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希望のない暗闇

「ウルド.......?」


立っていたのは紛れもない軍のウルド=ゾーイだった。


いやそれよりも.....。


俺はポケットに手を入れ、ブレスレットを取り出そうとした。


「おっと、動くなよ?動いたら、そのガキの首飛ばしますからね」


口調が二転三転していて、前あった時とはまるで別人だ。


ゼロが涙目でこちらを見る。


「アルフ....?」


するとさっき会話していた二人がゼロに近づく。


「待て、ゼロに触れるな。怖がる」


「なら、そのまま動かないでくれますよね?」


黙って従うしかない俺はその場で固まる。


ウルドは俺から目を離さない。


くそ。 脳内構築魔法に必要な魔力が今はない。


あの時ポーションを温存したのが仇となったか。


魔力を最小限に抑え、指先だけで魔法陣を書くことも可能だが......。


こいつは俺が動けば何のためらないものなくゼロの首を飛ばせる。


さっきの発言は虚勢でもなんでない。


そう確信できる何かがあった。


ウルドはニヤつきながら、俺の前に手をかざす。


すると俺の首と腕と腰にそれぞれに魔法陣で出来た光の輪っかのようなものが現れる。


そこで異変に気づく。


首から上と手首から下以外、体が動かないのだ。


「くそ........何をした」


「そのままじっとしていてくれば結構ですよ。ほら君たち、体の構造データのコピーを」


「「はい」」


ゼロのそばに二人が今度はこちらに来て何やら手のひらサイズの魔道具を数個取り出し俺の周りに並べる。


「コピー開始します」


コピー?何をしようとしてるんだ.....。


「完了しました」


「おーけー。じゃあ、処分しちゃって」


「はい。その.........このガキはどうしましょう」


「ああ。そいつは例の魔道具をつけておけ。まだ商品価値があるらしい」


「はい。おい、やるぞ」


「了解」


「何をする気.......グハッ!?」


突然、ウルドが俺の頬を思い切り殴る。


「アルフ!!!!」


ゼロが涙声で叫ぶ。


「いや〜、あの時からずっとイライラしていたものがようやく晴れましたよ」


口の中が切れ、じんわりと鉄臭さが広がる。


「あの時...........?」


「初対面で反抗的な態度、交渉の際には私に対して失礼な振る舞い、全てが私の気に障る」


「ぐは!?」


もう一発俺の頬を殴る。


「はぁー、気持ちいいィィ。やっぱり愚鈍な女を殴るとスカッとしますね。どうですか?今の気持ちは」


にじり寄ってくるウルド。


気持ち悪くニヤニヤ笑う顔。


「くそが.....!」


俺は血の混じった唾を吐く。


つまりこいつが全ての情報奴らに提供し、そのせいでリーフィや他の関係ない人達までもが犠牲になったということ。


ふざけやがって


「お前が情報を流してせいで関係ない教師の奴らや軍人までが.......」


リーフィとジルの顔が頭をよぎる。


するとさっきまで笑みを浮かべていたウルドの表情は一変して憤怒の色へと変わる。


「なんですか、その反抗的な口調は」


ウルドは俺の髪を引っ張り頭を持ち上げる。


「調子に」


顔に


「乗れる」


肋に


「立場なんですかねー?」


腹に、それぞれ拳が入る。


「ッァ!?」


痛みが体を支配し、思考までもがその餌食になる。


痛い.............。


元々弱かった女の体。魔力がない今はさらに脆く、いとも簡単に壊れていく。


そのくせ、痛覚はまともに機能しているせいで体が悲鳴をあげている。


「こちら魔道具の準備完了しました」


「こちらも処分の準備完了しました」


「ご苦労。では先にガキの方を」


「了解しました」


「アルフ......?」


「暴れるな」


男のひとりがゼロを羽交い締めにし頭に円盤状の魔道具を装着させる。


「おい!!ゼロに触れるな!!」


「アルフ!!助けてッ!!!いや.....いや!!」


ゼロの悲痛な叫びが響く。


「さあ、魔道具を作動させなさい」


「やめろォ!!!」


あれ?何だこの既視感は...。


「ア....ル.....フ.....」


前にも味わったことのあるような喪失感が押し寄せてくる。


ウルドが指示したことにより、魔道具には魔力が流し込まれ目元の部分が赤く発光し、さっきまでの叫びが突然止む。


「ゼロ.......?」


「・・・・。」


ゼロは俺の呼びかけに反応しなくなった。


その目は前に見た目と同じ。光を宿していない死んだ目。


「完了です」


「よし、こちらも処分を」


「了解しました」


「おい、ゼロに.....何をした?」


「何?ただ前のようにまた殺戮兵器として使うまでですよ。ただ魔力供給の必要がありそうですがね」


「魔力供給、だと?」


すると、ウルドは部下に何やら指示を出す。


「接続してください」


「はい」


「これから兵器にあなたの魔力を吸わせ続けます。あなたはこれから魔力を吸われもがき苦しみ死ぬのです。さぞ苦しいでしょうね。魔力欠乏で死ぬのは」


ゼロの魔道具から光の管のようなものが伸びてきて俺の周りにある魔方陣にそれぞれ繋がる。


「君、後で兵器の回収しに来なさい。私は一足先に戻って部下とあのチンピラの処分に向かう。そしてもう片方の君は彼の体の構造データを持って私と来なさい。彼女の体をデータから取り出します」


「「はい、了解しましたウルド様」」


「優秀な魔女以外この世にはいらない。ではさよなら先生。学園は私とギル先生に任せてください。あなたは頭の悪い部下のせいで死んだ可哀想な女教師として報告しておきますから」


「ウルドッ!!」


体を動かそうにも全く動かない。


「動いても無駄ですよ」


「魔力供給、開始します」


スイッチを入れられ、体から一斉に魔力が漏れ出す。


それにあわせて体の各部位が勝手に動き、やがて手と足がピンと伸ばされた状態になる。


この形で連想するのは十字架。


それはまるで磔にでもされているかのようだった。













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