はじまり
「よし……!!推しとのハピエン迎えられた!」
佐々木結奈、18歳が家の中でスマホと睨めっこしながらそう言った。
「はぁぁっ……!よかった!何日かかかったし、我ながら頑張ったなぁ〜!」
にこにこと笑いながら、現在午前一時なものでそのまま眠りにつく。
静まり返る部屋で、気づけるはずもなく大きな光が広がって行く。
「んん……」
少し起きそうになるも、眠りが深く起きれない結奈が、次目を覚ました時には……。
***
「どうしてできないの!?妹のソフィアはこんなこと簡単にできたわ!!」
ペシンッと扇子で叩かれる。痛々しく赤くなってしまった頬が濡れて、止まらなくなってボロボロと溢れ出す涙。
これは異世界に転生してしまった彼女結奈、いやユナの7歳の頃の姿だった。
こうして彼女は、心を深く閉ざし悪役令嬢へと道を進む。
12歳になる頃、とうとう我慢もできなくなってしまい、ユナは使用人たちに当たることが増えた。
「きゃぁっ!」
メイドの悲鳴が聞こえる。ユナが水をかけたのだ。それも、毒入りの。
だけどこれにはわけがあって、ユナは毒を入れたのではなく入れられたのだ。近頃、妹から嫌がらせを受けていた。
そしてメイドもそのことをわかって、水を運んできたのだ。
「あなた何様なの?この私を殺して、どうしたいわけ?」
ギロッとキツくメイドを睨みつける。その目は悲し見に満ちていた。
「っ……!!あ、あなたなんかいなくなってしまえばいいのに!!」
メイドはそれだけ吐き捨てて、走って部屋を出て行ってしまった。
暗い部屋に1人、しゃがみ込む。