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事件

「これから、各クラスにて臨時ホームルームを行います」


 放課後になって皆が帰ろうとした矢先、学校内の放送でそう流れた。


「臨時ホームルーム?」

「何、せっかく帰ろうと思ったのに」


 御樹のクラスは騒然としていたが、他のクラスも似たようなものだろう。


「なんだろうね、御樹」

「全くわかりませんが、何かあったのでしょうか」


 急なことだったこともあり、御樹と佳奈も互いに顔を見合わせていた。

 そうこうしているうちに、担任が入ってきた。


「全員、席につけ。さっき放送であったが、これから臨時ホームルームを行う」


 担任の言葉で騒然としていた教室は静かになり、席を離れていた生徒達は席についた。


「つい最近のことだが、市内の高校生が変死体で発見された。死因はショック死なようだが、不自然な部分も多いらしい。類似の事件が数件起こっていることから、これは同一犯による犯行である可能性もある」


 担任がそう言うのを聞いて、御樹は砕下が関わっているのではないか、と推測していた。砕下に生命力を吸われた場合、それが原因で死んでも外傷はほとんど残らない。ある程度抵抗すれば話は違ってくるかもしれないが、そもそも一般人が相手なら砕下に抵抗するまでもなく殺されてしまうだろう。


「犯人がまだ捕まっていないことから、同じような犯行が起こることは否定できない。よって、しばらくの間は課外活動等は禁止とし、授業が終わったら即帰るように。他には、できるだけ単独で行動することは避ける事。以上だ」


 担任はそれだけ言うと、教室から出ていった。

 

「そんなことがあったなんて」

「ニュースでやってたよ。見てないの」


 担任がいなくなると、再び教室が騒然とする。

 そんな周囲を気にすることなく、御樹はスマホで事件について検索していた。


「御樹、何調べてるの」


 普段学校でスマホを使うことがない御樹がスマホを使っているのを見て、佳奈が興味ありあり、というように声をかける。


「いえ、事件について気になりましたので」

「でも、こんな田舎の事件がネットに載ってるかな」

「地元警察のホームページを検索すれば、掲載されているかと」

「あ、そっか。御樹って頭いいね」


 佳奈とやり取りしながらも、御樹は地元警察のホームページにたどり着く。最近の事件一覧を見ると、例の殺人事件が掲載されていた。


「うわ、結構あちこちバラバラな場所で起こってるじゃん。犯人が何考えてるのかわかんないね」


 佳奈は御樹のスマホを覗き込んでそう言った。


「そうですね。これは、余計な外出は避けた方が良さそうですね」


 口ではそう言ったものの、御樹はこの事件に砕下が関わっているか調べるつもりだった。事件のあった場所に行けば、何かしらの痕跡があるかもしれないと考えていた。


「そうだね。わたしも遊びに行くのは控えようかな」

「それが良いと思います」


 佳奈は結構遊び歩いているようだったから、砕下が関わっていたら襲われる可能性も高い。そう言ってくれたことに、御樹は内心で安堵していた。


「じゃ、御樹。一人だと危ないから一緒に帰ろうか」

「……そうですね」


 御樹は学校帰りにでも事件のあった場所へ向かうつもりだった。最初は佳奈の申し出を断ろうと思ったが、これといった言い訳が思い当たらなかったこともあって、結局はそれを受け入れた。



「あ、宮瀬さんからメールですね。えっと、倉島君とは仲直りできたかな、ですか……あれも、見る人からすれば喧嘩に見えたのでしょうか」


 高宮の家に帰って自分の部屋に着くと同時に、閑斗からメールが来ていた。御樹としては、千佳子とはすれ違いがあっただけで、喧嘩とまでは思っていただけにこのメールは意外だった。


「千佳ちゃんも、スマホ持っていましたよね。うん、千佳ちゃんにも一緒に来てもらいましょう」


 御樹は千佳子に電話をかける。

 閑斗からのメールがなければ、千佳子に連絡をするということは思いつかなかった。そういった意味でも、御樹は閑斗に感謝していた。


「もしもし、どうしたの、御樹さん」

「あ、千佳ちゃん。今大丈夫ですか」

「特に問題ないよ」

「千佳ちゃん、最近あった連続殺人事件、知っていますか」

「うん、今日学校で先生に言われたから」

「砕下が関わっていると、思いませんか」


 御樹がそう言うと、電話の向こうで千佳子が息を呑む音が聞こえた。


「確かに、そうだね」

「ですから、この事件に砕下が関わっているかどうか、調べようと思います。一緒に来てくれませんか」

「もちろんだよ」

「では、最初の事件が長坂橋の近くで起こっています。そこで待ち合わせということで」

「わかった」


 千佳子の返事を聞いて、御樹は電話を切った。

 もしかしたら砕下と戦うことになるかもしれないから、できるだけ戦いやすい服装を選び、余計な物は持っていかないことにする。

 準備を終えると、御樹は待ち合わせの場所へと向かった。


「千佳ちゃん、待たせてしまいましたか」


 待ち合わせの場所に行くと、千佳子が先に待っていた。


「わたしの家の方が近いから」


 千佳子は小さく首を振った。


「それでも、待たせてしまったことには変わりません」

「だから、いいって。それよりも早く調査しようよ」

「そうですね」


 千佳子に促されて、御樹は頷いた。確かにここでこんなやり取りをしているくらいなら、さっさと調査を始めた方がいい。


「ここで、事件が起こったようですが……」


 御樹はスマホ片手に事件があったであろう場所に当たりをつけた。

 周囲を見渡してみるが、砕下が関わっていたような証拠は見つからなかった。


「千佳ちゃん、何かわかりますか」

「ちょっとわからないね」


 千佳子に意見を求めたが、千佳子もまた何もわからないようだった。


「遺体を見ることができれば、砕下が関わっていたかどうかわかるのですが」

「でも、死んじゃった人は、ほとんど抵抗してなかったんだよね。砕下が関わっている可能性は、高いんじゃないかな」

「そうですね」


 御樹は顎に手を当てて考え込んだ。ここで得られる情報はなさそうだから、次の場所に行くべきか、それとももう少しここを調べるか思案する。


「あれ、こんな所でどうしたんだい、二人とも」


 思案する御樹の背後から、そう声がした。


「宮瀬さん?」


 振り返ると、閑斗がそこに立っていた。学校帰りなのか制服のままだ。


「もしかして、例の事件に砕下が関わっていると踏んだのかな」


 閑斗は相変わらずの態度で、二人にそう言った。

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