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5 魔界王の異能

 自身あり気に腕を鳴らすならず者たち。リリィは息を呑んで杖を握りなおした。


「覚悟しろよ」


 ならず者の一人がそう言うと、足を踏み出して俺たちに近づいて来る。

 俺もため息をついて、その男と同様に歩き出した。


「身の程知らずめ」


 一歩踏み込んだ瞬間、俺は急加速をして踏み出してきた男の懐に入り込む。

 その異能の名は『魔界王の迅速サスペンション・オブ・モナーク』。世界の時間の流れがスローモーションに見える中で、俺だけが通常よりも速いスピードで動くことができた。


 時間を置き去りにする機動力。そこから放たれる拳は軽く振っただけでも嵐を吹き飛ばす。


 俺は拳で奴の顎を下からたたき上げ、そのまま空へとぶっ飛ばした。その時点で異能の効果は切れ、世界は加速する。


「なっ……!」


 時の流れが戻った世界で、ならず者たちがどよめいた。俺はすかさず新たな異能『魔界王の威光プレステイジ・オブ・モナーク』を使い、ならず者の一人を前へ向けた腕に引き寄せる。


 運悪く選ばれてしまった男を俺は手元に引き寄せると、右手でがっしりと首を掴んだ。そして気絶しない程度の微弱な電気系魔法を放ち、男を麻痺させて行動を制する。


 残しておくのはこの男だけで良い。そう判断した俺は左腕を残りのならず者たちに向けて振り下ろした。一拍遅れて、轟音を伴いながらレンガを砕くほどの突風を生み出した。


 耐えることもできず、ならず者たちは紙切れのように吹き飛んでいく。ある者は住宅の窓にぶつかり、ある物は壁に練りこみ、ほとんどは見えないところへ飛ばされていった。


 それまで全くの飾りと化していたリリィが、その光景を見て、瞳をぱりくちと瞬かせる。それからぶるぶると首を振ると、俺の隣まで駆け寄った。突風は街中に溶けて消えた。


「貴方、何者?」


「俺は魔王」


 俺は即答すると右手に掴んだ男をそのまま地面に叩きつける。そして問うた。


「貴様の雇い主はどこにいる?」


「う……。し、知ってるだろ……ヘレスト・マーヴィンだ」


「誰ではない。どこか、と聞いたのだがな」


 俺はそうぼやくと、隣で未だに状況が飲み込めていないリリィを見た。


「ハーヴィンとやらの城は知っているか?」


「城って……お屋敷なら知ってますけど……」


 リリィは動揺しつつも俺の問いに答える。

 それが分かればこの男に用はない。首根っこを掴んだ手を離すと、歩き出した。リリィはぼっとその様子を見ていたが、意識をはっきりさせると慌てて俺の後を追う。


 その瞬間に、一番最初に空へぶっ飛ばしたならず者がようやく落下してきた。それが丁度、俺が最後まで残した男の真上に振ってきて、ぐしゃりと心地の良い音を鳴らして赤い内臓が飛び出て破裂する。


 リリィが俺に追いつくと、俺は隣にいる彼女に言った。


「こういうのは元を絶たねばならん。案内を頼みたい」


「は、はいっ……!」


 リリィはうなずくと、俺は彼女と一緒にその場を後にした。

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