夢の果て
この作品は牧田紗矢乃さん主催、第四回・文章×絵企画の投稿作品です。
この作品は、桧野 陽一さんのイラストを元に執筆しました。この場を借りて、御礼申し上げます。
桧野 陽一さん:https://10819.mitemin.net/
夏も終わり、日も沈みつつある今日この頃。
私は一人、電車に揺られて海を目指していた。
彼と、付き合っていた彼と一緒に遊びに来ていた、あの海へ。
彼が唐突に分かれようといったのはつい数日前。
私は、どうして、と聞いた。
彼が言うには、新しい人ができた、とか。
それが本当かどうか、私に調べる術はない。
ただ、私は彼と別れたということが、事実として私の胸の奥に、どんと大きく存在していた。
だから吹っ切るために私は一番の思い出のところへ向かった。
彼から当時買ってもらった麦わら帽子をかぶって。
君の髪の色と一緒だから、ということで買ってもらったワンピースを着て。
たどり着いた駅は、夏も終わりを迎えつつあるということで、私以外には、きっと地元民のような人が2、3人いるぐらいだ。
犬の散歩に来ている人もいる。
この時期、もう海の家も閉店で、しっかりと閉まっていた。
私は靴を脱ぎ、靴下も堤防へと脱ぎおいて、波打ち際へと歩く。
そして、おもむろに帽子を脱ぐと、最後にキスをした。
「さよなら、私の思い出」
そして、思いっきり海に向かって投げる。
帽子はふわっと風に乗り、くるくると回りつつそれからゆっくりと高度を下げ、海に落ちた。
ゆらゆらと浮かんでいる麦わら帽子は、次第にその姿を消した。
見届けてから、私はこの海を後にした。
きっと、二度と来ないだろうと思いながら。