ぷろろーぐ
改めまして、紀桜 玲です。
つい数ヶ月前、紀州桜玲から紀桜 玲に解明しました。
猫耳少女と僕の背中あの夏へ
バイブレーション~弱味を握られたさくら~
この部屋はお兄ちゃん絶対王政だからな!
の三作を連載しており更新が停止しておりますが、今のところ続きを書く予定はありません。
誠に勝手ながら、新しいお話を書きたくなり、意欲が薄れました。そんな感じで無理やり完結させるぐらいなら、また際熱したときにしっかりと書き上げたいと思いますので期待せず、新作を楽しみにお読みください。
それでは、どうぞ!
「伊波さん、聞いてます?」
「・・・・・・」
「いーなーみーさん」
僕の腰にツンっと細いものが当たった。反動で腰をクイッとくの字に曲げてしまう。
「ちょっ、いやだから、ツンツンしないでよ」
「ツンツンじゃないです。ツンです」
いや、一緒だから。回数の問題じゃないんだよな。
ついついボソッと口から溢れ出てしまった。
僕の隣にいるのは後輩の初瀬。図書委員会が一緒になってからよく話しかけてくる。僕がよくボーッとしているらしく、気づいてもらうために、腰なり背中なりお腹なりを指先でツンツンして気づいてもらうんです。ってこの前言ってたけど、やめて欲しいものだ。
ピクッとする。
「暇そうです」
「昼休みなんてすることないって」
僕は昼休み、だいたい教室のベランダからグラウンドを眺めている。意味は無い。初瀬の言うように暇なだけだ。
季節は春。ポカポカと暖かい。
「図書委員なのに、読書しないんですね」
「残り物が当たっただけだし」
「残り物は当たりって言わないです」
それもそうか。
「私とは出会えましたけど」
「なに言ってんだよ。昼休み終わっちゃうぞ」
「残り物には福があるってーー」
そこまで聞いたところでチャイムが校内に鳴り響いた。ハッとした表情をした初瀬は肩をピクッと震わせて走って行った。肩にかかる程の長さのポニーテールをなびかせて。
「走ったら危ないって」
一年生の教室は三階にある。この教室の上だ。何組かは知らないから真上とは限らないけど。どうしてだろう。例えば、家にいて一階と二階の位置関係ならドキドキしてしまうのに、学校だとそれがない。不特定多数の人たちがいるからだとは思うけど。
腕を組んでベランダの手すりにもたれかかっていた僕はゆっくりと自分の席へと歩き出す。