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鳴滝京香の御佐機講座2

零式精精霊機二号

所属:魅乗り

魔導士:朝倉隆一(野衾)

発動機:雅二一型(遠心式スーパーチャージャー1段2速)

武装:九九式二十粍一号機関銃三型

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 3  4   3   3   6    2   1


 本機は零精初の本格性能向上型だ。

 海軍と市ヶ谷機関も一号零精の弱点が高速域での横転性の悪さと制限速度の遅さ。そして高度四千メートル以降での性能低下にあることは承知しており、発動機出力を強化し、過給機を一段二速に変更。更には翼端を切り落とし、横転性能と速度の向上を図っている。加えて制限速度も時速七〇〇キロメートル弱まで向上した。

 なお、元々過剰といえた旋回性能は低下しているが、英米の御佐機に比べて圧倒的な点は変わりなく、零精の長所はそのままに弱点を補強したバランスの良い改良と言えるだろう。

 私もこの機体に憑依して戦ったことがあるが、高速域の横転性改善と突っ込みの良さは逃げる敵機を追うのに確実に有利だった。

 以上のように優れた性能を持っていた本機だが、知名度はあまり高くない。というのも、本機が実戦投入されてから数か月後に、日本軍はソロモン諸島からの撤退を決めてしまう。

 その後の一年程度の小康状態の間に零精の主力は、主翼端が円形に整形され、推力式単排気管を装備した甲型に切り替わっており、活躍した事例が少ないからだ。

 もっともこいつが活躍しているということはソロモン諸島で果てしない消耗戦をしていたということだから、そう考えると喜ばしいことだ。




一式精霊機隼一号

所属:魅乗り

魔導士:綿谷千利(阿久良)

発動機:雅一二型(遠心式スーパーチャージャー1段1速)

武装:一式十二・七粍機関銃

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 2  3   3   5   6    1   1


 大戦を通じて陸軍主力精霊機の座にあった隼。本機はその初期型だ。生産開始が零精より遅く、開戦当初十分な数が揃っていなかったところから零精の陰に隠れがちだが、零精と同一の発動機を積んでいながら零精よりも機体が小さく軽いため、加速力に加えて実は旋回性も一号零精より優れているなど、何ら遜色のない傑作機だ。

 見た目上の特徴として、肩幅は零精と同じだが、胴回りは細く絞られている。そのため逆三角形な体型であり、その細い胴回りはいささか頼りなく感じる。実際に機体出力は零精に劣ってしまっており、その細さは改良による機体出力の強化も難しくしてしまったようだ。

 また、翼の前縁が左右一直線のテーパー翼であり、ともすると前進翼のような印象を受ける。

 開発開始は三七年末。陸軍は同年に正式採用された九七式精霊機の後継機の開発を市ヶ谷機関に命じた。試作機は早くも翌年には飛行しているが、性能が不十分として不採用となる。

 その後発動機を雅に変更し、機体各所に改修を施した機体が一式精霊機として正式採用された。なお『隼』という名は日本の精霊機に初めてつけられた愛称であり、当初は愛称に過ぎなかった。しかし陸海軍向けに新型機を開発していくにあたって同じ年に複数の精霊機が採用される可能性は高く、その場合従来の命名方法ではややこしくなるため、市ヶ谷機関は四三年以降に採用した精霊機には全て正式名称をつけることに決め、それに合わせて隼も正式名称に格上げされている。

 本機は開戦と同時に実戦投入され、敵御佐機を圧倒。冠絶たる性能を発揮した。

 なお、実は本機は開戦に間に合わせるため、所定の機体出力が発揮できていない状態にも関わらず正式採用前に量産が命じられている。加えて当時は一式十二・七粍機関銃の信頼性も疑問視されており、最初期の量産型は八九式七・七粍機関銃を装備していた。

 そのため一号隼は機体出力の強化を通じて甲、乙、丙型の三種類が存在し、それに則れば本機は一号丙型となるのだが、甲、乙型は生産数が極少なく丙型への転換は前線でも容易に行えるうえ、そもそも丙型が一号隼としてはあるべき姿なのでこの分類は便宜上のものとされた。したがって本機をわざわざ丙型と呼ぶ人間は基本的にいない。

 四三年中には二号隼に置き換えられ、一号隼は訓練機として活用されたようだ。




御赤口

所属:魅乗り

魔導士:田村香澄(大獄丸)

武装:九九式二十粍二号機関銃四型

発動機:水天一一型(遠心式スーパーチャージャー1段流体継手式無段階変速)×2

速度 加速力 上昇力 横転性 旋回性 機体出力 耐久性

 5  5   4   3   3    4   2


 日本の御佐機には珍しい液冷発動機を搭載、それも二つをダンデム配置しているという異色の機体だ。

 手っ取り早く発動機出力を強化できるということで発動機のダンデム配置は各国で研究されていたが、日本も例外ではなく、冷却面で有利な液冷発動機が採用されたそうだ。

 そもそも高速化に有利な液冷発動機だが、本機は発動機を二つ積むだけでなくそれぞれを逆回転させて二重反転プロペラを実現し、更には翼面蒸気冷却方式を採用している。

 翼面蒸気冷却とは翼そのものをラジエーターにしてしまうことで、機体に余計な出っ張りを作らず空気抵抗を減らすという試みだ。

 ここまで述べればわかるように、本機は徹底的に高速性を追求して開発されている。その甲斐あって、本機の速度性能は他のレシプロ御佐機の追従を許さない。

 機体は重いが発動機を二つ積んでいるだけあって、加速力も上昇力も十分にある点も見逃せないな。

 一方でその特異な構成がそのまま弱点にもなっている。

 被弾に弱い液冷発動機が背面に二つ並んでおり、被弾即出力低下の図式が成り立つ。発動機に被弾するならまだいい方で、主翼に被弾して翼端を失おうものなら一挙に冷却能力を喪失して発動機がオーバーヒートするだろう。

 本機は構造が複雑すぎて量産できるような御佐機ではなかったが、そもそも本機は次世代精霊機の試作機というより、新技術の試験機という目的で作られたのかもしれない。

 このように新技術がふんだんに盛り込まれた本機だが、何度目かの飛行試験中に発動機から火災が発生したため緊急着陸し、脚部はおろか胴体まで損傷してしまったそうだ。したがってその修理をする必要が生じたわけだが、どうせなら発動機もより高出力のものに交換しようということになり、機体を改設計したあと長い間放置されていたらしい。

 その後出力を強化した発動機は制作されたそうだが、それを積んで試験飛行したという記録はない。開発は中止されてしまったのだろうか。




みなもの補足

 御赤口ミシャグジとは諏訪地方の賽の神、境界の神ね。中部・関東地方でも祀られている大名物よ。

 守矢一族が代々使役してきた式神で、守矢一族の家宝でもある。

 は尊称だから、本当の名前は『赤口しゃくじ』。眷属が蛇であったことからこの字が当てられたそうね。

 境界の神であっただけに、当初は石や樹木を依代とする神だったらしいわね。当然、磐座信仰とも関りが深いわ。

 諏訪地方では今でも祠が点在しているし、どんな小さな祠にも御柱が立っている。そういったところには小袋石も祀られていたりして、いかに高名な土着神であるかがうかがい知れるわね。

※評価方法は下記の通り。

・速度は高度六千メートルにおける『水平速度』。

・加速力は『機体重量/発動機出力(最大・離昇)』。

・上昇力は高度六千メートルまでの『到達所要時間』。

・横転性は時速三五〇〜六〇〇キロメートルでの平均値。

・旋回性は翼面荷重。(旋回所要時間ではない)

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