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押し寄せる苦痛

やはりイリスも軍が調査中のあの薬を使っているのだろう。その黒々とした血管と腕がそれを物語っていた。


だからあんな体で強力な魔法を使えるのだ。


「はぁ〜。今回は本当にことが上手く進まないね〜」


「それはお互い様よ」


私が拳で猛攻を加えるも全て避けられてしまう。


そして私の動きに合わせるように後ろに下がりながらもこちらに攻撃してくる余裕さえ見せる。


やはり体術では向こうの方が上。


けどたとえ体に負荷をかけてでもこちらの動きを向上させないとこちらの狙いがバレてしまう。


とにかく必死さを演出すること。


なんの策もないのに突っ込んできたと思われてはいけない。


そうなればなにか他の目的があるのかもしれないと勘ぐられる可能性があるからだ。


目の前のものが全てだと思わせる


私はそれだけを頭に魔道具の魔力濃度を上昇させる。


すると魔道具のランプは赤から青に変化した。

しかし私はそんな些細な変化にカマかけてられなかった。


エメを意識しながら、庇うように攻撃を避け、注意を反らすように魔法を放つ。


幸い魔道具の魔力濃度を上げたため、より素早く動けるようになった。


全身が少しずつ痺れてきたがそんなことは気にしていられない。


目の前のこいつを止めない限り革命が始まらないのだ。


私はあの忌々しい刑務所にいた時からずっと考えてきた、約束してきたことを必ず成し遂げるために。


今、この身を捧げてでもイリスを食い止める。


一度フェイントをかけ、こちらの足を体で隠しながら右肩に蹴りを入れる。


イリスはそれを軽々と避けながら、カウンターを入れてくる。


私はそれを腕で受ける。


一発一発が重い....。受け止めるたびに頭の先から足の先まで電気みたいなものが走り抜ける。


それでもそのカウンターを受けてからも尚左ストレートを頬をめがけて打ち込む。


これはしっかり入ったがふり抜くことが出来ず、拳はイリスの頬に受け止められてしまう。

「なんでよ.....」


「痒いね」


そして羽虫を振り払うが如く、私を腹にイリスの拳が食い込む。


「ッハァっ!!!」


口から空気が抜け、思わず声が出る。


私はそのまま飛ばされ後ろの壁にあたって地面にズリを落ちた。


呼吸が出来ない....。苦しい...痛い.....。


魔力をよこせと五月蝿い心臓を抱え込むようにして必死に痛みを落ち着かせた。


数秒後、私はなんとか気道を確保し再び息を吸う。


すると今度は胃から血と胃液の混合物がせり上がってきて口から飛び出る。


「サラっ!!大丈夫か!?」


「.......。大丈夫よ!!こんなのかすり傷だわ」


私は一度血なまぐさい唾液をお腹に押し込んだ後立ち上がる。


そして体が上げる悲鳴を黙らせてまた走り出す。


もっともっと魔力濃度を上げないと....。


私はポーションを口に放り込み魔道具にさらに魔力を注入した。すると次は青から黒に変わった。


「まだやるの〜次は殺しちゃうよ?」

まだイリスは涼しい顔を続けていた。


「エメ、まだ!?」


「もう少しで終わる!!」


「何をしようとしてるのか分からないけど、邪魔されないとでも思うの?」


イリスの目は私ではなくエメを見ていた。


「なんのために私がいると思ってるの?」


既にボロボロの体を引き釣り、私は正面からイリスに立ちはだかった。


「その体で何ができるんだろうね〜」


すると突然、無詠唱でイリスから青白い雷のような魔法が飛んでくる。


私はそれに反応出来ずに左肩にそれを受ける。


すると肩に取り付けられた魔道具を貫通しそのまま肩を突き抜けた。


「ッ!?」


温かい血液が体を伝って滴り落ちる。


なんで魔道具を貫通できるの......?しかも詠唱なしで......。


前にもイリスのこの魔法を見たことがある。それはアルフが時々使っていた魔法によく似ていた。


とにかく止血しないと....。肩に手を触れてももはや感覚がなかった。あるのは激しい痛みと熱さ。


私がイリスにもう一度目を向けた時、もうその影はどこにもなかった。


どこに....!?


疑問は生まれてすぐに消えた。


「後ろだよ〜」


その鬱陶しい声と共に後頭部に強烈な痛みと衝撃が走り抜けた。


私はそのまま右に倒れ込む。


そして知覚する。頭が割れるほど痛いのだ。


それだけじゃなく、全身が共鳴するように痛む。動けない、息ができない。それほどまでに体が痛めつけられていた。魔力欠乏の影響も大きい。


私が倒れたのを見てイリスがエメにゆっくりと近づく。


ダメだ、私がここであっさりやられれば不信感が生まれる。


気づかせてはダメだ、何かあると....。


動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け。


動けと命令しても動かない体。


イライラする、何もかもに。もどかしかった何もかもが。


すべてが上手くいかない。


ああ、アルフ


浮かぶ情景、感情、感覚


そんな映像に瞠目してる暇など今はどこにもない


「あああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁああぁぁ!!!」


私は発声器官から全力で音を発し、体に解らせた。今、動かせ、と。


拳を地面に突き立て、痙攣する足を怒鳴りつけ、余計な感情を呼び起こさせる頭を無理やり再起動させる。


するとそれに反応して魔道具がまた動き出す。


私は気づくとエメを守るようにして立っていた。


血に滲む景色


「おい!!サラ!!」

「・・・。」

「もう...」

「あんたをここで、絶対、殺す。私が死んでも、必ず」

だって革命とはそういうものでしょ


「綺麗な目をしてるね」


今度は無数の可視化された魔法陣がイリスの前に現れた。


「その目、貰おうかな」

そこから閃光を帯びた魔法が放たれた。


「そんなもの、くれてやるわよ」


魔法は私の目に真っ直ぐ飛んでくる。光で瞳孔がはっきりと開くの感じた。


私はそれをスレスレで交わし、そのまま後ろへ倒れた。もはや体はそれを最後に動かなかった。


「やっと終わったか〜」


その後すぐに魔法は私ではなくエメの方に向かっていった。


エメはそれを見て頬を上に釣りあげた。


「!?」


イリスに初めて浮かぶ焦りの表情


エメは魔法の光を利用し、イリスの死角から首の根元を掴む。


「なにを.....血迷ったのかな?」


イリスは何度も何度もエメに魔法を放つ。


しかし、エメはそれ全て弾き飛ばした。


「魔法は効かねぇんだよ」

「魔法が......効かない....?なら...」


イリスは腕に力を入れるとエメの腕の骨はぐにゃりと曲がった。

「.......痛てぇな」

「ふふ。なーんだ、これは効くんだね〜」

「目的は果たしたからな。腕の一本や二本なんざどうでもいい」

「目的.......?.......これはっ、?」


イリスはようやく首に取り付けられた装置に気がついたようだった。


そして次の瞬間、イリスは表情を苦痛に歪ませた。


「ぐぅぅぅぁぁぁぃぁぁあああ!!」


エメが首から手を離すとイリスは壊れた玩具のようにその場で転げ回り、もがき苦しんだ。






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