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日の出は作戦開始の合図

「今回の作戦は呪詛学会を叩くことと兵器の押収がメインよ」


サラは薄暗い机の上にランプとともに紙を置いた。


「まあ呪詛学会を殺るってぇのは分かるが、兵器の押収ってのはなんだよ。もうちょい具体的に頼むわ」


「今回、ギャングに売り渡される予定のものは人間の子供をベースに作られたものとその失敗作」


ジルとリーフィの顔色が変わる。


それとは対照的にエメは微笑した。


「そりゃ、随分えぐいもの売るなぁ。やつらも」


「失敗作を、売るのか?」


「ええ。それでも、かなりの戦闘能力があるの。軍を相手取れるほどにはね」


「まさか、それがこの間言ってた倉庫を襲ったていう.....?」


「そうよ」


しかも人間の子供をベースに、か。失敗作とやらの性能も気になるが、一番気になるのはギャングたちがそれを買おうとしているということだった。


奴らは半端なものは買わない。買う時はその性能を、見込んだ時。


以前にも、他国が作った兵器を当時最も力のあったギャングが買い取った時も大問題になった。


でもなんで......


「なんで、その兵器は人間の子供がベースなんだ?」


「それは.......」


サラが俺から視線をずらす。


そして答えたのはサラではなく、エメだった。


「実験用の材料が大量にあるからだよ」


「は?材料って人間の子供の?そんなものどこに.........」


「オレたちの国では魔女狩りにかなりの報奨金をつけてるよな?」


確かに、魔女を指名し、魔女だと判明、または疑わしいものだった場合には指名したものに多額の報奨金が与えられるが.......。


「それとこれとは関係ないだろ」


「大アリだよ。オレらの国の税金はやたら高いだろ?それのせいで国民が皆貧困になるくらいには。それなのになんで魔女狩りには大量に財源を注ぎ込むんだ?それっておかしいだろ?」


「だから、話が全く......」


「金に困った夫婦。子供を養う前に自分たちの食うものがない。じゃあ、子供を魔女にしてしまおう、そう考え、そして魔女として指名する。指名され、魔女認定されたものは磔にされる。けど、それはほんのごく一部ものだ。ほとんどは別の場所に連れていかれ、別の目的に使われる」


「それって.........まさか」


「学会連中に、研究のために、だよ。だから材料には困らない」


「あの、待ってください!!」


ジルが手を挙げる。


「あ、あの.......それって、国家が呪詛学会の研究に手を貸してるってとこですか?」


「いや、少し違うな。奴らはお互いがお互いの利益になるように動いている。呪いの研究を進める代わりに武器を作り、国に差し出す」


「そんな........」


そこでサラが机を思い切り叩く。


「それを止める為にこれから動くの。こんなふざけたことを辞めさせるために」


「そうね、私もそれには賛成。でもこっちはこっちでこのふざけた男女差別のせいで、こんな危険なところに派遣されたんだけどね」


リーフィは自嘲気味に笑う。


「安心して、必ず無事に成功させるから」


みんなの目を見ながらそう言うサラはいつもの曇りのない目をしていた。


「それで具体的な作戦は?」


サラは机の上の紙を広げる。


そこには席の配置のようなものが書かれていた。


「今回、取引が行われるのはギャングたちが共同で所有している巨大なホールよ。そこで、オークション形式で取引される」


紙にはステージを囲むようにぐるっと席が配置されていた。


どうやら、中はオペラハウスのようになっているらしく、人がかなり入りそうだった。


「入る方法はエメが提供したゲートから。攻撃のタイミングはウルドの合図」


「攻撃は誰が何を担当するの?私、近距離攻撃しか出来ないっていうか近距離でしか攻撃したくない」


リーフィがぐっと拳を握り締める。


「あ、あの、私攻撃とか出来ないんですけど....」


「その辺は安心して、最初の攻撃はもう一つの班がするから。後はそれに合わせて私たちも動くって感じね。ジルは回復に専念しててくれればいいから」


「オレはどうすんだ?壁にでもなるか?」


「エメとジルは私と攻撃に。アルフは私たちの後方支援ね」


「了解」


「作戦開始は日が昇る瞬間よ。そのタイミングでゲートをくぐる。私たち2班が攻撃を開始したら、残りの班全員が突入。幹部の殲滅、及び兵器の回収。抵抗してくるギャングも殲滅対象よ」


なるほど。やはり、最初に攻撃する側が危険なのは変わらずか。それにギャングまでもが殲滅対象とは.....、なかなか強気だな。


「それと、アルフにはこのローブを渡しておくわ。必要でしょ」


手渡されたローブは一見何の変哲もないただの黒いローブに見えるが、その裏地には細かく魔法術式が組み込まれていた。


「これは?」


「着るだけで認識妨害ができる優れものよ」


つまり、俺の外見の特性をある程度カバーしてくれるのか。これは有難い。


「エメとジルとリーフィは?何か必要な魔道具はある?」


「オレは自分のがあるからいらねぇよ」


「私も自分のがあるから要らないね」


「魔力ポーションを少々....」


「分かった、ジルのものは用意しとくわ。とりあえず、これで解散ね。今から3時間後にここに再集合ね」


「なんか遠足見てえだな!」


エメはサラを見て笑う。


「うるさいわね!!とにかく、時間厳守よ!居眠りしてたじゃ済まされないからね!」


そう言われ、俺たちはまた吹き出したのだった。


このまま、いい雰囲気が続くと思っていた。


あんなことが起こるまでは。





「ゼロ、時間だ。表に出ろ。」


「・・・・・はい」


無機質な声に呼応し、檻から出される。


歩くのはどれくらいぶりだろう。


ここに連れてこられ、色々人体改造されていらいだろうか。


冷たく、冷え切った足は鉄のように重く動かない。


麻痺しているようだ。


「ゼロ、早くしろ。モタモタするな!!」


「・・・・・はい」


私はバカになった足を引きずりながら、男について行く。


黒い服を来た男は、一度も振り返らない。


ただ前に進むのみ。


周りには、『失敗作』と呼ばれる『私』の成れの果ての者達が言葉にもならない音を垂れ流していた。


「あああああああああああああああぁぁぉぁ!!!!!!」




私をそれが入ってこないように耳に手で蓋をする。


「明日からお前にも働いてもらう」


「私...........魔法使えない........」


「使えるようにする」


男は私の頭部にヘルメットの用なものを被せてきた。


「なに、これ」


「『魔道具』と呼ばれているものだ。少し痛むが気にするな。半日あれば慣れる」


「いらみ、?...........いあ」


あれ........?舌が回らない。


頭の中で思考が生まれては壊れを繰り返していた。


ぐるぐるする。


かんがえもまとまらない。


「お前も失敗作だが、『失敗作』ではない。商品的価値は他のものよりもある。良かったな。明日からお前は商品だ」


「しょう.....ひん?」


男の不敵な笑みを最後に、記憶は途切れた。



















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