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第二十六話

 電話の後。三谷の自宅にて。


 「女子の制服を貸してほしいって……何アンタ、女装の趣味でもあったの?」


 俺に制服を差し出しながら、三谷みたに春姫はるひは不思議そうに問うた。


 「んなわけねえだろ。ちょっと用があってな、使うんだよ」

 「使うって……それは今日のオカズとして、ってこと……?」

 「やめろ馬鹿! 変な想像すんな!」

 「でもアンタの部屋ベッドの下にあったブツはそんな感じの内容だったわよ」

 「何で覚えてんだよ! ていうかいつ見たんだよ!?」


 この前家に来た時はブツを漁られる寸前で止めておいたはず。

 俺がいない間に侵入でもしたのだろうか。

 世の中、奇妙な人間は数多くいるらしい。


 「それで? その制服、何に使うわけ?」

 「……なんでもいいだろ」


 ぶっきらぼうに言い捨てると、三谷は盛大にため息を吐いた。


 「こっちは貸してあげるのよ? 教えるくらいしてくれても良いと思うんだけど」

 「……まあそう、だよな」


 俺は今学校で起こっている現状を三谷に話した。

 当然彼女も知っていたようで、どうするのが最善策なのか考えてはいたが、なかなかアイデアまでは思い浮かばなかったという。


 「アタシだってどうにかしたいわよ……。でも、写真まで取られちゃったらもうどうしようもないじゃない……ッ」


 顔を押さえてしゃがみ込む三谷を見下ろす。

 そうだ、彼女が気にしていないはずがない。辛くないわけがないのだ。

 彼女は花野井さんの微細な変化に気が付き、その元凶である俺の自宅にまで殴り込みに来た女だ。

 きっと花野井さんをいじめた奴らを見つければ、顔面の原型がなくなるくらいにはボコボコにするだろう。


 「それで、アンタはその制服でどうするつもりなわけ? 一番聞きたい部分の説明がまだなんだけど」

 「分かってるっつーの。そう焦るなよ」


 俺はポケットを漁り、一枚の写真を三谷に見せつける。

 それは紛れもなく、今話題になっている『パパ活中の花野井さん』の写真であった。


 「見ろ。この写真では、奇跡的に花野井さんの顔は写っていない」

 「つまり……?」

 「おう。学校でこれは俺なんだと言い張ればいいってことよ」


 三谷は面食らったかのように硬直する。

 そして顎に手をあて思案すること数秒。


 「アンタ……馬鹿なの?」

 「馬鹿、だと……?」


 全く予期していなかった衝撃的な一言に戦慄せんりつする俺。

 「天才的アイデア!」だとか、「すごい! 尊敬する!」だとか……そんな感じの褒め言葉を予想していたのだが……期待外れも良いところである。


 「なんだよ、お前は何も思い浮かばなかったんだろ? まだ俺のがマシじゃねえか」

 

 三谷は呆れたようなため息を一つ。


 「はいはい、もういいわ。アンタのその案が変なのは、どうせ明日になれば分かるから」

 「はあ?」


 納得はいかなかったものの、今日の目的は達成されたから……まあ良しとしよう。

 

 三谷にお礼を言い、玄関を飛び出す。

 女生徒の制服をゲットした俺は、明日の準備のため、自宅までの道のりを全力疾走で駆けた。

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