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研究施設の黒い影

◇◇◇


「こっちは収穫なしよ。そっちは?」


「こっちも同じだ。カビの生えたなんの意味もなさない研究資料ならあったけどな」


「そ。ギル、あんたは?」


「こちらも同じだ。数人の拉致被害者がいたから保護した」


ギルは平然と答える。こいつとここまでの会話をできるようになるのも時間がかかった。

最初は『私に指図するな』の一点張りだったし.....。


私たちは今、呪詛学会の研究所を潰して回っているのだ。

「サラ、本当にこんな時化た場所に重要な研究データなんてあるのかよ」


「軍からくすねた資料にはそう書いてあるのよ」


私たちが軍を退ける際に上官に頼んでありとあらゆる資料を貰っておいた。それにより今はある程度スムーズに行動ができている。


「おい、いたぞ。捕らえろ!!!」

「おおおおぉぉぉ!!!!」


けたたましい声が背中から飛んでくる。


どんだけ学会員がいるのよ.....。


私は後ろから飛んでくる魔法を一回転して避ける。そしてそのまま範囲攻撃魔法で敵を蹴散らす。


この体の動きを強化する魔道具にもだいぶ慣れてきた。かなりの魔力を消費しはするけど、慣れればなかなかに使える。盗んできて正解だった。


「まだいたのかよ。まるでゴギブリだな」


「先に進むわよ」


どれだけ漁ろうともさっきからろくな情報が手に入らない。


私たちが知りたいのは奴らが持つ謎の力だ。イリスにも見られたあの黒い血管。あれは今こっちの国の学生の間で流行ってるドラッグの使用者のものと似ている。

けどあのドラッグがあそこまで超人的力を付与するとは思えないのだ。もっと何かあるはず....。


その手がかりを探すために私たちは密かに動いている。


施設内部は機械仕掛けでどこもかしこもパイプだらけ。おまけに迷路のように入り組んでいて、侵入者に対して対処しやすいように工夫がなされている。


そのためかさっきから制圧したはずの場所から敵が湧いて出てくることも多い。特殊なゲートかなにかがありそうだ。


とにかく虱潰しに探していくしかない。


私はいくつもの扉を破壊し、中を確認していく。


その中でも一際強い結界が張られた部屋を発見する。


仕組みはいたって単純で特定の魔力の波長を持つものしか通さないようになっているものだ。


その波長以外のものが触れると痺れるような痛みに襲われる。


「痛ッ.......!エメ、ちょっとこの結界壊してくれない?」


「任せろ」


「結界を..........壊す?」


ギルはピンと来ていない顔をしている。当然の反応かもしれない。簡単に壊せたら結界の意味がないからだ。しかし魔力そのものが存在しないエメにとっては結界など無意味に等しい。


結界はエメが触れた瞬間、溶けるように崩壊していった。その後はエメは持ち前の馬鹿力で軽くドアの施錠機構を破壊し、扉を開ける。


「...........。」


ギルはそれ見て絶句していた。


私はそんなこと気にせずに中へと入っていく。するとそこにはいくつかの研究資料と拘束具、それに用途のわからない魔道具と大量の回復ポーションが転がっていた。


どうやら今は使われていない部屋らしく、埃がすごい。


「何だこの魔道具。見たことないな」


「それにこんなに沢山の回復ポーションを一体なんのために.......」


すると背後から突然、金属と床が擦れるような音と小さく不規則な足音が聞こえてくる。


「敵....?」


部屋の外の光によって生まれた影法師が私たちに覆い被さる。


その影はかなり小柄だ。


その中心にいたのは小さな男の子だった。


「お姉ちゃんちたち、助けて.......」


よく見ると足と手にそれぞれ拘束具のようなものが付けられていた。


「実験のために捕らえていた子供ね。保護するわよ」


「了解」


「わかった」


近づくとだんだんと服の色味が見えてくる。


さっきまでは逆光で見えなかったけど白装束のようなものを着せられているのがわかる。


そして顔には複数の蚯蚓脹れと痣があった。


「.........回復魔法が先ね。ギル、お願い」


「なぜ私が.....」


「私は回復魔法苦手だし、エメは論外だもん。あんた、教職とってるくらいなんだからそこらへん満遍なく出来るでしょ?」


「本当、サラは昔から回復魔法が出来ねえよな、いい加減覚えろよぉ。それともなにか?アルフに治してもらいたいからあえて努力してないとか?」


エメがニタニタしながら、こちらを見る。


「そ、そんなわけないでしょっ!?昔から適性がないのよっ!」


「へー」


「今はふざけてる場合じゃない、これだから下等な魔女風情は.....」


「その物言い、やめてって言ってるでしょ」


「今はそんなことどうでもいいからとにかく、その子に回復魔法をかけてやれよ」


「元はと言えばお前が....っ!」


「早く」


「くっ.........。片手をこちらに」


「うん」


綺麗な白髪頭に黒い瞳。そしてとにかくやつれている。まともな食事がとれていないのだろう。


少年はギルの指示に素直に従い、片手を差し出す。ギルは少年の服を捲り、回復魔法の詠唱唱え始めた。


「・・・。」


直後、ギルの詠唱が止まる。


「どうしたのよ」


「これは..........」


よく見ると、少年の皮膚は真っ黒だった。


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