久しぶりの頼み事
「は・・・?その子を入学させたい?」
「ああ」
ニーナはこの学園の娘だ。その娘から直々に頼めばなんとか、というのが俺の狙いだった。
ただその時にゼロの過去は知られて欲しくない。知られたら最悪の場合、拘束されてそのまま軍に引き渡されてしまうかもしれないからだ。
しかし俺の話を聞いて、ニーナは呆れた顔をしていた。
これは予想していなかった表情だ。
「あの.....先生?」
「なんだよ」
「確かに私は『なんでも』と言いましたよ?」
「ああ、言ったな」
「はぁ〜.......」
ニーナはガクリと全身の力を抜いて仰け反った。
そして俺にジト目を向ける。
「だからなんだよ」
「先生、元は男だったんですよね?」
「今も男だよ」
「じゃあどうしてっ!!...........ッ!」
ニーナは何か言いたげだったが、無理やり自分で口を閉じた。
それを見て、レーネは横から口を挟む。
「ご主人様は私の前では女にもなりますし男にもなりますよ。特に夜なんて主従関係が逆転したりします」
「っ!?」
「アルフ、しゅじゅう?関係ってなに.......?」
「変なことを言うな!ゼロがいらないことを覚えるだろーが!」
レーネは今日、やたらニーナに突っかかるな...。
「それで出来そうか?」
「まだ今の時点では分かりませんけど.....まあ頼んでみますから後で私と来てください。あっ、その子も一緒にですよ?」
「一緒に、か」
万が一、学園にサラやエメがいたらゼロの正体を見破られるかもしれない。まあでも魔道具のおかげで顔は見られてないから大丈夫だとは思うが....幻影魔法ぐらいは使うか...。
「先生?」
「わかった。連れていく」
「じゃあ、また後ほど。私も登校の準備をしなければならないので」
「ああ、悪かったな。こんな時間から」
「いえいえ」
俺はその後、レーネが朝ごはんを作ってる傍らで色々と考えていた。
とりあえず、ゼロに幻影魔法をかける所からか...。
改めて見ると本当にゼロは小さい。
真っ黒な瞳とは対照的な白い肌。凡そ健康的とは言えない体つき
リンにも見てもらうか.....。
そういえばあれ以来行ってなかったな。
俺はリンに自分の体を見てもらい、魔力欠乏用にポーションまで作ってもらっていた。
確かにゼロを今見てもらうことは重要だが、それと同じくらいリスクもある。
無理するなっていう忠告も完全に破ってるし。何より俺のこの黒々しい血管を少しでも見られたらまずい。
俺は改めて自分の黒ずんだ腕の血管を見る。幸い掌まで達してないから、袖で隠すなりすれば大丈夫か。
今はとりあえず、ゼロに幻影魔法を施すか。
俺はゼロの体に魔法陣を出現させ、それをお腹のあたりに触れながら内部に押し込んだ。
「ひゃッ!?.....」
魔法陣を直接体内にセットする時、不思議な感覚に襲われることがかなりある。
ゼロはその感覚にまだ慣れていないためか小さく驚いた。
「アルフ.......?」
「ゼロの体に幻影魔法用の魔法陣を付与した。別に変なものじゃない」
「うん......わかった」
ゼロは伏し目がちにそう言った。そしてゼロの顔は少しだけ赤みがかっていた。
「さてと...........ん!?」
俺が伸びをしながら、後ろを向くとレーネに危うくぶつかりそうになる。
レーネはじっとこちらを睨んだかと思うと急に満面の笑みになり、逆にその不自然さが俺に恐怖を抱かせる。料理の最中のためか、包丁を手に持っているのもその怖さを増幅させていた。
「なんだよ......」
「ご主人様、もしそのいたいけな少女に手を出したら......ご主人様の内蔵をスクランブルエッグにしますからね?」
「怖いわ!!ていうかッ!そんなことしねーよ」
「へー、そうですか。朝ごはん出来ましたよ」
「わかった」
俺たちそのまま朝ごはん食べた後、学園へと向かった。




