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文学

絶縁

作者: 緋西 皐

彼女が浮気したから僕はその浮気相手と彼女を銃殺した。


今は夜道、僕は山へ車を走らせている。

二台には二つの死体、白濁と黒紅に塗れたの死体だ。

車が揺れるたびにその手は揺れ、異臭が運転席まで煽ってくる。

だが僕はそれに鼻をつまむこともしない。

むしろ、山道から見える光る街の景色に美しさを感じるほどだ。


――――車は道をなぞって進む。


僕は最初から覚悟していた。だから清々しく落ち着いている。あるいは達成感や幸福感まであるのかもしれない。


どんな人間でも欲望には勝てないと私は知っている。

餓死寸前の状態の人間ならば、目の前にある肉へ飛びつくのと同じだろう。

所詮人間は動物に過ぎず、己の欲望を完全に抑えることなどできない。

愛など恋の前には無力ということだ。


それを知って僕は彼女と付き合っていた。

いつか彼女も僕以外の誰かを好きになるという事を。


ゆえに僕は車を走らせている。

決まった道を、決まった時間に、予行通りに。

私は迷っていない。迷うことなどなかった。

無駄な時間もなかった。


――――「ああ、最高だ」


思い出す奴らの死に顔。

死に際、悲鳴、穢れた形相。

なにもかもは最高に変わり果て、醜く、そして美しかった。


私はカメラで伺い、銃を握って扉の前で奴らが一発終わるその寸前を待っていた。

その瞬間を待っていた。

もしも射精する直前に、ドアを叩き開けられ、銃口を向けられたとき、男の顔面はどんなふうになるのか。その快楽はそのまま放たれるのか。

僕は震えていた。あまりの興味と興奮で。


それは待ちに待った瞬間。

彼女と付き合う前から待っていた瞬間だった。

もともと来るかもわからないことだった。

だが来てしまった。願いは届いたのだ。


僕は彼女と付き合う前から、浮気されたらこうすることを決めていた。

銃弾はとっくの昔に込められていたのだ。


だから何も迷わなかった。

私は浮気されても、信じられなくても、何が起ころうとも、この結末を決定していた。

なにも怖くはなかった。


――――車は止まる。


さぁ、あとは埋めるだけだ。

いや、燃やしたっていい。炙ったっていい。

バラバラに切り刻んで豚の餌にでもしてやろうか。


どの処分が一番楽しい?

どうやって葬られるのが一番快楽だ?


ああ、ここは決めてなかったんだ。

ここに迷うために僕は今まで決めてきたんだ。


存分に葛藤しよう。




勢い。

完全に勢い。

つまりは勢い。


とりあえず浮気されたら、共々殺せばいい。

そう決めてたら何も不安になることはないだろうという一つの答え。


もっともこれは、だいぶサイコであるけれども。

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