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4 危険なやつら

 俺は悠々と足を組んだ。うるさい砂利も遠くに飛ばしたし、後は俺の酒を待つだけだ。


 いや、よくよく考えてみたら俺の酒じゃないや。


「あ、あの……」


 リリィは酒で濡れた髪を拭かないまま、俺にまじまじと話しかけた。

 俺は彼女の意図が分からず、彼女の酒が滴る顔を見つめる。


 それからようやくその意図に気づけた。ああ、なるほど。


「そうだったな、あれはお前の酒だったな。店員! 酒をもう一杯!」


「ちがーう!」


 唖然として俺を見る酒場の客たち。そんな中で、リリィの叫び声だけが響いていた。









「豪商?」


「はい。かなり、その、あくどい人で……」


 酒場でリンゴ酒を飲んだ後、客人たちの白い目線をリリィが嫌い、俺たちはすぐに退店した。

 リリィは酒場の店員からタオルを貰い、すでに髪は濡れていない。


 俺たちは適当に街中を歩いていた。特に行く場所もなければ、行きたい場所もない。


「実質、この街を仕切っているのは彼の父親、ヘレスト・マーヴィンで……」


「人間の事情など興味もないのだがな。つまり大金持ちのそいつが、金の力でやりたい放題している、ということだろう?」


「……そういう感じです。私の父も、彼に多額の負債を」


 暗い表情で語るリリィの隣で、俺は歩きながら空を見上げる。


 こんな時になんだが、俺の部下は今元気だろうか。なんだか少し、懐かしい面影を視界に入れたい気分だった。


 そしてふと、疑問が沸き立つ。

 あのヘレストを殴ったときだ。前に俺は握手をしてきた青年の腕を引きちぎろうとしたことがある。しかし、その時は謎の呪いが発動し、手に力が入らなかった。


 俺はその時の経験から、人間に対して物理的な暴力を振るえない呪いだと軽く推測していた。


 しかし、俺は酒場でヘレストを殴れた。彼は酒場の外に吹っ飛んだ。故に、ある程度の力は加えられている。推測があっているなら、暴力を振るえないはずだ。


 ということは、呪いの効果は単純に『人間に攻撃ができない』呪いではなく『一定の条件の下では力を発揮できない』呪い。そういう考えが浮かぶ。


「あっ……」


 リリィが立ち止まり、声を漏らした。俺も意識を思考から現実の視界に戻す。


 前にはガラの悪い数人の男がズラズラと、路地裏から出てきていた。相貌はまるで盗賊のようにボロ切れをきていて、顔はヒゲだらけだった。近寄らずとも土の臭いが漂ってくるみたいだ。


「何奴ぞ」


「……多分、ヘレストの使いですね……。報復にきたのだと思います……」


「ふむ」


 俺は数十人の男を前にして立ち止まると、右腕をかざす。


「残すのは数人でいいか」

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