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三十路童貞の魔法使い  作者: 吉野
1/8

二度目の人生開始

初投稿

お手柔らかに

「__マジかよ......嘘だろ」


 それが、二度目の人生で最初に発した言葉である。

いや、実際にはそう完全には発音できなかったかもしれない。


 何故なら、自分が赤子になっていたからだ。

 自分を取り上げた助産婦が、驚愕の顔で固まっている。

 抱きかかられたままの俺の顔を見て、次にふと視線を上げて周りを見回す。

 首が座っていないからか、視線を追うことはできなかったが、感じからして俺を産んだ母親や他の助産婦だろうか。反応を見ることはできないが、この場が静まり返っている以上、たぶん目の前のこのおばさんと同じ顔をしているのだろう。

 見える範囲、木製の天井に、奇抜なデザインの服を着るおばさんと、血塗れの俺。少ない要素だが、どれひとつ見覚えなく、身に覚えもない。

 何が起こっているのかさっぱりだ。


 少し、気まずい空気である。

 確かに産まれたばかりの赤子が泣きもせず、冷静に周囲を観察しているのだ。当然の反応と言える。

  そこで、俺を抱き抱えていた助産婦が歩きだし、ぎこちない笑顔をつくってベッドに座る女性へと俺を差し出す。

 状況からして母親だろう。なにしろ見えた範囲で一番顔を引き吊らせているのだから。

「あー、そのー。はじめまして」

 あまりにも気まずくなってつい挨拶してしまったが、それが失敗だったことは目に見えて分かった。先程よりも険しい顔つきになってしまったし、落とさずにはいてくれるが、できるだけ遠ざけようとしているのがわかる。


 そんな空気を和ませようにしたのか、誰かが上ずった声で言う。

「お、おめでとうございます!元気...そ、聡明な『女の子』ですね~!」


 ___聞き捨てならない単語が聞こえた。

『女の子』?

 いやいやいや、そんなまさか...。

 そう思いつつも右手で股間を探ってみる。

 三十年以上の付き合いで、訓練ばかりで一度も実践経験のない新品の相棒が___ついていなかった。

 いつものポジションに、相棒が、まさか出てくるときにはぐれたか?

 いや、え?

  いやいや、...え?

  まだ一回も使ってないのに、まあ、使う予定もなかったけども。

  ロストですか?


「マジかよ...嘘だろ...」

  俺はきっと、この時の母親の顔を一生忘れない。


お目汚しでした。

すみません。

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