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学園を目指して

痛くも痒くもない猫パンチを交わしつつ、ゼロの背中を押す。ゼロをこのことに巻き込みたくない。


「私だって怒る時ぐらいあるんですよ!全く、あれは年頃の乙女にする対応じゃないですよ!侮辱ですよ!侮・辱!」


「あれは年頃の乙女がやることじゃなかったろーが!」


「何を言ってるんですか!?前はあんなにもすんなり受け入れていらっしゃったのに!!こんなの今更じゃないですか!?」


「はあ?」


「.....もう知りません!!」


予想以上にレーネが怒ってしまった。


そのままレーネは頭に青筋を立てながら、レーネを連れて風呂場の方へと言ってしまった。


話の内容を聞いていると、ゼロに風呂の使い方や洗濯の仕方の教えているようだった。


とぼけてはみたがやはり前の夜にあった事をレーネはかなり意識していたようだった。


やはりあれはそう意味だったのだろうか....。


だとすれば俺もいずれ答えを出させなければならない。しかしそれは今じゃないことくらい流石の俺にもわかる。


全てを片付けてから.....そう思ってから何年経っただろう。


師匠の秘密と俺自身の過去を暴く。呪詛学会を潰す。レーネとゼロを幸せにする。

やることは歳を重ねる事に増えていっている気がする。特にこっちに来てからは増えっぱなしだ。


けどなんとか成し遂げてみせる。


声のする方に目をやるとゼロが試行錯誤している様子が写る。どうやら洗濯の練習をしているらしい。練習と言っても魔道具の扱い方を覚えているだけだが。


「まず脱いだものを洗濯カゴに入れます」


「うん」


「それからご主人様の服のみを選別した後、匂いを5秒嗅ぎます。それから....」


「...うん?」


ゼロが首を傾げている。当然だろう。


「何をゼロに教えてるんだよ!」


「洗濯の仕方ですよ」


「どこが....!?」


「なんにも分からないご主人様には関係ないことです」


「あんまり怒るなよ。てかそのやり方、俺が屋敷で禁止した方のやつじゃねぇか」


「フン。そんなの知らないです」


「........。」


後でゼロにはちゃんとしたやり方を俺が教えよう。


◇ ◇ ◇


その後何度か練習してようやくゼロは魔法で創りだした火を怖がらなくなった。しかし次の課題としてその魔法が持続しないというものがあった。


理由としてはゼロが魔力をそのまま送り続けられないからだ。そのため燃料切れで魔法はすぐに消滅してしまう。


ゼロには膨大な魔力がある。しかしゼロ自身がそれ自覚せず、また使いこなせない。


ゼロの体には俺に見られるような黒い血管がない。なのになぜこれほどまでに魔力があるのか...。

それがずっと分からないままだった。


「ステンノ、ゼロにはお前みたいなのがいないんだよな?」

『わからない。けど少なくともゼロから私と同じものは感じられない』

「わかった」

師匠あるいは呪詛学会の連中なら分かるのだろうか。

やはり奴らに付けられていた魔道具に何か秘密があるのかもしれない。


いずれにしてもゼロが魔力を知覚しなければ先には進めない。これだと当分、学園の実技授業は見学かもしれない。


◇ ◇ ◇


真新しい制服に身を包んだゼロを連れて歩く。


凄まじく緊張する。一応設定ではゼロは親戚の子であり、ちょっとした事情でこの学園に来たということになってはいるが.....。少し違和感があるだろうか。

ただ魔法は習うよりも慣れろの精神が強い。

ゼロもこの学園で積極的に魔法に触れていけば、その感覚を掴めるはず。

そしてあわよくば魔法を完璧に扱えるようになってほしい。


「先生、緊張しすぎですよ。かえって不自然です」


初めての登校ということもあり、今回はニーナも同行していた。なんでも学園長からの指示らしいが真偽のほどは怪しい。


「問題児と一緒にいる方が悪目立ちするだろ」


「先生、自分のことをあまり卑下しないでください。先生は問題児などではありません。もはや立派なこの学園の教員と言っても過言はありません」


「お前の事だよ!気づけよそれぐらい!ていうか俺はこの学園の教員なんだよ。正真正銘の」


「そうでしたったけ?私とっては最近そうなったような感覚でしたが。それに私は学園でも随一の優秀な生徒ですよ?決して問題児などではありません」


ニーナはおどけた表情を浮かべる。何故か知らないが少し浮かれているようでもあった。


「俺がいない間、授業中ずっと寝てたらしいじゃないか。それのどこが優秀なんだ?ああ?」


「そ、そ、それは今関係ありません!!魔法が上手に使えて、強ければそれでいいんですよ!」


「・・・。」


そう言われると何も言い返せなくなる。こいつはこんなのでも学園ではかなり上位の成績をキープしていると聞く。にわかには信じがたいが....。


そうこうしている内に学園が見えてくる。


門のところには何人かの護衛が立っていた。


随分厳重になったな....。


そしてその門の真ん中には前に一度だけ会ったエリーゼという女が立っていた。



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