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鳴滝京香の御佐機講座4

零式精霊機二号乙二型

所属:魅乗り

魔導士:白瀬智美(沼御前)、夏目梨子(毛倡妓)、高城ゆらり(文車妖妃)

武装:九九式二〇粍二号機関銃四型

発動機:雅二一型(遠心式スーパーチャージャー1段2速)

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 3  3   3   2   5    2   2


 緒戦こそ圧倒的な空戦性能で太平洋を制してきた零精であったが、大戦後期になると英米の新型精霊機に対し性能面での劣勢は明らかだった。市ヶ谷機関および海軍もこれについては承知しており、防弾、消火装置の追加が望まれるようになった。

 本機は二号零精の頃と比べると、翼端が丸く成形され、補助翼バランスタブが復活。発動機の排気管が推力式単排気管となり、瑞配タンクに自動消火装置を装備。主翼の強度が増し、急降下制限速度が上昇。零精の弱点の一つとされた制限速度の低さは最早解消され、英米精霊機と大して変わらないものとなった。加えて機体出力も向上し、零精としては初めて背面に装甲板が追加される、といった、様々な改良が行われている。本機が停戦時点では零精として最新型だった。

 ただし、重量が増した分自慢の旋回性が落ちたのは事実であり、ベテラン魔道士の間では低い評価を与える声も存在した。その一方で割合を増していた新米魔道士にとって生存性の向上は喜ばしいことであり、一刻も早い配備を望む声も多かった。

 新型機の開発が遅れているという現実の中で既存の機体に施す改良としては、妥当なものだと言えるだろう。




零式精霊機五号

所属:大日本帝国空軍(民間出向)

魔導士:鳴滝京香

武装:九九式二〇粍二号機関銃四型

発動機:距星一二型(遠心式スーパーチャージャー1段2速)

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 3  5   4   2   5    3   3


 二号零精の発動機をより大型高出力なものに換装した機体だ。見た目上の大きな違いは、発動機の大型化で、それに合わせて発動機マウントも大きくなっている。また、重心バランスを取るため背が少し伸びているほか、正面装甲が多少増厚された。

 重量と空気抵抗が増したため最高速度はさして伸びなかったが、空戦エネルギーの回復力は大きく向上している。

 もともと市ヶ谷機関および海軍は零精の更なる性能向上型として発動機を水メタノール噴射装置付きの雅三一型に換装した型を本命視しており、三号零精と呼んで開発を進めていた。しかし水メタノール噴射装置は海軍の技術者から「調整が困難かつ効果がほとんど認められないどころか性能低下の一因ともなり、稼働率の低下は確実である」と酷評され、採用は見送られてしまう。新型機投入が遅れることを危惧した市ヶ谷機関は雅三一型から水メタノール噴射装置を撤去した発動機を積んだ試作機に四号零精の名を与えたが、二号零精からさして性能が向上しないことからこれも採用はされなかった。

 一方発動機そのものをより大型大出力のものに変更するというプランも存在し、こちらは五号零精の名で開発が進められていた。五号零精は四三年半ばの段階で構想は存在していたが、排気量が増えることによる航続距離の低下を嫌った海軍が三号を本命視していたため、半ば放置されていた(距星の開発がまだ終わってないことも問題視された)。

 空軍発足時点で零精は旧式機という扱いに移りつつあったが、日本の精霊機の中で最も大規模に生産ラインが組まれている零精の生産をすぐさまやめるというわけにはいかず、かといって二号零精の性能は陳腐化してしまっていたため、性能向上型の生産が望まれた。

 この時点で三号零精と五号零精が比較検討されることとなったが、同時期に雅の生産ラインを奉に順次転換していくことが決定していたこともあり、五号零精が正式採用される運びとなった。また、次に戦争になるとすればそれは本土決戦に他ならないため、航続距離の低下は問題とはされなかった。

 五号零精は四四年春に初飛行し、試作機のうちの一機が民間に出向した私に渡された。私を含めテストに参加した魔導士はその性能を良好と評価し、五号零精は二号零精丙型と並んで量産が続けられている。




