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予期せぬ客人たち

エメは不敵に笑っていた。


何か策があるらしいことがその表情から伝わってきた。


とにもかくにもここから出ないと話にならない。


外のことも、アルフのことも何もかも。


「それで、出るってどうやってでるのよ」


この檻の中では魔法は使えない。


ここは言わば、私たち魔法使いをただの人間にする場所だ。


こんなのどうやったって.......。


「サラ、とりあえずちょっと魔法を使ってみてくれ」


「え?」


「いいから」


「......わかった」


私は言われるがまま、身体強化魔法を使う。


『我が命ずる。我が体に力を』


すると私の身体の外側に魔法陣が現れ、私の構築した魔法を次々と崩壊させていく。


「やっぱりダメね。そこらにある魔法陣のせいで魔法が壊されちゃう。それでどうすんのよ」


「サラ、オレらがいた刑務所の造り覚えてるか?」


「え.....?それはまあ嫌でも覚えてるけど」


「あそこでは魔法は自由に使えた。それがなんでだか分かるか?」


「それは......外壁が全部抗魔物質で出来てるからでしょ」


私たちのいた刑務所は基本刑務官などはいなく、ある程度の自由がきく。


というのもあそこに居た連中は外に出る見込みのないものがほとんどで誰がいつ死のうが誰も困らないのだ。


刑務所内で魔法が使えるのもそのためだ。


例えどんな魔法を使おうとも外に出ることは不可能しかも誰が死んでも問題ない、という大前提があるからこそ許される自由。


壁を壊そうとしても魔法は効かない。


外壁がドーム状に作られているため飛行魔法でも逃げられないようにもなっている。


そのため、あそこでは魔法は脱出手段ではなく主に殺し合いの道具として使われていた。


「そう。あれがある限りどんな魔法も壁に触れた瞬間崩壊する。オレの体と同じ仕組みでな」


「それで、それがどうしたのよ」


「ただ、ここはどうだ?魔法は使えない」


「そんなの当たり前じゃない。魔法を使えなくするための檻なんだから......」


「そこだよ。ここは魔法を無効化するために魔法を使ってる。だがオレにはそれが効かない」


「確かにあんたには効かないけど、そもそもあんたは魔法が使えないじゃない」


エメの体内には魔力が存在しない。故に魔法は使えない。


それにここの檻はいくらエメの怪力があっても壊せない。


鉄製ならまだ何とかなったんでしょうけど....。


「そこでだ。お前には今から爆発系の魔法陣を作ってもらう」


「は?今の話からどうしてそうなるのよ!魔法陣なんて作った瞬間から壊されちゃうじゃない」


「作る場所はオレの手の中だ」


「手の中..........?」


「これなら魔法陣を壊そうにも魔法陣が俺の手に干渉できないはずだ」


「そんなの、私の魔法だって同じじゃない」


「オレの手に触れなきゃいいんだよ。そうすれば魔法が発動し、檻が壊せる。それにオレはその魔法自体に巻き込まれる心配がないから遠慮なくドカンといけるだろ?」


「そもそも発動したものがあんたに触れて時点で壊れちゃうんじ.....」


「構築段階では崩壊しても一度発動したものは俺の体に触れた部分以外は普通に機能し続ける。だから理論上はオレの手の中でも魔法は構築、発動可能だ」


「その前に、よ。私にはそんな小さな空間に魔法を構築する技術がない.........」


今まで魔法を小さく作るなんてことを意識したことがなかった。


まさかこんな日が来るとも思ってなかった......。


私はやっぱり約立たずだ。


革命に失敗した時からずっと。今の今まで。


「練習すれば、すぐに技術なんて身につく。それにここにいたらどの道死刑だ。あんたもそう思うだろ?」


「あんたって......?」


エメは私の方ではなく、檻の向こう側にある黒いカーテンを見つめていた。


「ああ。このままでは我々は反逆罪で死刑だろう。だから私も手を貸す」


聞き覚えのある少ししゃがれた声。


「上官.......?あんたも捕まってたの.....んですか?」


私は慌てて敬語に直す。


恐らくあのカーテンの向こうにも同じ形状の檻があり、そこに捕えられているのだろう。


「ああ、ウルドのやつにな。他の部下達も捕まって、残っているのはウルド派の連中だけだ」


「どうして、あなたまで?」


「ウルドにとって私は相当邪魔だからな」


「じゃあやっぱり、今回の件はウルドが....けどなんのために.....?」


「恐らく、軍の私物化のためだろう。そのためにやつは自分の派閥以外を根こそぎ蹴落とした」


「でも今回の作戦、あなたが指揮権を持っていたんじゃ.......」


「公にはそうだが、実際は上からウルドに任せるように指示がきていた」


「つまり......」


「本当の指揮権はやつにあった。本来、国に根回しでもしてなきゃこんなことは出来ないはずだ。だからやつは国と何らかの繋がりを持っているのだろう」


その時私は真っ先に呪詛学会のことが頭をよぎる。


じゃあ、私たちは完全にはめられて........。


あの班の編成も........全て......。


私は自然と拳に力が入る。


「そいつは殺す。だが、今はここから出るのが最優先だ。だから今、自分を責めてる時間すら惜しい状況だってことを忘れんな」


エメには全て見透かさてるようね


昔から魔法が使えない分、観察眼と腕力だけは誰にも負けないよう努力してたっけ.....。


「.......わかったわ。やってみる」


私は全神経を研ぎ澄ました。



それから数時間が経過した。


最初は何度やってもエメの体に構築中の魔法が触れてしまい失敗に終わっていた。


けどだんだんとそれもなくって行き、最終段階の構築した魔法を発動させるところまできていた。


ゆっくり慎重に発動のための魔力を供給する。


魔法陣を広げてはいけない。


けど、魔力の供給も止めてもいけない。


「今、少しずつ魔力を蓄え始めてる」


カーテンで状況が見えない上官にはエメがそのつど、口頭で状況を伝えた。


「いいぞ。そのままだ。その状態で安定したら発動詠唱に向かえ」


「やっとか........」


エメの顔にも汗が滴っていた。


あと少し..........。


そう思った矢先だった。


私たちの目の前に、アルフの同僚が現れたのは。






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