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苦手な方はご注意ください。

エッセイ・その他(フィクションとは言えないもの)

書くということ

作者: 瑞月風花


最近、どうして私は書いているのだろうと思うことがたくさんありました。誰かに読んで欲しいから、読まれたいからはもちろんあります。だけど、読まれたいからだけでは書けなくなるのです。

読まれたいけど、読まれないことが多くあるのですから。

だけど、とある方の活動報告の内容から思い出したことがありました。


そうだ、私が書く理由って日常をまもりたいからだった。


そう書くととてもとても大げさなことになるのかもしれません。だけど、そうなのです。書くことで答えが欲しかったというところもあります。


私はいわゆる『主人公』を描くのが苦手です。おそらく、ジャンル問わず。もちろん苦手ジャンルもありますが、どちらかといえば、どんなジャンルでも端役の普通の人生を平坦に書き連ねる方が得意です。だから、ホラーではそんな日常がふとした瞬間に奪われるような地味な世界を書きます。ファンタジーではより強い力を持つキャラクターに、むやみにその力を振りかざさないように、後悔させたり、思い悩ませたり、その力について考えさせます。


その中でもいつも思い入れだけで書いていると言い続けている長編があります。

だから、そのお話もワクワクするようなものではありません。人に面白いから読んでねと大声で言うつもりもありません。


だけど、そのお話を書こうと本腰を入れたきっかけが2001.9.11でした。それまでは設定だけでなんとなくRPG風のお話、と頭の中で動かしていただけだったのですが、その出来事がきっかけで方向性が決まりました。

「正しいこととはいったい何なのか」

アメリカ同時多発テロ事件は私にそんな感情を植え付けました。


『9.11』それをリアルタイムでご存じではない方も増えてきていると思います。私だってテレビで見ただけで体験したわけではありません。だけど、恋愛ドラマを見ていて、ふと差し込まれたその映像を見て、理解が追いつかず「何のCM?」と思ったあの衝撃が未だに忘れられないのです。


とても高いビルに飛行機が突っ込んだ映像。白い煙を上げるビルの崩壊した壁のみが映し出され、沈黙を保ち続けるのです。


アナウンサーにもおそらく情報は入っていなかったのでしょう。何が起きているのか理解できていなかったのでしょう。

しかし、しばらくすると、音声が続くのです。

『ワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだ』と。『中の状況は分かりません』と。

分からずのまま、やはりその映像だけが流れます。


するともう一方のビルにも飛行機が突っ込んだのです。

ハイジャックが二機も続けて起きたなんて考えられません。二機も続けて同じ場所で事故を起こしたなんて、さらに考えられません。


繰り返すだけの音声が状況の逼迫を伝えます。日常が突然奪われるとはきっとこういう状態のことを指すのでしょう。


しばらくは崩れないと言っていたのに、まるでドミノが一瞬で倒れてしまうように、土砂崩れが内部から起きていくかのようにして崩壊が始まりました。


中にいる人はどうなったの? 崩れないと言っていたのだから、救助を待っていた人だっていたことでしょう。自力で逃げることができない重傷者もたくさんいたはずです。

それらをすべて、崩壊したビルが呑み込みました。


情報は全く入ってきません。


振り返れば悲しくなるのです。様々な人の日常を奪ってしまったそのテロ行為。

だけど、おそらく生存本能からなのか、悲しいという感情よりも、情報が欲しいと思うのです。チャンネルを回します。誰か嘘だと言って、そんな気持ちにすらさせられていたのかもしれません。それなのに、各局同じ映像が流れるのです。


誰か、一放送局が流したドッキリだと言って。


いったい何が起きたの?


私は、今、これからも、安全に暮らせるの? 

こんなむごいことをさせるなんて神様なんていないんだ、と思いました。



いつどこで誰に何が起こるか分からないのが『未来』です。

だけど、私たち人間の未来を変えることができるのだとすれば、私たち人間だけなのです。

そして、気付いた時には遅いのです。未来はすぐに過去になってしまうものなのですから。


今も、突然日常が奪われてしまった国や都市がいくつもあります。大きく新聞に取り上げられていたり、情報通のコメンテーターが意見を交わしていたりしています。

もしかしたら、またあの信じられない光景が突然テレビに差し込まれるかも知れません。

どのチャンネルを回しても情報が入ってくるまでのタイムラグがあり、同じ映像しか流れないことがあるかもしれません。映像の奥にある慌てふためく雰囲気だけが伝わって来るかも知れません。


「一放送局のドッキリであって欲しい」

そんな映像が人の手によって多く生み出されてしまう現実。

「質の悪い映像だよね」

で済まされないのです。


神様なんていないんだ。

もしかしたら、そんな風に思ってしまう人たちが今もたくさんいるかもしれません。


神様は私たちに争いをさせようとこの世に存在させているのでしょうか?

それとも生存本能から私たちは争うのでしょうか?


生存本能からであるのならば、誰もが生きたいのです。

正しいこととは、いったい何なのでしょうか? 


どうか。

いないと思った神様に祈りたくなるのです。


どうか、日常が平穏に過ぎていきますようにと。

苦しいこと、悲しいことがあっても、何にもない平坦であり続けるだけの日常だけは奪われませんようにと。それぞれが生きるための自由を他者の暴力によって奪われませんようにと。


だから、私は平凡な誰かの日常を書きたいと思うのかもしれません。それは現実世界であれ、異世界であれ、同じです。

何にもできない、つまらないと思われるかもしれない誰かの人生だったかもしれないもの。

だけど、彼、彼女にとっては唯一無二の取り替えの利かない一度きりの人生を。

誰かの私欲のために奪われたくないのです。大切にしたいし、大切にして欲しいのです。


力とはなんなのか。

正しいこととは何なのか。

奪われているものはなんなのか。

千差万別の答えがあるはずです。

一人にとってはその答えが命を削ることになるかもしれません。

だから、安易に答えは出せません。政治がらみの難しいことも分かりません。

だけど、自分の大切にする答えだけは、曲げないようにしていきたいのです。


「それは間違っている」


どれだけ正論を翳そうとも、独りよがりで人の道をはずれている道理が通らないそれは、間違っているのです。




作者が本当に個人目線で叫んでいる大きなひとりごとです。

感想をいただいても、ここに書かれていること以外は返信できませんので、感想欄は閉じています。

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