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崩落した地下で少女と出会う

砂埃でむせかえって目が覚めた。


長い夢を見ていた気がした。


それが尾を引いて意識が朦朧とする中、ようやく自分の置かれている不思議な状況を理解し始める。


「俺は、確か.....防御魔法を使うのに失敗して......」


そこで俺ははっと思い出す。


あの少女は!?


周りを見てもそれらしい子はいない。


よく見てみると周りには俺を避けるようにして瓦礫が崩れていた。


そして金色の薄い膜のような魔法の防御壁が俺を覆うように張られているのに気づく。


これは俺のものではない。


俺のは形成したと同時に崩壊したはず。


じゃあ、誰が........?


俺はその防御壁に指で触れてみる。


すると、魔法は溶けるように消えていった。


とりあえず、状況確認を進めるしかなさそうだ。


俺が立ち上がろうとした時、手に何か当たったのに気づく。


手元を見ると、俺のブレスレットが置かれていた。


勝手に外れたとは考えにくい。


なら外されたのか?なぜ?でも外されていなかったら俺は今頃魔力欠乏症で........。


さっきの出来事といい、心当たりはあの少女しかいない。


俺は疑問を晴らすべく、まずあの少女を探すことにした。


辺りは大魔法によって崩れ落ちた瓦礫で埋もれていた。


光はほぼなく目が慣れるのに少し時間がかかりそうだ。


その間に脱出経路がないかと再度見渡すも床の残骸で穴が塞がれ目の前の通路しか進めそうにない。


というか、ここはなんのスペースなのだろう。


確かステージには舞台装置のようなものがあったぐらいだったが......。


いずれにしても少女を発見すればその辺ははっきりするだろう。


ただ問題はその少女にこちらに対する敵意があるかどうかだ。


魔道具を外した時はそんな感じはなかったが、あの身なりだ。呪詛学会の幹部あるいは手下の可能性も十分ある。


一応警戒しておいて損は無いだろう。


ようやく目が慣れ、歩き出そうした時突然足に痛みが走る。


見てみると足が黒く変色していた。


あの黒い触手に触れられたときのやつか.....。


俺はレッグホルダーのポーションを見る。


幸いにもポーションはいくつか割れただけで他は使えそうだ。


俺はその中から回復ポーションを取り出し、使用する。


「とりあえず痛みは引いたな...」


ただ変色した部分は完全には戻らなかった。


本来なら治療のためにもう少ししらべたいところだが.....。


今はとにかく先を急ごう。


俺はそれを気にしないようにまた歩き出した。


崩れた建物の残骸。


足元には無数の死体の一部と思われる肉片も転がっていてかなり血なまぐさい。


それらの多くはあの天井と床の崩落に呑まれたギャング達のものだろう。


エメ達が無事だといいんだが......。


変形した通路を進むにつれて通路の幅がどんどんと大きくなっていく。


この先に何かあるのか?


その予想があたり、突然通路から開けた空間へと出た。


暗くて遠くの方は見えないが、木で出来た箱のようなものが近くに積まれているのが見える。


ここは取引使われるはずだった物の格納施設か何かなのだろうか。


とにかく、人の気配に注意しながら進まなければならない。


俺は周りを確認しながら、歩いていく。


すると不意に誰かの気配を後ろに感じた。


俺は恐る恐る振り向くとそこには俺と共に落下した少女が立っていた。


「「!?」」


俺が驚くのと同様に向こうも驚いているらしく体が小刻みに震えている。


この子があの時一緒に落ちた少女、なのか?


攻撃してこないあたり敵意はなさそうだしあの時のような嫌な感じもしない。


俺の目には透き通るような目を持つ何の変哲もない普通の小さな女の子が映っていた。


ただすこし怯えているようだ。


「お前......なのか?俺に防御魔法をかけたのは」


少女は震えていた肩をゆっくり落ち着かせ口を開く。


「うん......たぶん」


「俺の腕輪を外したのも?」


「うん...苦しそうだったから.....」


「そうか...ありがとうな」


一応、礼は言ったものの油断はできない。


あれだけの魔法を使えるのだ。今現在、俺には魔力がほとんど残っていないためもう一度あの攻撃をくらえば、致命傷は免れない。


魔力補給ポーションを飲むか?


