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三十路童貞の魔法使い  作者: 吉野
3/8

分かったこと

 一般的な赤子の成長速度を俺は知らなかった。

  当然だろう。子育てどころか子作りの経験すらないのだ。

  だからどのタイミングでハイハイや二足歩行をすればいいのか、単語を発し、会話ができるようになればいいのかわからなかった。

  結果、俺は一歳にして自分で考え行動し、普通に会話ができる子供になっていた。


 .........いや、やり過ぎたのはわかっているんだけど。

 弁明するなら、とにかく暇だったのだ。

 それはもう、寝ておっぱい吸って寝ておっぱい吸って、以外に行動できないし。自問自答も、もう飽きた。

 なので首が座ったらすぐハイハイして、頃合いを見ながら順次自分ができることを両親に見せていった。

 ただ、その期間が短かったのは、『この世界』の時間感覚がわからなかったことと、あまりにも暇すぎて体感時間が狂っていたせいもある。


 そしてこの一年で多くの情報を得ることができた。

 俺の二つ目の名前はリリィ・エバンズ。一人娘。

 父親がジョンで母親がイザベラ。

 代々鍛冶屋を営んでいるらしい。

  だが、俺の産まれたこの村は人口百人にも満たない片田舎で、剣や鎧などの武具よりは鍬や鋤、鎌などの農具がほとんどの売り上げを占めている。

 そしてそもそも『この世界』は地球ではない。

  薄々わかっていたことだけれど。それこそ努だと勘違いしてしまうくらいに俺の知っている現代日本とはかけ離れていた。

  地球ではない、ならば異星なのかとは思ったが、太陽は一つだが月は二つあるし、一年の周期も十五ヶ月547日と長く、一月が36日、一日中26時間という間隔。そのため俺の成長速度もギリギリ異常一歩手前くらいの印象らしい。

  それと、科学の発展が芳しくない。井戸水を酌むためにポンプではなく、桶をロープで縛り、滑車に通して自力で引き上げるのだ。

  無論、電化製品など一切ない。エンジンですら開発されていない。よって、スマホ、携帯電話、ポケベル、パソコン、電卓、ネットワーク全部ない。エロ画像探して電動オナホ何てものはない。沐浴の覗き見や木の虚がせいぜいだ。


  しかし、科学以外の法則が普及していた。

それが魔法である。

 この世界には魔法が存在する。

 例えば暖炉の火など、科学的な道具で言えばライターやガスバーナーだが、この世界では火属性の結晶石を使う。

  どういう理屈だかは理解できないが、父親が暖炉に向かって石を投げ込んだら急に火がついたときは正直ビビったし、チビった。

  かといって、この世界の人間全員が手から炎を出したり、風を操ったり、空を飛んだりできるわけではないらしい。

一般人は基本的に魔道具と呼ばれるものを使い、魔法を再現するようだ。

 逆に、そういったことが自力で実現できる人を『魔法使い』というらしい。

 らしい、というのは父も母も村の住人も会ったことがないから実在するのか分からない、けれど行商人の噂話や吟遊詩人の詩にはよく登場する。この村に住んでいる者からしたら、魔法使いも王様も未確認生物だ。

 そうそう、この世界のこの国は王政のようだ。

 王都というくらいだ、栄えているのだろう。一度くらい行ってみたいと思う。


  さて、あと一つ分かったことがあるのだが、俺には魔法使いの才能があるようだ。巣から落ちた雛を戻してやろうと木に登ろうとしたとき、上を見上げたら急に体が浮き上がったのだ。

  まさか三十歳まで童貞だった男は魔法使いに成れると聞いたことはあったが、本当だったとは。

 童貞も捨てたもんじゃないな。

 だが実は今、そんなふざけたことを考えてる場合ではないのである。


 .........これ、どう降りればいいんだよ。

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