の周りで踊っている。


 その夜、村を挙げての祝宴が開かれた。

 6人は村人たちに囲まれながら、達成感に浸っていた。

「ねえ、みんな」

 ユカが仲間たちを見回す。

「私、最初はみんなに自分たちのやり方を押し付けようとしてた」

「でも今は、みんながいてくれて本当に良かったって思う」

 サキも続ける。

「私たち双子だけでは、絶対にこんなことはできなかった」

 レインが嬉しそうに言った。

「僕も、最初はユカとサキについていけるか不安でした」

「でも今は、本当の兄妹みたいに感じています」

 フローラが微笑む。

「私たち、最高のチームね」

 アルトが力強く宣言する。

「いえ、チームじゃない」

 ニーナが訂正する。

「私たちは家族よ」

 その言葉に、全員が深く頷いた。


 魔法通信の時間、6人は他のチームに報告した。

「みんな、東部農業地帯の全ての町村を解放したわ!」

 ユカの声は誇らしげだった。

「おめでとう!」

 ミナの声が聞こえる。

「すごいじゃない」

 カノンも祝福する。

「私たちも負けてられないわね」

 ハルの決意が伝わってくる。

 セレナの声が響いた。

「皆さん、本当にお疲れ様でした。他のチームの進捗も順調です」

「あと少しで、全てのチームが任務を完了しそうですね」

 通信を終えた後、6人は星空を見上げた。

「私たち、いつまでも一緒にいられたらいいのにね」

 サキがつぶやく。

「大丈夫よ」

 ユカが姉らしく微笑む。

「距離が離れても、私たちの絆は永遠に続くもの」

 6人の心は、一つの家族として固く結ばれていた。

 そして、その絆は時間も距離も超えて、永遠に続いていくのだった――。

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