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少女の怯えはまだ消えない

「やっぱり、瓦礫の下敷きになって死んでるんじゃないですか?」


「念の為だ。もし生きていれば、捕らえよとのことだ。とりあえず探すだけ探すぞ。それにサボってるのが見つかったら俺たちだってただじゃ済まない。最悪降格処分かもな」


「まじっすか〜」


会話に耳を傾けつつ、じっと身を固くする。


恐らく、やつらが探してるのは俺たちだろう。


ということは学会員の残党か?


ともかく、今ここで見つかる訳には行かない。


だんだんと話し声と足音が遠ざかっていく。


俺はタイミングを見計らい、ちらりと様子を伺う。


すると人影はなくなっていた。


とりあえず、凌いだか。


俺は手の力を緩め、ゼロを解放する。


「悪かったな、突然引っ張ったりして....って」


俺は外にばかり意識を向けて、ゼロのことを気にしていなかったがゼロはひどい震えとともに涙を流していた。


「ちゃんと...言いつけ通りに...やります..........から」


手で顔を覆い、何かに怯えるように下を向く。


「俺はそんなつもりじゃなくてだな....」


やはりさっきの事といいゼロは身体に触れられる行為に酷く怯える。


やはり、今度からは控えるべきか.....。


「ゼロ」


「.......?」


「前に何があったか知らないが、俺はお前に絶対に危害を加えない」


「うん、わかってるの......けど体が勝手に私を守ろうとするの....止められなくて」


防衛本能みたいなものがついてしまっているのか。


「無理はしなくていいよ。ただ伝えておこうと思ってな」


今まで生活の中で培われた悲しい本能だ。今更直せないだろう。


「それとな......」


「ん.....?」


かなり目が慣れ、物が鮮明に見えてきているの中で俺はどうしても気になってしまうものがあった。


「その服はもうダメだろうからとりあえず俺のローブ着とけ」


ゼロの服はあの崩落でところどころ破れており、目が慣れるにつれて、目のやり場に困るようになってしまったのだった。


俺は自分のローブを脱いで渡す。


これには認識妨害の役割があったがここではもう意味がないだろう。


「ありがとう」


ゼロは意外にも素直に俺のローブを受け取った。


「ん.......しょ」


するとゼロは今来ている服を突然脱ごうとする。


「おいおいおい」


おれはそれを全力で止める。


「ん?」


「脱がなくても上から羽織ればいいだろ」


「そっか....」


ゼロが握っていた裾を離した時にお腹になにか黒い影のようなものが見えた。


「ちょっと待て」


俺はゼロの服を少したくしあげる。


再度確認するとそれは影ではなく、痣だった。


「これは.......、」


よく見ると他にも首筋、腕、足に無数のひどい痣が見受けられた。


それらの多くはかなり最近についたもので痛々しく、子供にはとても耐えられそうにないものばかりだった。


「おい、ゼロこれ.....どうしたんだよ」


「たぶん、私が言うこと聞かなかったから....」


ゼロはなんともないかのように静かに説明する。


「なんで早く言わないんだ!!相当痛かっただろ」


俺は魔力消費が最も少ない光源魔法を指先だけに使い、ゼロの痣の箇所を見えやすいようにした。


それから俺はレッグホルダーの中から回復ポーションを一つ取り出し、各箇所に垂らしていく。


痣は打撲によって出来たものらしく、内出血によって紫色に変色していた。


しかし、こんな酷い怪我を負わせるとは.....。


イリスの半笑いが遠くに聞こえたような気がした。


こんな小さな子供にまで..........


ふつふつと怒りが込み上げてくる。



回復ポーションにより、傷が治っていく様子をゼロは物珍しそうに眺める。


それは自分の身体を見る目ではなかった。


他人の身体を見ているようなそんな目。


「とりあえず、全部終わったな。他に痛いところとかあるか?」


「ううん......大丈夫」


「またなんかあったらちゃんと言えよ。お前のことはお前にしかわからないからな」


「うん......」


ゼロの態度いい、傷の痛みに鈍感さといいかなり心配になる。


「じゃあ、とりあえず探索再開するか」


俺はついていた膝を持ち上げ、ゼロの手を再度強く握り歩く。


「痛く...........しない」


確かめるように、言い聞かせるようにゼロがちいさくつぶやくのを俺は黙って聞いていた。


「アルフ...」


「?」


「ありがとう」


「おう」


とりあえず、これからどうするかだが.....。


本来なら、ゼロにここから出る方法を聞くつもりだったがこの様子じゃ多分知らないだろうし....。


まあどうするかは歩きながら考えるか。


「ところでゼロはここに何をしに来たんだ?」


「友達を捜しにきた」


「そうか。ならその友達を捜しにいくか。もしかしたら出る方法も分かるかもしれないしな」


「うん」


「その友達がどの辺にいるかわかるか?」


「うん、なんとなく、だけど」


「わかった。じゃあ行こうか」


「うん、こっち」


今度はゼロが俺の手を引く。


周りには得体の知れない箱が積み上げられており迷路のようになっている所もあれば、収納のための窪みが沢山ある開けた場所もあった。


出来ればさっきのやつらに見つかる可能性の高い開けた場所を歩くのは避けたいが.....。


ただ、ゼロは入り組んだ方に進んでくれたためその心配をする必要はなさそうだった。


しばらく歩いた後に、どうやら目的の場所に着いたらしくゼロは立ち止まった。


「ここ、だと思う」


ゼロの前には黒い巨大な箱があった。


「この中にいるのか?」


「うん」


「わかった」


俺は箱を触る。


材質はわからないが、これぐらいなら軽く魔法で破壊できそうだ。


俺が箱を破壊するための魔法陣の準備をしようとした時だった。


「やあ、こんな所にいましたか。学園の教員さん」


聞き覚えのある声が背後からした。

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