一式精霊機隼三号甲型

所属:魅乗り

魔導士:宮本朱里(夜行)

武装:一式十二・七粍機関銃

発動機:雅三二型(遠心式スーパーチャージャー一段二速)

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 3  4   4   5   5    1   2


 二号隼の発動機を水メタノール噴射装置付きの雅三二型に変更した機体だ。零精と異なり隼で水メタノール噴射装置が採用された理由は、陸軍の技術陣は水メタノール噴射装置の重要性を理解していたからだと言われている。

 改良の変遷としては、二号一型でプロペラを三翅へ、両主翼を三〇センチ短くしつつ強化。甲一型で背面に装甲板が追加され、乙型で推力式単排気管を採用。続いて本機に至る。

 もともとの高い旋回性、横転性に加えて最高速度、加速力が増した本機を後継の疾風より優れていると評価するベテラン魔道士も少なくない。

 一方で水メタノール噴射装置の不具合や整備兵の不慣れにより稼働率は低下しているが、飛燕や実戦投入当初の疾風よりは数段信頼性は高かった。

 因みに甲型となっているのは機体出力を強化した乙型が存在するからだ。ただし空軍発足後、隼の生産ラインは疾風へ全転換することが決まったため、乙型は試作のみで終わったらしい。よって隼は本機が最終生産型となる。

 優れた後継機に適切な時期にバトンタッチできた隼の名声は永遠に色褪せることはないだろう。




荒脛巾

所属:魅乗り

魔導士:篝時也(夜叉)

武装:九九式二〇粍二号連装機関銃

発動機:奉四二型(遠心式スーパーチャージャー2段3速)

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 4  4   3   4   3    6   4


 本機はいくつか作られた次期主力制空精霊機の試作機の一つだろう。

 統一空軍では次期主力制空精霊機として疾風を一回り大型化して航続時間を延長し、ターボチャージャー付きの発動機を装備した『試製天斬』の開発を進めていた。

 しかしターボチャージャーの量産化については依然として困難な課題が残っており、次善策として多段機械過給機を装備した新型制空精霊機も開発することとなったそうだ。

 また、試製天斬は設計段階から翼面荷重が日本の精霊機としては類を見ないほど高くなることがわかっていたため、本機は試製天斬よりも加速力と旋回性に重きを置いて設計されたらしい。

 空戦性能を重視するということで発動機は軽量細身の奉が選ばれたが、開発方針としては

①紫電の発動機を換装し、機体に多少の変更を施す。

②所定の発動機出力が得られる事を前提とした機体を新規開発する。

 の二通りが考えられた。この機体はプラン②の試作というわけだな。

 装備している奉四二型は二段三速過給機のおかげで高高度でも全開運転が可能であり、式神故に不具合もなく機能している。

 さらに高速域での旋回率はかなり高く、高速旋回を得意としているなど式神ならではの高性能機となっている。

 ただし、もし本機を量産化したならば過給機周りの品質問題が生じる事は間違いないだろう。


みなもの補足

 『荒脛巾』は一般に旅の神とされているわ。脛巾はばきというのは脚に巻く脚絆のことで、これを社につけることで旅行の無事を祈る信仰が東北地方にはあるの。現代では代わりに靴を奉納することも多いわね。

 使い古した靴を奉納し、お焚き上げをすることで、次の旅の安全を祈願するというわけ。

 そこから転じて、村の守り神として位置づけて、お祀りしてある神社もあるわ。

 東北地方一帯で広く信仰される大名物で、一般の出の魔導士が持てるとは思えない。正直どっかから盗んできたんじゃないかしら。

※評価方法は下記の通り。

速度は高度六千メートルにおける『水平速度』。

加速力は『機体重量/発動機最大出力』。

上昇力は高度六千メートルまでの『到達所要時間』。

横転性は時速三五〇〜六〇〇キロメートルでの平均値。

旋回性は翼面荷重。(旋回所要時間ではない)

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