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ゼロから始める

「ゼロ、もう一度聞くが魔法を使えるようになりたいか?」


「・・・。」


部屋に戻ってきてから俺はゼロにそう問いかけていた。


俺は幸い、今日はクラスに顔を出さなくてもいいことになっている。 明日からは行かなきゃならないが.....。


そのためゼロが望むのなら今からでも魔法を教えてやりたいと思っていたのだ。

ただゼロは俺の問いに対してまだ答えを出せずにいた。いや、一度結論を出しはしたがやはり怖くなってしまったのだ。


恐らく魔法が怖いのだろう。使うのが怖い、とか分からないのが怖いのではなく単純に魔法そのものが怖いのだ。


しかしそれも当然と言える。自分が意識がない間に色んなものを破壊してきた力だ。そんなものをもう一度学び、尚且つ扱えるようになりたいと思う方がおかしいのかもしれない。


しかし本音を言えば、ゼロには魔法を扱えるようになって欲しかった。というよりも制御できるようになるなってほしいのだ。たとえ魔道具を取り付けられたとしてもそれに抗える理性を持って欲しいのだった。


「ゼロ、どうだ?」


「魔法、使えるように......なりたい」


ゼロは絞り出すようにそう答えた。


「無理してないか?」


ここでゼロが魔法に関わりたくないと言えば、それはそれでまた考えるつもりだった。無理強いしても魔法は扱えるようにはならない。時間の無駄とも言える。


「してない....よ」


ゼロの綺麗な瞳にはもう怯えの色がなかった。ただ真っ直ぐこちらを見ているのだ。俺はゼロと視線を絡め、ゆっくりと俺も絞り出すように息を吐いた。


「わかった。レーネ、準備するぞ」


「はい。承知致しました」


外では昼の授業が終わったことを告げるチャイムが鳴り響いていた。




「もう重いなぁ」


イリスの重い肢体に体が軋み震える。


私はイリスをその場に下ろす。イリスは砂の入った人形のように重力に従い、その体を地面に横たえた。


「ありったけの回復ポーション、それと人ひとりが入れる容器が必要だ」


私が入ってきたことで周りの部下達はざわついた。


「お久しぶりですね、先生。どうして突然帰ってこられたのですか?」


「久しぶりだね、ミルナード。けど今はそんなつまらない話をするつもりはないよ。言う通りにしないとイリスはここのまま死んじゃうよ?」


私の言葉通りにイリスは今ももがき苦しんでいた。


首には魔道具と思われる黒い輪っかが着いていたままになっている。これを外さないとイリスからは魔力が漏れ続ける。しかしそう簡単には外れないようになっていることはもう確認済みだった。


よく出来た魔道具だ。我々の体のこと、それにその仕組みを理解していなければ作れないものだ。


軍の人間もよく考えたね。過去の資料を漁ったのだろうか。それにしてもこの魔道具、アルフのものとそっくりじゃないか。


ミルナードは私の答えが気に入らないのかそのギラギラした目でこちらに訴えかけていた。


「つまらなくありません。あなたが味方である保証が今はありませんから」


「もし仮に私がいなかったらこの先やっていけるのかな?イリスも私を欲しがっていたんじゃないのかい?」


ミルナードの表情が一瞬だけ淀んだ。どうやら図星のようだ。


「それがわかったら早く言う通りにするだね。イリスだって失いたくない『味方』の一人でしょ?」


「何を今更!!あなたがあの時裏切らなければこんなことには.....」


「裏切ったわけじゃない。あれはただの事故だよ。それはイリスも認めているでしょ?」


「そんなものは.....言い訳にすぎない」


「今イリスと私を失うリスクと私がこの組織を裏切るリスクと、どっちが重いかよく考えるこどだね」


今この組織には私が持っている知識が必要なはずだ。それにイリスや私がいなければ計画も成り立たなくなる。


ミルナードは一瞬考えた後、再び私を睨みそれから視線を外した。彼の握り拳は微かに震えている。


「・・・。おい、ありったけのポーションと人が一人入れる容器を用意しろ」


指示された部下は一瞬戸惑う。


「聞くんですか?彼女の言うことを.....」


「いいから黙って俺の指示に従え」


「.......はい」


その部下と他数名はそのまま慌ただしそうに部屋を出ていった。


「そもそも、なぜこの場所が分かったんです?」


ミルナードがそう聞くのも最もな話だろう。ここは呪詛学会が持っている中でも一番強力な結界が張ってある場所でそう簡単には見つけられないからだ。


「前にイリスからラブコールがあってね。場所その時聞いたよ」


「・・・。.......今回の計画で事故は起きませんよね?」


「起きないよ、きっとね」


私はイリスを抱えて歩き出す。


「ここで断言してから行ってください!!」


ミルナードの罵声に等しい言葉を私は右手で払い除けた。


「君は大人しく玩具の調教でもしてろよ」


「く..........っ!」


ミルナードは唇を噛みながらも黙るしかないようだった。


心配しなくても計画は成功させるよ、必ず。


心の中でそう呟きながらも、言葉にはしなかった。


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