第1話 召喚直後にディスられました
第1話 召喚直後にディスられました
おかしな話しだ。俺、笹原一夜16歳はいつも通り高校から家に帰ろうとしていただけなのに、いつの間にか知らない場所にいた。広い部屋に高い天井、周りには鎧を来ている人達がたくさんいる。そして、俺の目の前には大きな椅子にどっしりと座っている太ったおじさんがいた。
「(ああ、これ異世界召喚というやつだろうか)」
アニメや漫画を見すぎたせいだろうか、状況の把握は出来ていた。
太ったおじさんは、最初はキリッとした顔をしていたが俺を少し見た後、ガッカリした表情をみせた。
「まさか、こんな冴えない奴がこの国を救う勇者なのか?」
「(何で、知らないおっさんにいきなりディスられなきゃいけないんだ?)」
俺は、少しムカッとしたが表情には出さないようにした。
おっさんの隣にいた少し細めの体をした歳を取った男性が話しかけていた。
「はい、王様。召喚の儀式により異世界から召喚された彼がこの国を救う勇者でございます」
「はあ~~~、そうか。異世界から来ると聞いて美女でも来てくれるのでは無いかと思っていたが、とんだ期待外れだったな」
「あの~、すみません」
「ん? 何だ?」
「俺は、どうしてここにいるのか聞いても良いでしょうか?」
「ああ、失礼した。実は、君に頼みたいことが・・・」
王様の隣にいた男性が、俺の方を向いて説明をしてくれようとした時、途中で王様が手を挙げてそれを止めた。
「どうなさいましたか?」
「わし、こいつの事何か嫌いだから帰って貰え」
「(はあっ?)」
俺は心の中でキレた。
王様の発言に男性も慌てている。
「しかし、今召喚したばかりで元の世界に戻そうにも魔力が足りません」
「(マジかよ)」
「それじゃあ、他の勇者を召喚することは出来ないと言うのか!?」
「この方をお返しになった後にもう一度となると、早くても1年は掛かるかと」
「何ぃ? ん? あいつを返さなかったら次の召喚はいつ頃になる?」
「はい? そうですね、召喚は元の世界に戻すよりも必要な魔力が少ないので3ヶ月あれば準備出来るかと」
その話しを聞いた王様は、ニヤリと笑うと俺の方を指差してこう言った。
「そいつは、元の世界に返さず何処か遠くの僻地にでも飛ばしてしまえ」
「(はあああ!? ふざけんな!?)」
「し、しかし、我々の勝手な理由で彼を召喚したのです。元の世界に戻してあげなくては」
「(そうだ、そうだ、勝手に召喚したのはそっちだろうが)」
「ふん、なら勇者なんて召喚して無かったことにすれば良い」
「し、しかし」
「何だ? 私に逆らうのか?」
「い、いえ・・・」
「他の奴らも分かったな?」
王様は、その場にいた全員に向かって言った。ほとんどの人達が下を向き、沈黙が流れた。
「よし、それじゃあそいつを早く何処かに飛ばしてくれ。見ているだけで気分が悪くなってくる」
王様の隣にいた男性がゆっくりと俺に近づき、何かブツブツと言い始めた。すると、下に何か光った円が出て来た。魔方陣とかいうものだろうか。
男性が何か言い終わったかと思うと、俺は光に包まれた。最後に男性が「申し訳無い」と言った気がした。