第23話 紗奈先輩と植物園
朝起きると、時刻は8時になっていた。
起きてから身支度をそろえ一時間ほどで家を出発した。
9時半頃に駅に到着すると、いつもと雰囲気の違う紗奈先輩が待っていた。
「紗奈ちゃんおはよう、いつもと雰囲気違うね」
「あやちゃんおはよう、少し雰囲気変えてみたよ」
「あやちゃんはいつもの雰囲気と今日の雰囲気どっちが好き?」
「僕はどっちも好きだよ。いつもはもう少しボーイッシュな感じだよね」
「うん、そうだよ。そのほうが私に合うと思うから」
「どっちも似合ってるよ」
「ありがとう」
「それじゃあ切符買ってくるね」
僕はそう言って、一番すいている切符販売機に行って、そこで二人分の切符を購入した。
その時に誤って領収証発行ボタンを押してしまった。
すると、切符の紙と同じ用紙の紙が出てきた。
紗奈先輩のところに戻り、2枚の切符のうち1枚を紗奈先輩に渡した。
「ありがとう」
そして紗奈先輩とともに改札を抜けると、先ほどの出来事について紗奈先輩に話した。
「さっき間違って領収証のボタン押しちゃったんだ」
僕は紗奈先輩に先ほどの領収証を見せた。
「へ~こんなのが出るんだ。私、少し気になってたんだ」
すると、紗奈先輩の表情が変わった。
「これってもしかして私にお金を請求するの?」
僕は少し慌てたが、紗奈先輩に請求しないことを伝えた。
「請求するわけないじゃん。でも、この紙いる?」
「あ~よかった。せっかくだからもらおうかな?」
僕は紗奈先輩に領収証の紙を渡した。
そのあとは、植物園に行くまで紗奈先輩との会話はなかった。
植物園に着くと、紗奈先輩がこの植物園の入園料300円を払ってくれた。
そして植物園に入ると、色鮮やかなコスモスがお出迎えしてくれた。
「あやちゃんきれいだね」
「うん」
「そこのパンフレットもらおう」
「うん」
紗奈先輩と肩を組んだ状態で、近くにあったパンフレットを2部もらった。
「あやちゃん、どこか行きたいところある?」
「紗奈ちゃんのお任せのところでいいよ」
「それじゃあ、この建物に行ってみよう」
紗奈先輩がパンフレットの建物に指をさした。
「うん、行ってみよう」
そうして、紗奈先輩とその建物まで行った。
そこの少し小さな建物に入ってみると、入り口付近にはパンジーが咲いていた。
ここは、花などを展示するところだった。
そこを進むと、きれいなバラが咲いていた。
色は赤色が若干多くて、白色もあった。
次に、真ん中にある大きな建物に行くと、ドアを開けたあたりから中は暑かった。
「この部屋暑いね」
そう僕がつぶやくと、紗奈先輩が熱帯雨林館であることを教えてくれた。
この熱帯雨林館のど真ん中にとても大きな木が一本だけあった。
そこに行ってみると、トワランと書いてあった看板があった。
また、そのトワランにはたくさんの着生植物が付いていた。
僕がトワランの説明を見ていると、紗奈先輩のおなかが鳴った。
「私、おなかすいちゃった。何か食べに行かない?」
「うん」
紗奈先輩と入り口付近にあった飲食店まで行った。
そこで、二人でざるそばを食べた。
ざるそばを食べると、先ほどのトワランのところまで戻った。
そこからしばらく歩いていくと、バナナがなっていた木が何本かあった。
色はまだ緑色だった。
そこの説明文を見てみると、数週間後にここのバナナを販売することだった。価格は1本500円らしい。
「紗奈ちゃん、ここのバナナ食べてみたいと思う?」
「私はあんまり思わないけど」
「次行く?」
「うん行こう」
それからしばらくの間は紗奈先輩と今いる建物を回った。
そして、その建物を回り終わるころには夕方になっていた。
「あやちゃん、もうそろそろ帰る?」
「うん」
「その前にここのプリクラ撮ろう」
紗奈先輩と売店の前にあったプリクラで、写真を撮った。
出てきた写真のうち半分をもらい、ついでに売店に行ってお揃いのプリクラの写真を入れるファイルを購入した。
帰りの電車はすいていたので、紗奈先輩とのプリクラの写真を整理した。
「このアルバムがいっぱいになってほしいな~」
僕がそうつぶやくと、紗奈先輩は笑って「私もそう思うよ」と答えた。
「あやちゃん、来週の文化祭楽しもうね」
「うん、紗奈ちゃんはお化け役頑張ってね」
「うん。私苦手だけど頑張るよ」
しばらく話していると、降りる駅に着いた。
駅から降りて改札を抜けるあたりから僕は紗奈先輩と離れることが寂しくなった。
「紗奈ちゃん、もう少し僕と一緒にいてくれない?」
「私はいいけど、あやちゃんのお母さん心配しちゃうかもよ」
「紗奈ちゃんは文化祭どこのクラス回りたいとかあるの?」
「私はとくにはないけど、私のクラスのお化け屋敷は行きたくないな~」
「なんで行きたくないの?」
「お化け屋敷は怖いから。それに、あやちゃん以外には怖いものが苦手なこと伝えてないんだ~」
「そうだったんだ」
「文化祭のことは当日決めようね」
「うん」
「それじゃあまたね~」
「またね~」
紗奈先輩と別れると、僕はいつも通り真っ先に家に帰った。
今日の植物園のことを日記に書くと、僕は来週一週間に備えるため早めに寝た。