いや、まだ待とう。ギリギリまであれは温存しておきたい。


そのような動き見せた時に使えばいいだろう。


「俺を殺すつもりでここに来たのか?」


俺の質問に驚き、数歩後ろに後退した。


「殺す.....なんてしない、よ?」


「・・・。」


俺は少女をじっと見つめた。


「......?」


少女は目には怯えと安堵の両方が見て取れた。


嘘はついてなさそうだな。


「じゃあ、なぜあの時俺に攻撃してきた?」


「あの時.....?私、ここで目が覚めるまで意識なくて.....あの変な器具を付けられてからずっと」


「そうか....」


やはり、あの行動の全ては魔道具のせいだったか。


ならこの子が前にエメが言ってた実験の被害者だと見て間違いないだろう。


「悪かったな、変な事聞いて」


「ううん、大丈夫」


「ところで、名前は?」


「名前......?ゼロって呼ばれてた」


「ゼロ、か。俺はアルフ。とりあえずよろしく」


俺は握手のために、手を差し出す。


「ヒッ......」


するとゼロはギョッとしてすぐにまた怯えた表情に戻ってしまった。


「いや、これは......」


「ごめんなさいごめんなさい、ぶたないで、ください、....わたしわたし....言うこと聞きますから」


「ぶつつもりはない。ただ握手をな.....」


俺は目的を失い遊ばせていた手を再び差し出す。


「あくしゅ?」


「そ」


ゼロは恐る恐る俺の顔色を伺うように手を握った。


「よ、よろしく」


「うん、ごめんなさい。大人の人、怖くて」


「気にしなくていいよ」


そこでゼロの震えはようやく落ち着いた。


それにしても酷い怯えようだな......。


過去にどんなことがあったのか聞いてみたかったが今はゼロの動揺を誘うだけなので控えた。


手を握っていたゼロはようやく安心したように少しずつ話し始める。


「アルフは、男の人?女の人?」


そうか。この子はブレスレットを外した時に俺の性別が変わるのを見たのか。


「一応、男だ。姿が変わった理由はそのうち説明する」


「うん」


「ところでゼロ。魔力ってどれくらい残ってる?」


「魔力?」


少しでも魔力が残っているなら外に出る時に使えるかもしれない。


「そう、魔法を使う時に消費するやつ」


「........私、魔法使えない」


「?」


俺はゼロが散々魔法を使っているのを見てきたため、困惑してしまった。


「どういう、ことだ?」


「あの変な器具がついている時は使えてたみたいだけど、私は元々魔法が使えない」


「じゃあ、俺を守ってくれた時のは?」


「無意識、だった」


「そうか........」


元々魔法が使えないのに急に使えるようになるなんてあるのか?


これも魔道具の影響....?それとも意識的な問題か?


その辺はおいおい調べるとして.....。


「これから、どうする?」


「・・・。」


「俺はもう少し探索してくるが、ゼロはここに残るか?」


「嫌ッ....................一人は嫌」


ゼロは少しだけ声を荒らげた。


「そうか、じゃあ一緒に行動するか」


「......うん」


俺はゼロを連れ、歩く。


周りを警戒しつつも、隣で歩くゼロに意識を尖らせる。


ゼロは俺とは少し距離を置いて歩いていた。


まだ、俺を完全に信用したわけではないらしい。


艶やかな黒髪。


身長は俺の腰ほどしかない。


「ゼロは何歳なんだ?」


「覚えて、ない」


「覚えてないのか?」


「うん.....今の記憶しかなくて前のことあんまり、思い出せないの」


記憶が、ない?それじゃまるで......。


と、不意に足音が聞こえたため俺はゼロを抱き寄せ、物陰に隠れる。


「!?」


驚いたゼロの口も塞ぎ、声が漏れないようにする。


どうやら、向こうは明かりを持っているらしくその明かりがゆっくりとこちらに近づいてくる。


俺たちは見つからないように息を潜めた。













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